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ひいいの麻雀研究 ひいい氏からの質問状
 
■ 事の発端はこうでした
 

 リンクに関する件で武藤が、ひいい氏にメールを送った事から端を発します。
その返信メールで、ひいい氏から
「コンピュータ雀士の打ち方について、ご質問させて頂いても宜しいでしょうか?」と、お問い合わせいただきました。

 こちらからの了解メールに早速ひいい氏から届いたのは、16項目にも及ぶとても興味深い、麻雀ロジック・思考
ルーチンに関する質問状でした。
ひいい氏より転載の許可をいただきましたので、以下、質問と回答に及ぶ全項目をここでご紹介します。
  


■ ひいい氏からのCell_雀思考ルーチンに関する質問(16項目)

Q1 浮き牌処理のロジックにおいて、役牌1牌と老頭牌1牌のどちらを切るかについて、どのような判断をしていますか?
A1 メンタン、喰いタンなら役牌です。染め系なら老頭牌を切ります。対々なら鳴きを含めた刻子のできやすさを考慮し字牌を残します。
   字牌はもちろん、役牌とオタ牌をそれぞれ別に評価しています。
Q2 二向聴程度の手牌において、Aを切れば安いが早い、Bを切れば遅いが高い、という状況において、Aを切るかBを切るか、
   どちらを切るかをどのように判断していますか?
A2 Aです。Cell_雀では基本的に聴牌速度を最優先させています。
Q3 向聴戻しの打ち方をしていますか? 具体的には、真ん中の浮き牌を残して辺張を切る、ということをしていますか?
A3 結果的に戻し打ちの形になってしまうケースはあります。ロジックとしてはできた面子を最重要評価しますので、戻し打ちはなしが基本です。
Q4 副露判断において、後付けの鳴きができますか? 具体的には、發2枚持ちで、数牌をチーするなど。
A4 後付けの鳴きをします。ルールもアリアリの設定をしています。ただし鳴くかどうかの判断はCOM側の点数状況、残り自摸数と、
   他家の鳴き・聴牌状況によって判断しています。またオーラスでドンベのCOMは鳴きを自重します。
   (早和了でCOMトップの手作りを邪魔しないため)
Q5 副露判断において、自家が二向聴で、他家に立直者がいても槓をしますか?
A5 槓します。ただ槓については、あまり高度なロジックは組んでいません。それでも、和了ができなくなるような自滅鳴きはしません。
   また染め手の場合などで、槓子が刻子・順子と複合する場合などは槓しません。
Q6 立直判断において、聴牌即立直ですか? それとも待ち変えや高めへの手変わりを考慮して黙聴にしますか?
A6 基本的にCOM側は聴牌しても立直しません。立直するかどうかの判断は点数状況と手配の高い安い、他家の立直状況(おっかけ)で
   判断しています。(当然ダマで待っている間の手変わりも考慮してしています)具体的には、COM側が勝っているときは安手でも
   立直しません。(ダマで栄和できることが条件です)COM側が負けているときはよほどの高手でない限り立直します。
Q7 和了判断において、見逃しをしますか? 具体的には、高め緑一色で安めバカホンなど。
A7 COM側の見逃しはありません。和了できるときは必ず和了します。
Q8 振聴を嫌う判断をどのようにしていますか? 答え方が難しいと思います。質問が悪くてすみません。例えば、浮き牌で三萬と三筒が
   あり、三萬を切った後に、五萬を自摸ったとします。この時、振聴リスクがあるから、と五萬を切るロジックになっていますか?
   これが1つの具体的な質問ですが、その他、振聴に関して、どのようにロジックを組んでいますか?
A8 振聴を嫌う判断はロジックに組み込んでいません。聴牌時に振聴かどうかをチェックし、振聴なら牌形が変わるまでそのまま待ちます。
   振聴が解消された時点で聴牌形を振聴なしの形に変更します。(その間に自摸った場合は、そのまま和了します)
Q9 ドラ受けの考慮をどの程度していますか? ドラが二萬だとして一萬を1牌持っている時に、辺搭一二筒との価値比較をどのようにして
   いますか?
A9 ドラは現物のみを評価します。浮き牌でドラがあれば、頭になる可能性を考慮して最後まで残しますが、評価としては他の浮き牌より
   ほんの少し高い程度です。ドラそばの評価は特にしていません。
Q10 一発消し目的の鳴きをしますか? また、その判断基準は?
A10 していません。鳴きは点数状況、残り自摸数、他家の鳴き状況によってのみ判断しています。
Q11 対戦相手の立直に対して筋読み、壁読み、牌構成読みをしますか?
A11 筋読み壁読みはしますが、牌構成読みはしていません。もちろんCOM側が読みの参考にするのは河と副露牌と自牌の状況のみです。
Q12 牌別危険度計算をしていますか?
A12 しています。現物、筋牌、残り牌の計算を各順ごとに行います。危険度計算を始めるタイミングは、他家、立直か三副露の時点です。
Q13 下家の染め手に対して、色絞りをしますか?
A13 色絞りはしません。自家の聴牌が最優先です。
Q14 包牌を打たないでしょうか? 対戦相手が白と發をポンしている場況で中を抑えるなど。
A14 包牌を打ちます。ルールも包なしの設定です。
Q15 和了期待点、放銃期待点を計算していますか?
A15 計算しています。単騎・シャボ待ちなどは字牌、老頭牌を優先します。また和了牌の残数を計算させています。
Q16 和了期待点と放銃期待点を計算していた場合、この比較をどのよう場況を絡めて判断していますか?
A16 基本的には和了期待点を優先するようにロジックを組んでいます。放銃期待点は和了期待点より優先度はとしては低くなります。
   計算するタイミングはCOM聴牌時で、立直判断と重ねて行っています。

