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ストライキが禁止、制限される場合

      20051130日  元田時男

1.はじめに

 タイの労働統計によれば、近年、ストライキの件数は1995年が22件であったものが、年々減少し2003年にはわずか1件である。意外に少ないのであるが、この数字は正確な数字であろう。というのは、ストライキは必ず労働省(県労働事務所)に届出なければならないからである。

 また、この数字をどう理解するかであるが、色色な見方ができると思う。労働者の給与水準が上がってきたことも考えられるであろうし、ストライキに至るまでに労使間でぎりぎりの交渉が行われ、労使ともに交渉技術が上がってきたということも考えられる。労働者の法意識が高まってきたことも一因であろう。

 ストライキには至らない労使紛争について、同統計を見ると、1995年の164企業が、これも年々減少して、2003年には87企業である。労使紛争とは、1975年年労働関係法によると、要求書が受理されて3日以内に労使交渉が開始されない場合と開始されても合意に至らない場合を指すが、いずれの場合も調停官への報告が義務付けられ、調停官は報告から5日以内に労使が合意に至るように調停することが定められているので、これも正確な数字と思われる。

 そうすると、労働者側の要求書が使用者に受理されて3日以内に交渉が開始され、労使団交で合意に至った件数は、この統計には表れないので、タイの企業数から考えてみても、調停まで行かずに無事団交が終わった件数はかなりの数に上るであろう。数千社といわれる日系企業でも、調停官の手を煩わすことなく、毎年のボーナス、賃上げ要求交渉をぎりぎりの努力でほとんどが乗り切っているということができよう。

参考までに、日本の場合について厚生労働省の統計によると、ストは1975年は7,574件であったものが2003年には174件へと激減している。平成に入ってからの減少が著しい。これは日本人なら誰でも分かる雇用環境、労働環境、労働組合活動の低迷というような要員が考えられる。

 そこで今回は、労使交渉で最悪の事態となるストライキが法的にどのような制限がかけられているかについて見てみたい。

2.団交の手順

 タイの場合は、日本のように労使が自主的に「労働協約」、「労使協定」で紛争解決の手順を労使間で合意するのと異なり、要求書提出からストライキまでの手順が全て1975年労働関係法で定められており、この順序に従わないと違法となるのである。

 まず、要求は必ず文書で行い(要求書の成立要件は労組が出す場合、一般労働者が出す場合とに分けて定められているが、ここでは割愛する)、要求書を受理した側(通常は使用者)は受理の日から3日以内に交渉を開始しなければならない。開始しなければこれは「労使紛争」が始まったと解釈され、24時間以内に調停官(県労働事務所)報告しなければならない(法21条)。また、開始されても合意に至らない場合も、「労使紛争」がはじまったことになり、その時点から24時間以内に調停官へ報告しなければならない(法21条)。この時点で法的には労使紛争が始まったことになる。

 調停官は報告を受理した時点から5日以内に双方が合意に至るように調停することになっているが、合意に達すれば、合意書に労使が署名し、事業所で30日以上公示すると同時に、労働事務所に合意書を提出しなければならない。

 調停官に調停によっても合意に至らない場合、今度は「合意できない労働争議」が始まったことになり、二つの選択肢がある。一つは仲裁に付託するよう両者で合意することであり、二つは、最後の強硬手段としてストライキまたはロックアウトを開始することができる。その場合、24時間以上前に相手と調停官に文書で通告しなければならない。

 以上が団交からストライキ、ロックアウとに至るまでの手順で、これは法的に定めれた順であるから双方とも守ることが義務付けられているのである。

3.ストライキ、ロックアウトが禁止されている場合(民間の場合)

 労働関係法34条では以下の場合ストライキ、ロックアウトを禁止している。これに違反すると6ヶ月以下の懲役もしくは1万バーツ以下の罰金、または併科であるので注意しなければならない。

(1)要求書が提出されていないとき、または要求書は提出されているが、まだ「合意できない労働争議」に至っていない場合(つまり団交、調停の進行中である)

(2)雇用条件協定(団交で合意され、双方が署名、公示すれば、これは合意事項として双方は守らなければならない)に従い義務のある一方の当事者が、その義務を履行したとき(例えば賃上げ闘争で合意に至り、使用者側が約束通り賃上げしな場合など)

(3)調停官の調停に従う義務のある一方の当事者が、その義務を履行したとき

(4)仲裁決定に従わなければならない一方の当事者が、その義務を履行したとき

(5)労働関係委員会の裁定審査進行中のとき(公共的事業で「合意できない労働争議」が発生した場合、法23条により調停官は労働関係委員会の裁定に付すことができるようになっている)

(6)仲裁人の仲裁進行中のとき

 以上は至極当たり前のことのように感ずるが、意識の低い労働者が違法なストライキを起こすこともあるので、念を押しているのであろう。

4.ストライキが制限される場合

 労働関係法35条で、国家経済に損害を与え、国民を困らせ、国家を危うくし、また、国民の安寧に反するおそれがあると労働大臣が判断した場合、大臣は以下の権限を行使することができるようになっている。この大臣の命令の(1)から(3)までに従わない使用者、労働者は6ヶ月以下の懲役もしくは1万バーツ以下の罰金、または併科である。

(1)ロックアウト中の使用者に対して、労働者を職場に復帰させ、従来の賃金で賃金の支払いを命ずること

(2)ストライキ中の労働者に対して、職場復帰を命ずること

(3)ロックアウトまたはストライキのため就業していない労働者に代わって就業する者を手配すること。使用者は代わりに就業する者の就業を容認しなければならない。また労働者がこれを妨害することを禁止する。使用者は代わりに就業する者に、労働者に従来支払っていた賃金率で支払わなければならない。

(4)労働関係委員会が仲裁を行うことを命ずること

5.戒厳令下、非常事態時のロックアウト、ストライキ

 労働関係法36条では、戒厳令または非常事態が宣告された場合、労働大臣はその地域の全部または一部について使用者のロクアウト、ストライキの禁止を命令することができる。

また、それ以前から行われていたものは中止する命令をおこなうことができるようになっている。

 現在ではクーデータによる軍事政権の台頭というような事態は考えられないが、南部でのテロ問題は大いに関係することになる。

(おわり)