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契約の成立要件、有効性と注意点

   2004528日元田時男

1.はじめに

事業は全て契約行為であるといっていいであろう。メーカー、商社は生産物、商品を販売する場合には売買契約を行う。労働者の雇い入れも雇用契約であるし、工場の賃借も契約によって行われる。

 そこで今回はタイの民商法典により契約が有効となるための要件について述べ、併せて重要な契約について注意点を述べることとする。

 

2.契約は、相手により取消しが可能となる場合がある。

 タイの民商法典でも法律行為能力のない者の定めがある。21条で満20歳未満の未成年者は、法定代理人(親など)の同意がない限り法律行為能力はないと定められているので未成年者との契約は親などの同意を得なければ取消し可能である。ただし、22条では、未成年者が単に権利を得たり、義務を免れるものであれは、その法律行為は可能とされている。また、結婚をしておれば成年と同様に法律行為能力はあるので、契約は有効である。

 従って契約書の添付書類としては老若男女を問わず、15歳以上に携帯が義務付けられているIDカードの写しは必要である、

 それでは、未成年者との雇用契約はどうであろうか。親などの同意がなければ上記によれば取消し可能となるのであるが、27条で親などが正当な理由なく同意を与えなかった場合は、親などが同意を与えるように裁判所へ請求できることになっているので、実際は親などの同意書なしで未成年者との雇用契約は行われているのである。

 また、禁治産者、準禁治産者(現在日本では民法改正により被後見人、被保佐人と呼ぶことになっている)の法律行為も取消し可能である。

 「取消し可能の法律行為」とはタイ語でモキアガムと呼ばれるが、176条によりモキアガムが取消された場合、その法律行為は初めから無効とされる。つまり契約は初めからなかったものとされるのである。

 

3.契約の成立には合意を必要とする

 契約の合意に至る経過については354条以下にあり、契約を望むものが相手にたいして申し込みをし、相手が承諾すれば契約は成立するのであるが、申し込み、承諾の方法については日本と類似する規定が設けられている。

 まず、354条では、特定時までに承諾を求めて申し込みをした場合は、申し込みの撤回はできない。357条では、期日までに相手が承諾しなかった場合、その申し込みは効力を失うのである。期日までに相手が承諾したら契約は成立である。

 このように契約は双方の意思表示により決まるので、意思表示がどういう状態でなされたかも問題となる。その例として錯誤、思い違いがある。それについては156条で法律行為の重要な部分についての思い違い、157条において相手の資格についての思い違いがある。

前者は、例えば土地が100ライの広さがあると思って契約の意思表示をしたが、実際は80ライしかなかった場合、156条ではその意志表示は無効としている。また後者は有能な機械技術者と思って雇用の意思表示をしたが、実際は化学技術者であった場合、157条では取消し可能としている。ただし、いずれの場合も思い違いに重大な過失があった場合、158条で取消し、無効の主張はできないことになっている。取引の円滑な進行を促進するためには当然の規定であろう。

 逆に、策略をもって錯誤、思い違いを起こさせたのであれば、させたほうの負けとなる。159条において、思い違いが騙されたことによる意思表示であれば、その意思表示は無効と定めている。ただし、事情を知らない第三者を保護するため、160条で善意の第三者には対抗できないと定めている。

 以上により、当方が相手を騙すつもりは毛頭無くても、結果として相手を誤認させるような言動を取った場合、契約は無効となるか、取消される可能性もあるので注意したい。

 

4.土地の売買契約は文書で作成、登記を要する

 契約は合意があれば成立するのであるが、不動産の売買については456条で「不動産の売買契約は文書に作成、登記しなければ無効」と定められている。

「無効」とはタイ語では(ベン・モーカ)と表現され、その行為はいかなる場合も追認されることはないのである。

従って登記されるまでの契約書は、将来の売買契約を約した「売りましょう、買いましょう(ジャ・カーイ・ジャ・スー)」という名称の契約書を取り交わし、実際に売買行う日に登記所において、所有権移転登記と代金の授受を同時に行うのである。こういう形式であると、不動産といえども口頭での合意で契約は成り立ち、所有権登記は単に第三者に対抗するだけで、二重売買の危険性をはらんでいる日本より安全に売買が実行されるのである。

 

5.3年を超える不動産の賃貸借契約は登記を要する

 読者は誰でも経験があることであるが、事務所の賃借、工場建物(土地を含む)の賃借契約は3年以上を望んでも3年が普通であり、3年経過するとき延長することになっている。

これは538条において、3年を超える不動産の貸借契約は文書で行い、登記しなければ3年間しか効力がないと定められており、登記をすれば少なからぬ登記手数料も納付しなければならないのも3年の契約が通常である原因の一つと思われる。

 ここで「効力」とは、タイ語では(フォーング・ローング・ハイ・バンカップ・カディーできること)と表現してあり、強制執行のことであり、原文の意味は3年を超える契約をしても登記してなければ、当初の3年間しか強制執行ができないという意味である。

 

6.500バーツ以上の動産の売買契約は署名された文書の証拠が必要

 500バーツの物品売買といえばスーパー、百貨店で買い物をするようなもので、売買に意思表示、合意、物品の授受、対価の授受が同時に行われ、物品の所有権も瞬時に買い手へ移転するのであるから、文書による証拠など必要ではないとうことができるが、456条の3項では、署名された書面の証拠がなければ効力がないと規定されている。ここでいう「効力」のタイ語は上記5と同様の意味である。

 読者の動産、つまり製品の売買は多額に上るのであるから、当然のちのちの証拠として文書による契約書、発注書、受注書、納品書など一切の証拠を揃えておくのが通常であるから、問題はないのである。

 

7.ハイヤーパーチェス契約は文書の契約書がなければ無効

 ハイヤーパーチェスとは572条で定義されているが、資産の所有者が、資産を貸し出し、一定回数にわたり金額を持主、つまり貸し手に払込んだら借り手の所有物となるという約束であり、タイでは自動車など耐久消費物の割賦販売の手段として利用されている。

 574条では、貸し手は継続して2回以上支払いがないとき、契約の主要部分に違反があった場合、売り手つまり貸し手は契約を終了させることができ、それまでに支払われた金額は貸し手のものになると規定されている。

 そして、572条の2項で、ハイヤーパーチェスは文書の契約書がないと無効と規定されている。無効の法律行為はタイ語では、4の場合と(ベン・モーカ)という用語が使用されている。

(おわり)