試用期間中の労働者の解雇について

     2005年7月10日 元田時男

 現行の1998年労働者保護法の前の「労働者の保護に関する内務省令」には、46条の5項において「当初より180日以内の試用期間を通知された試用期間中の労働者には解雇手当は支払わなくてもよい」という旨の規定があった。その後この規定は削除され、1998年労働者保護法ではどこにも「試用期間」という言葉はないので、会社側が試用期間を定めても、法の扱いは一般の労働者と平等ということになる。

 しかし、以前の扱いの類推からか、依然として試用期間中の労働者については、解雇事前通告は必要ないと理解されている向きが多いように見受けられる。120日以上の勤続者には解雇補償金の支払いが必要であるところから、試用期間を119日以内に定めるのが通常であるが、119日以内の解雇については、解雇補償金は必要ないものの、事前通告は必要なのである。

 これについて、最高裁判決2364/2545(2002年)では、以下のように判断しているので

ここで、内容を紹介し、そのあと解説を試みたい。

 

判決要旨(労働省ホームページより元田訳出)

 「原告と被告の雇用契約は、試用期間において被告が原告の能力が満足できないとき、被告は事前に通告して原告を解雇でき、原告は解雇補償金を求めることはできないと定めている。従って、被告が、原告の能力が満足すべきものでないと判断して解雇したのは、386条第1項(注:民商法典)に基づく権利の行使である。正当性のない権利の行使ではなく、正当な理由のある解雇である。不当解雇ではない。

 120日を超えない試用期間を定めた雇用契約は、使用者は120日を越えない試用期間を設けて労働者を働かせ、試用期間が過ぎたらその後も雇用し、試用期間を過ぎないときに労働者を解雇することができることを意味している。すなわち、雇用契約がいつ終了するか明確ではない。従って労働者保護法17条第2項に基づく期間の定めがない雇用契約である。

 民商法典582条では解雇について定めている。しかし現在では労働者保護法は17条の規定に従わなければならない。すなわち、公序良俗に関する法律である。従って、使用者および労働者はそれ以外による雇用契約に関する合意を行う権利はない。本事件の雇用、解雇は労働者保護法が施行された後に発生しているので、労働者保護法17条を適用しなければならない。すなわち、事前通告なしに解雇できるのは三つの場合である。定めた期間が終了した場合。119条に基づき何らかの違反行為を労働者が行って使用者が労働者を解雇する場合。民商法典583条、労働者保護法17条に基づく場合である。試用期間中に解雇するとき事前通告を要しないという例外規定はない。労働者保護法17条第1項および第5項に基づくこの三つの場合に該当しないとき、被告は原告に対して、給与日かそれ以前に書面により次の給与日に解雇の効果が及ぶように事前通告を行わなければならない。被告が原告に対して事前通告を行わず解雇する場合は、労働者保護法17条第2項および第4項に従い事前通告に代わる補償金を原告に対して支払わなければならない。」

 

判決の要点

 この判決には三つの要点を含んでいる。まず、雇用契約において試用期間中に使用者の満足に値しないとき解雇することを定めているため解雇するのは不当解雇ではないということである。次に、試用期間を定めていても、それは労働者保護法17条第1項にある期間を定めた雇用契約には当たらないということである。最後に、試用期間を定め、その期間中であっても、その他の労移動者と同様に事前通告、または、それに代わる補償金の支払いを要するということである。

 

民商法を適用することの妥当性

 まず、第1の要点について検討してみる。

 判決は民商法典386条第1項を適用している。この条項は契約編の契約解除に関する条項で、「もし、契約当事者の一方が、契約の条項または法律により契約解除の権利を有していた場合、他方の当事者に対して意思表示をすることにより契約を解除することができる」と定めている。

 市民法である民商法典の条項を適用するということは、裁判所としては、この雇用契約の条項(試用期間中の働きに満足できない場合、解雇できるという)は、労使は本点については対等な立場にあるということを前提にしていると解される。また、弱者救済の立場にある労働者保護法に該当する規定がないので民商法典を適用したとも解される。

 しかし、要点の3において、裁判所は試用期間中であっても他の労働者と同一に扱っているのである。それであれば、これは会社都合の解雇にほかならず、労働者保護法118条第1項により120日以上の勤続については解雇補償金を支払わなければならないのである。

つまり、この判例は勤続が119日以下であった場合と考えられる。いずれにしても、不当解雇ではないという結論には直接結びつかないのである。もし、労使間の雇用条件協約が有効期間内にあり、その雇用条件協約に短期間といえ当該労働者が関係していた場合、労働関係法123条により、労働者に同123条(1)から(5)までの違反行為がなかったら不当解雇にもなりえるのである。

 この判例資料は判決文を要約したものであるから、解雇された労働者がどういう状況にあったかまでは触れていないので、不当解雇であるかないかは判断できないが、判決文には当然そのことに触れなければならないであろう。状況次第によっては不当解雇であることもありえることを認識すべきである。

 労使対等の立場での契約であるという、また労働者保護法に規定がないので民商法典を適用するという裁判所の立場には疑問を感ずる。

 

試用期間は「期間を定めた雇用契約」ではない

 労働者保護法17条第1項では「雇用契約で定めた期間が満了したとき、予告を行わなくても雇用契約は終了する」と規定されている。このケースでは、試用期間を定めていても、使用者が不満であれば期間中は解雇、何もなければ雇用継続するので、期間を定めた雇用契約には該当しないと判断している。妥当な判断というべきであろう。

 ただし、労働者保護法118条第3項でも同様の規定があり、第4項で、期間の定めのある雇用は、通常の事業ではない特別のプロジェクトに関する雇用で、開始と終了の期間が明確であるもので、臨時的な、季節的な業務に限られると定められている。また、判例もそれを支持しているものがある。

 そうすると、17条第1項と113項は同じものであるのか、別物であるのか判然としないのである。ここでは、そのことだけを付記しておきたい。

 

事前通告またはそれに代わる補償金が必要

 労働者保護法118条では119日以内の勤続であれば解雇補償金は必要ないと定めてあり、かつ期間も短いので119日以内の勤続であれば事前通告は必要ないと理解する向きもあるようであるが、この裁判では事前通告は必要ありと判断している。労働者保護法全体を見渡しても試用期間に関する規定はないので、たとえ雇用契約で試用期間を定めていても法律上の取り扱いは、他の労働者と同様の権利があるということになるので、これは妥当な判断といえよう。

 実は、労働者保護法が1998年に施行される以前の「労働者保護に関する内務省令」の46条では、120日以上の勤続の場合の解雇補償金を定めており、第3項で「解雇補償金の定めは、使用者から当初書面により180日以内の試用期間を通知された試用期間中の労働者には適用しない」と、120日以上の勤続者でも解雇補償金の支払いを免除していたのであるが、事前通告については定めがなかった。そうすると、当然民商法典582条が適用され事前通告、またはそれに代わる補償金を支払い即時解雇することになる。労働法の参考書で、6ヶ月以内の試用期間を合意し、使用者は事前通告なしに解雇できるとした1983年の判例を挙げているのがあるが、この判例は全部を見ないと分からないが、妥当な判断といえるか疑問のあるところである。現在では、民商法典582条の規定は1998年労働者保護法にも盛り込まれている。

(おわり、次号は「解雇に当たり注意すべき事項」についてお送りする)