 以上がひいい氏からいただいた質問とそれに対する武藤の回答です。


■ ひいい氏はさらにこのような興味深い発言をされています。

 「一般にコンピュータ雀士の不自然さは、Q4、Q5、Q6、Q7、Q11、Q13、Q14などに表れます。これらの中には、比較的簡単にプログラム
 できるものもあると思います」

 これに対する武藤の感想です。

 「なるほど、ご指摘の通りだと思います。人間なら絶対にやらないようなことをCOMが行ってしまうのは"ロジックの複合"により、一つ一つの
 ロジックは意味を持って正しく機能していても、麻雀のような複雑なゲームの場合、場況によってはトンチンカンな動きを選択してしまうから
 でしょう。もちろん、ロジックの追加によって簡単に修正のできるものもたくさんあります」


■ さらに質問されてもいないのに、武藤が勝手にCell_雀の思考ルーチンの概略まで説明しちゃいました(笑)。

 「Cell_雀の思考ルーチンの流れをおおまかに説明します。
 まず配牌時に、今何場何局か、自家と他家の点数状況はどうか、を確認します。これでCOM側のアグレッシブ度(攻撃性)を設定します。
 立直をする飜数や、鳴き・オリを始めるタイミングなどの基本設定をこの時点で決定します。

 次に配牌を眺め基本戦略を立てます。メンタンピンでいくのか染め手にするのか等、8タイプの中から選択します。
 その後、自摸・捨て牌を繰り返し、聴牌した時点で和了飜数のチェック、フリ聴チェック、立直するしないの判定を行います。
 和了期待点と放銃期待点の計算、他家の聴牌状況、残り自摸数なども同時にチェックしています。

 また聴牌が遅いときや他家が鳴き始めたときに、自家も鳴くかどうかを再設定しています。これは形式聴牌にもっていくことも考慮してのことです。
 他家立直に対してCOMがベタオリを始めても、途中聴牌すれば和了や聴牌終了を優先させます。

 以上の動きは全てCOM側のアグレッシブ度によって左右されるものです。またオーラスではCOM側のアグレッシブ設定を他局と変えています。
 また設定機能にあるコンピュータ性格(攻撃的、保守的、タコ、接待)は、アグレッシブ設定のデフォルト値(開始値)を変更しているだけです。
 以下略…」

 これに対してひいい氏から次のようなあたたかい返信が…。

 「ご丁寧な回答ありがとうございました。私が勝手に書いた一般的ではない用語をよくご理解頂いた上で、私が書いた用語に合わせてご回答
 頂きました配慮に感謝致します。正直、ご回答頂いた内容まで深く細かく考えられていることに驚くとともに、武藤様に深い敬意を表します」

 ひいい氏のあたたかいお人柄にふれることができました。感激です!


■ さらに私が、ずーずーしくも今回のやり取りをサイトに転載させてほしいとお願いしたときも、すぐにご快諾いただいています。
 (以下、そのやり取り)

 「あと、ひいい様にお願いがあるのですが、ぜひ今回のご質問と回答内容を、サイトに転載する許可をいただけないでしょうか?
 というのは、ゲームプログラマーにとってCOM側戦略ルーチンは大変貴重な情報で、このような情報を必要とされている方が他にたくさん
 みえると思われるからです。これは麻雀に限らず、他のテーブル系ゲーム全般に役立つとても価値の高い重要な情報です」

 「OKです。実は同類の質問は書ききれないほどにたくさんあり、今回書いたものも、書いていないものも、すべて数理麻雀研究のテーマです。
 数理麻雀研究のテーマは、私だけのテーマではなく、多くの雀士、のみならずゲーム理論のテーマでもあると思います。
 COMの思考ロジックをプログラムで具現化できる方は、麻雀を打つ上においての人間の思考をデジタル化できる能力を持っている方であり、
 そのロジックの内容、つまり、人間の思考プロセスのどの部分をどのように数値化してどう判断しているのかは、大変興味のあるところです」

 ここにもひいい氏のお人柄が如実に現れています。脱帽です。さすがというほかありません。
 こちらの意図するところを全て汲み取っていただいています。
 どの世界でも第一人者というのはすべからく人格者たるのですね…本当に勉強になります。

 以上、ひいい氏からの質問状とそのやり取りの顛末の全てです。
 ご参考になりましたでしょうか?


■ 最後にひいい氏のサイト、ひいいの麻雀研究についてご紹介します。

ひいいの麻雀研究  ひいいの麻雀研究

 客観的・論理的・定量的な実戦データに基づく戦略的麻雀研究、およびInfoseek(Jgame)麻雀プレイヤーの
 ための情報提供とコミュニティの場。

 メインコンテンツの麻雀講座では、麻雀の知識から手作りの理論、待ち読みの理論を"数学的"・"統計学的"
 手法を用いて見事に分析、論破している。
 麻雀ファンならずとも、その内容は一読に値する、極めて質の高いコンテンツである。

 


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