BOIと法人所得税について
(05年5月15日元田時男)
1.はじめに
BOIの特典には法人所得税の免減税、土地所有、外国人就労許可、機械の輸入税の免減税、輸出製品用原材料輸入税の免税などがあるが、その中でも法人所得税の免減税は重要なものである。しかし、その内容は複雑に奨励の条件とからみあって必ずしも簡単ではない。今回は、法人所得税の免減税にかかる問題を探ってみたい。
2.免税の限度額
従来は、8年の免税期間があれば8年間まるまる免税であったが、2001年に1977年投資奨励法が改正され、2001年の12月以降に奨励認可を受けた事業については、免税累積額が当初の投資額に達したときに、8年を経過していなくても免税措置が打ち切られることになっている。(本件は01年12月より前に認可を受けた事業には適用されない)
また、この限度額の規定が適用されないものに一部の食品、農水産物関連産業、ソフトウエアー産業、設計、科学・技術区などがあるが詳細はBOIの奨励業種表を参照すること。
この当初の投資額には土地代と運転資金を含まないのであるが、投資額に何が含まれるかについてBOIは告示で以下のように定めている。
1.建築費
(1)事務所ビル、工場、公共施設、厚生施設の建設、拡大、改善。
(2)建物を購入する場合、または、すでにある建物を使用する場合、売買契約書の価
格、または、奨励証書発給申請書提出前の会計年度の帳簿価格(減価償却後の価格)
を使用する。
(3)建物を賃借する場合、賃借契約の借料を使用するものとし、3年より多い契約で
あること(注:3年以内の契約の場合、BOIと相談すること)。
2.機械代金、据付費、試運転費
(1)機械購入の場合は、機械の価格、据付費、試運転費、原価に含まれる技術料(エ
ンジニアリング費用、設計費用)。
(2)分割購入、リースの場合、契約額。
(3)借り入れ機械の場合、借り入れ契約による金額(ただし、1年以上であること)。
(4)系列企業間で、機械の対価を要求しない場合、奨励申請書に記入する機械を提供
する会社の帳簿上の価格を使用する(外貨建の場合、申請書を提出した日の交換レー
トを使用する)。
(5)機械を担保に入れる場合、帳簿価格を使用する。
(注:工場移転の場合の奨励申請の場合、機械の代金を含めることは許可しない)
3.事業開始前の経費で会社設立費用(旅費、弁護士費用、手数料、登録免許税を含む)
4.その他の資産購入費には以下のものを含む。
(1)事務所備品、車両。ただし、新たに設立する事業、工場移動申請に限る。
(2)採掘権に関する費用、国家に納入する公共、天然資源の費用。
(注:判定不可能な場合、BOI長官が最終的に判定する)
3.減免税特典利用のための事業報告書監査
これも2001年から始まったもので、奨励証書に減免税の特典を利用するためには、奨励事業の遂行状況の報告書に公認会計監査人の監査報告報告を付してBOIに提出することを求め、BOIがこの監査報告を認めて始めて法人所得税の免税が可能となるという条件が付いた事業について適用されるものである。それ以前に認可を受けた事業は、従来通り奨励証書のコピーを付して税務申告をすれば免税になるのである。2001年以降に発給された奨励証書であれば、この条件を確認されたい。
BOIの特典には条件が付いているのであるが、監査の内容は機械への投資が条件通りに行われているか、生産量が奨励証書に記載されている生産量を超えていないかということが主な監査事項となっている。
公認会計監査人の、この監査に関する報告書は会計年度末から120日以内にBOI事務局へ提出することが求められている。報告書をBOIが認めれば、会計年度末から150日以内に承認され、同時に国税局にも報告されるので、それに基づき税務署で免税が行われるのである。
4.奨励証書の生産量と法人所得税免税の関係
奨励証書には、生産業であれば必ず、品名と年間生産量が記載されている。この生産量は、奨励を申請するとき申請者が申請書に記入するものである。奨励証書にはそれだけしか記載されていないが、これは条件の部に記載されており、奨励証書の全体の構成からすると生産量は免税の条件となっているのである。
具体的には、1978年2月5日付国税局告示「BOI奨励事業の損益について」の2.1において、「年間生産量を超えない生産量の製品の販売からの利益が免税の対象となる」と明記されている。
従って、奨励証書の生産量を超える生産量については、その販売からの利益には課税されるのである。
上記3.の監査の内容にもそのことに関する監査が含まれている。
5.免税期間と配当の免税
投資奨励法では,奨励事業の免税期間中は奨励事業から得られる利益からの配当も免税と規定され、奨励証書にも同様の趣旨のことが記載されている。しかし、いずれも明快ではないが、実は配当金が免税になるのは、配当が免税期間中に行われ、免税期間中に受け取られる場合であり、免税期間中の利益であっても、免税期間が過ぎてから配当される場合は免税にはならないのである。
これについては、前記の国税局告示の5において明快に定めている。
本社への配当については、このことを注意しておかないと、送金のとき10%の源泉徴収を行わなければならないことになる。
6.免税期間中の損失の繰越
投資奨励法でも奨励証書でも、免税期間中に発生した損失は免税期間終了後の5年間の利益から控除することができると定められている。これはどういうことかというと、国税法第65の3条の(12)において、過去5年以内に発生した損失は6年目に利益が出れば、6年目の利益から控除することができる旨定めている。逆に損失が発生した年度から7年目
の利益からは控除できないのである。もちろん、損失発生後、2年目に利益がでれば、その利益から控除しなければならない。
これは一般的な場合であるが、BOIの奨励事業については、例えば8年間免税されていれば、8年の間の利益は免税である。本来ならば初年度の損失は2年目から6年目までに発生した利益から控除しなければんらないところ(7年目の利益からは控除できない)、8年間は元々免税であるので、免税期間終了後に損失を繰り越し、終了後の5年間の利益から控除することができるのである。
それにより、BOI奨励事業はその他の事業より税制上さらに有利になっているのである。
7.BOI奨励事業とそうでない事業を両方営んでいる場合
奨励証書が2通以上あり(奨励事業が2以上ある)、免税期間が過ぎたものとまだ免税期間中にあるものの両方がある場合が典型的な例であるが、前記の国税局告示の3では以下のように定めている。
(1)免税対象事業、免税対象外事業双方に利益がある場合、免税対象外についてのみ課税される。(注:これは当然である)
(2)対象外には利益がある場合、免税対象事業の損失が前者の利益の額より多い場合、両方を合算することができる。(注:対象外でも結果的に免税となる)
(3)両方の損益を合算して利益がない場合、両方の事業を営む企業は、対象外に利益がある場合でも、納税の必要はない。
もちろん、両方の事業を営む場合、奨励証書の条件にもあるように、両方の会計は区分しなければならない。
8.その他
前記の国税局告示から、重要と思われる事項を挙げると以下のようなものがある。
(1)作業くずなどの販売については、奨励証書にも記載されているように免税期間中は免税となる。ただし、くず等の処分についてはBOIの事前承認が必要である。
(2)機械設備が奨励事業の使用に耐えなくなり処分する場合、その販売代金は免税となるが、事前にBOIと国税局の承認が必要となっている。
そのほかに、BOI事業がサービス業である場合、BOI事業に代金を支払う場合、源泉徴収が必要であるところ、免税期間中には源泉徴収を行う必要がないという国税局の解釈がある(タックスルーリング、2000年6月23日付文書番号文書番号KorKhor0811/5186)。この源泉徴収は法人所得税の前払いであるから、当然ともいえるが、代金支払い側もそのことは心得ておかねばならない。
(おわり、次号は「試用期間中の労働者の問題」についてお送りする。)