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税務上損金に計上できない経費について


執筆 元田時男


 

法人所得税は純利益に所得税率をかけて計算するが(タイの場合通常30%)、会計上の収益から費用を差引いたものを純利益として税率をかけるのではなく、税務上収益に計上することが認められた収益から税務上費用とすることが認められる費用を差引いた残りに税率をかけて計算することになっている。つまり、会社の損益計算書では費用として計上されるべき費用も税務上は費用として認められないものもあるのであるから法人所得税の計算は会計上の損益計算書を調整して税務上の純利益を計算する必要がある。税務上の収益は税務用語では益金と称し、税務上の費用は損金と称する。従って課税所得の計算は「益金」−「損金」となる。
これは、日本もタイも同じである。ただ、日本の場合は企業会計と税務会計は余り差がないように調整されているのであるが、タイの場合は日本よりその差が大きいので注意を要する。会計理論上当然経費として計上できるものも税務上の経費(損金)として認められないものもある。損金として認められないものがあれば、その分上記式の損金が減り課税所得は増加することになる。
では、どのような経費が損金として計上することができるかであるが、タイの国税法では第65 の3 条において損金として認められない経費を列挙してある。逆に理屈としては、第65 の3 条で列挙してあるもの以外の経費は損金として税務上益金から差引く(控除する)ことができるのである。ただし、社内慰安旅行経費、社員に付した生命保険料など、損金には算入できるが、社員への給与としなければならないという国税局の解釈もあるので処理する
勘定については注意しなければならない。
第65 の3 条の中身を全部挙げると以下の通りである。

損金に算入できない経費(国税法第65 の3 条)
(1)各種準備金、引当金


ただし、保険会社、金融機関の特定の積立金、準備金は損金算入可。
日本では恣意的な計上を防止する意味で税法上規準を設けて、貸倒引当金のほか、租税特別措置法で具体的に様々な準備金計上が認められているが、タイでは認められていない。この点ではタイの税法は余り産業政策に配慮していないということができよう。


(2)基金への拠出金

ただし、プロビデント法によるプロビデント基金については、1990年3月5日付大蔵省令183号により、以下の基準により損金として処理できる。
(イ)基金への拠出はプロビデント法に従うこと。
(ロ)基金の規則に定める率、または大臣が承認した率により拠出したものであり、賃金を支給した日から3営業日以内に納付されるものであること。また、賃金支給と同一会計年度に納付されるものであること。



(3)個人的支出、寄付金、または慈善金

ただし、@公共的な慈善金、または大臣の承認により国税局長が定めた公共の利益となるものは純利益の2%を超えない範囲で損金として処理できる。また、A大臣の承認により国税局長が定める教育、スポーツのための支出は純利益の2%を超えない範囲で損金処理できる。これについては1992年9月9 日付国税局長告示44 号がある。


(4)大蔵省令で定める基準に合致しない交際費

1979 年9 月5 日付大蔵省令143 号において、損金算入可能な交際費を、以下のように定めている。
(イ)通常の商業慣習として必要なもので、使用人に対するものは除く、ただし、使用人も交際に加わらなければならないときを除く。
(ロ)交際費は、事業に直接必要なもので、宿泊費、食事代、飲料代、娯楽施設費、スポーツに関する費用などを含む
(ハ)贈答品は、1 人当たり2 千バーツを越えないこと。
(ニ)年度の総収益もしくは総売上、または年度末における払込済資本金の0.3%を超えないものとし、かつ、合計1 千万バーツを超えないこと。
(ホ)取締役、支配人などが許可するか、支出を命ずるもので、領収証がなくてはならない。


(5)資本的支出

資産の増大、変更、拡大または改良のための支出など。
これは当然資産の価値が増大したのであるから、当期の費用ではなく資産の原価に加えて減価償却することになる。ただし、単なる修繕費は当期の損金とすることができる。


(6)租税にかかる罰金、加算金、刑事上の罰金、法人所得税
(6-2)付加価値税(VAT)

VAT登録事業者が納付した、または納付すべきVAT、および仕入税。ただし、交際費支出にかかる仕入税は売上税から控除することはできないが交際費として損金算入可。


(7)パートナーシップの社員が対価を払わず引き出す出資金


(8)株主またはパートナーシップの社員へ支給される給与のうち正当な金額を超える分。

(9)実際払ってないのに計上した経費、他の年度の経費

ただし、年度区分がはっきりしないものは、翌年度に計上できる。


10)自社保有の資産に対する資産の対価に対する支出

11)自社の資本、各種準備金、基金に対する利子

12)保険または契約により補填される損害、または前年度、それ以前の欠損金

ただし、前年度、それ以前の欠損金は現会計年度の前で5年以内の分は、当期の利益から差引くことができる。また、BOI から奨励された事業については、免税期間中の欠損を免税期間終了後の5 年間の利益から損金として控除することが可能となっている。つまり、8 年間の免税措置を得ている場合、例えば最初の年度の欠損金は、上記の5 年間の規定にかかわらず、免税期間終了後の5 年間に生じた利益から控除することができるのである。
保険等を付した資産の損害については、1995年8月2日付国税局通達Por.58/2538により概略以下のように定めている。
(イ)資産に損害が発生し、保険を付していた場合、保険で補填される。従って、資産に損害が発生し、保険金給付を待つ間に会計年度が変った場合、損害はその年度の損金とすることはできない。損害額が保険給付を上回った場合、上回った部分は損金とすることができる。保険金が損害を上回った場合、益金に算入しなければならない。
(ロ)保険を付していなかった場合、損害は全て損金とすることができる。


13)利益のため、または特に事業と関係ない支出。

何が事業に関係ない支出か判断に困る場合もあるが、会計事務所、税務署等と相談することが肝要である。



(14)タイ国内での事業のための支出でないもの


(15)資産の購入価格のうち正当な価格を超える部分


(16)天然資源の事業による減損


(17)資産の評価損、ただし、棚卸資産に関するものは除く


(18)受取人不明の支出


(19)会計年度終了後利益から支出することが決められている支出

給与ではない役員報酬は元々利益の処分であるから当然な規定である。



(20)以上の1)から19)までと同様の支出で勅令で定められている支出

1997 年11 月10 日付勅令315 号において、以下のように定められている。
(イ)10 人乗り以下の乗用車(物品税法で定める機種)で100 万バーツを超える部分。
(ロ)同上の乗用車(同上)の賃借料で、月額3 万6 千バーツを超える部分。
(ハ)同上の乗用車(同上)の賃借料で、日単位で賃借する場合、1日当たり1千200バーツを超える部分。
以上いずれもVAT を含む。販売、賃貸目的で購入する場合は除く。