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会社法違反に対する罰則

 元田時男

 

はじめに
 合弁会社で、合弁契約に違反した場合は私人間の争いで、話し合いがつかなければ仲裁にかけるか裁判所で争うことになる。負ければ、それ相応の賠償金などを払って一件落着である。しかし、会社法に違反すると、これは私人間の争いではなく、刑事罰として起訴され、罰金か悪くすると懲役ということになる。日本の商法( 会社法)では一番重い罰として特別背任罪があり486 条で取締役などが「自己若しくは第三者を利し、又は会社を害
することを図って任務に背き会社に財産上の損害を加えたときは10 年以下の懲役または1千万円以下の罰金」と定められ、日本では最近この罪に問われる事件が多発しているのは周知の通りである。現代の株式会社はタイでも日本でも多数の株主、債権者など利害関係者を抱えているので会社を害する行為には重罰を科しているのである。
 しかし、タイの非公開株式会社法( 民商法典) には罰則がないではないかと言われるならば、実は法律が別にあるのである。一般には余り知られていないが、「1956 年パートナーシップ、株式会社、協会、財団の違反に関する法律」というものがある。この法律は、1992年にかなりの条項が改正されて現在に至っている。
 以下、株式会社に焦点を当てて、この法律を罰則の重いもの、また重要なものについて見て行きたい。括弧内はこの法律の条項番号である。ただし、日本に比べれば全体に罰則は余り重くない。それは、非公開株式会社が元々家族的な小さな組織を前提にしているからであろう。

会計に関する違反は懲役が多い

 会計は会社の財産を直接的に表しているので、これを誤魔化すことは株主、債権者に誤認を与えることであるからタイでも重い罰則を科している。
会計帳簿、書類、証拠の偽造、改ざんを行い、会社の利益を害した責任者( 取締役など)は7年以下の懲役もしくは10 万バーツ以下の罰金、または両方である(42 条)。
  会計監査人が正しくない決算書類を正しいと証明した場合、また偽りの報告をした場合、1年以下の懲役もしくは2万バーツ以下の罰金、または両方である(31 条)。
  これとは別に2000 年会計法においても、27 条以下に会計法違反に関する罰金、懲役、または両方の罰則があるので注意したい。

取締役の義務違反

 取締役は、民商法典1167 条では会社とは委任関係にあり、1168 条では善良な管理者としての注意義務がある。この義務に違反した場合、以下の罰則がある。
  民商法典1172 条第2 項では資本の半分に相当する損失があった場合、また同1174 条第 1 項で株主から要求があった場合、臨時総会を召集しなければならないが、これを怠った場合、1万バーツ以下の罰金である(26 条)。
  また、取締役は民商法典1199 条第2 項では、決算書のコピーを総会終了後1 ヶ月以内に登記所( 商務省)へ提出する義務がある。同1206 条では正しい会計帳簿を備える義務がある。同1207 条では株主総会の議事録を保管する義務がある。以上を怠った場合、5 万バーツ以下の罰金である。 

株券発行の義務、および株券の記載事項違反

 特に会社が100 % 日本の親会社がほとんどを所有している場合、株券の発行をおろそかにし勝ちであるが、民商法典1127 条第1 項では株券を株主に発行することが義務付けられており、第2 項では発行手数料は50 サタンを超えないこととなっている。また、同1128 条では株券には以下の記載事項を定めている。
1)会社名
2)当該株券が代表する株式数
3)株式の額面
4)満額払込まれていない場合、払込済み額
5)株主名(記名式の場合)または無記名のむね
  以上に違反した場合、会社に対して1万バーツ以下の罰金である(8条)。

株主名簿作成、保管の義務違反

 これは、ほとんどの会社が怠っているのではなかろうか。会社登記簿にある株主名簿で代用しているのであるが、それであると株主が変動しない場合は余り問題ないが、変動した場合、単に誰かが記憶しているだけでは混乱の元になる。そういう意味で民商法典1138条では、記名式であれば以下の内容を記載した株主名簿の作成、保管を義務付けている。
1)株主の氏名、住所、職業(あれば)、株券の番号、払込金額
2)株主として記録された年月日
3)株主でなくなった年月日
  これを怠った場合、会社に対して2千バーツ以下の罰金である(10 条)。
  また、同1139 条第1 項では、株主名簿は会社に保管し、株主の要求により株主の検査のため公開しなければならないが、これに違反した場合、会社に対して2 万バーツ以下の罰金である(11 条)。

自社株の取得禁止違反

 自社が発行した株式を取得することは、実質的には資本の払い戻しとなり、資本充実の原則を害したり、株価操作を許すことになり、禁じられるのが株式会社の原則である。民商法典では第1143 条により自社株の所有、質受けを禁止している。これに違反した場合、会社に対して10 万バーツ以下の罰金である(12 条)。
  ただし、最近では自社株の償却、合併による取得、ストックオプション用などの場合には認めるのが世界の潮流となっているが、タイも公開株式会社法を2001 年に改正したとき、公開株式会社については、反対株主から買い取る場合、財政建て直しの場合などにおいて自社株の取得は認められるようになった。

付属定款変更の登録義務違反

 付属定款は、会社の内部規定であり会社運営の重要な原則が記載されている。従って、株主、債権者、取引相手には重要なものである。その重要性に鑑み民商法典1145 条では、付属定款の変更は株主総会の特別決議事項とし、更に、同1146 条では決議から14 日以内に登記所に変更登記することを求めている。それにより商取引の安全が確保されるのである。この登記を怠った場合、会社は2万バーツ以下の罰金である。

株式が全額払込みでない場合の規則違反

 タイの場合、日本と異なり基本定款に記載された株式数は全数会社登記時には引き受けられていることが求められているが、各株式については額面の4 分の1 以上が払込まれれば会社は成立する。ただし、第三者を誤認させないように、民商法典1149 条では、全額払込みが行われるまでは、いかなる文書などにも登録資本の額を表示してなならないと定めている。
  これに違反した場合、会社に対して2 万バーツ以下の罰金である。
  BOI 認可企業については、操業開始までに全額払い込むことが要求されているので(BOIから発給された奨励証書参照) 問題ないが、そうでない場合は、全額払込まないで操業を続けている会社も多いので、この規定には注意すべきである