タイも日本と同様、税法でカバーできない詳細は省令、告示、通達などに任せているが、タイの
場合、日本の各種租税ごとの通達集のように系統的に編纂されていないので、個々の問題について解答を探すのは容易ではないという問題がある。通達などでも分からないことは多々あり、その場合国税局は納税者の質問に対して文書で回答し、一部は国税局の月報で公開されているが、とても日常の個別の問題を解き明かすのは充分とは言い難い。税法にたけた会計士、会計事務所によく相談することが肝要である。
在タイの日系企業はこういう環境におかれているので、順法精神は旺盛であるものの、正しい処
理が分からずに誤った処理をして税務調査で指摘され、加算金、罰金を取られるケースは筆者が
知っているだけでもかなりの数に上る。ただし、違反(というよりミスであるが)が指摘された後、
実際はどのように処理されているかについては筆者も多くは知らない。
そこで、今回は国税法がカバーする法人、個人所得税、VATに関して、国税法上では法律違反
についてどのような行政処置、罰則を設けているかを重要な事項に絞って述べ、読者の参考に資したい。
査定官の権限は大きい
タイの所得税は、税務署が一方的に賦課する賦課税であるか、納税者の良心的自主申告に任せた申告税であるかは判然としないが、形式的には日本と同様申告税制である。ただし、国税法第3章第1節総則の第38条では、所得税(法人、個人)は査定税であると先ず宣言している。また、第77条においてもVATは査定税であることを先ず宣言している。
また、随所に査定官の権限による査定に関する規定があるので、国税法全体として、不正その他何かあれば査定官が独自の判断で税額を査定、決定できることになっている。
このように法は査定官に大きな権限を持たせていることに、先ず注意を喚起しておきたい。
申告を怠った場合
法人所得税の申告納税の期限は、中間申告納税が会計年度の6ヶ月の最終日から2ヶ月以内(国税
法67の2条)であり、年度の確定申告、納税は会計年度終了の日から150日以内(国税法68条)と
定められている。これを怠ると不可抗力であることが認められる場合を除き2千バーツ以下の罰金
である(国税法35条)。また、その場合、査定官は出頭を求めたり関連書類の提出を命ずることが
できるようになっており(国税法23条)、それにより税額を決定することができるようになってい
る(国税法24条、異議の申立は可能)。
この命令に従わない場合、査定官は最善の方法により税額を決定し、その決定には異議の申立が
できない(国税法25条)。また24条、25条による決定が行われた場合、納税義務者は決定額の2倍
の加算税を支払う義務がある(国税法26条)。
また、故意に脱税目的で申告を怠った場合は、5千バーツ以下の罰金もしくはは6ヶ月以下の懲役、
または両方に処せられる(国税法37の2条)。
以上により申告をいつまでも引き延ばせば、深刻な事態を招くこともありえるので注意したい。
なお、35条による2千バーツの罰金は、源泉徴収票の発行を怠った場合も適用される。
納税を怠った場合
期限までに納税を行わない場合は、国税局長は裁判所の令状なしに、納税義務者の財産を差し押さえることができるようになっている(国税法12条)。物件の隠匿など差し押さえの妨害は2年以下の懲役および20万バーツ以下の罰金である(国税法35の2条)。また、納付期限の翌日から起算して、月1.5%の延滞税を課されることになっている。ただし、延長が認められ、延長期限前に納税した場合、延滞税は0.75%に軽減される(国税法27条)。
虚偽、不正な申告を行った場合
査定官が、虚偽または不正な申告であるという確信を得た場合、申告者を喚問し、証拠書類の提出を命ずることができる(国税法19条)。この手続きと証拠により査定官は税額を調整し、決定することができ、異議の申立もできるが(国税法20条)、正当な理由なく、この命令に従わないときは、査定官が最適と思う方法により税額を決定することができ、それに対しては異議の申立はできない(国税法21条)。
ここで問題は、単なるケアレスミステイクにより過少申告の結果となっていた場合も、査定官の心証によっては虚偽、不正となりえるであろうことである。その結果、帳簿を全部提出させられると明日からの仕事にたちまち差し支えることとなるので、注意が必要である。査定官の決定に不服があれば意義申立も可能であるし、場合によっては税務裁判所への提訴も可能であるが、それには多大な労力と金銭を要することとなる。前述の通り、日ごろから税務にたけた会計士、会計事務所へ不明な点はよく相談して、会計処理には遺漏のないように努めておくことが肝要であろう。また、タイ語の国税法令集も複数の出版社から毎年出版されているので、タイ人会計担当者の必携書として日タイスタッフ双方の協力により絶えず参照しておくことも必要であろう。
VATに関するもの
以上は国税全般に関するものであるが、VATについては、国税法第4章13節により加算税、延滞税の規定があるほか、14節では罰則が規定されている。その中で、特に注意しなければならない事項を拾ってみると以下の通りである
1.期限までに申告納税しなかった場合は税額の2倍または1ヶ月につき千バーツのいずれか多い方の加算税のほか、1ヶ月当り1.5%の延滞税。
2.タックスインボイスの写しを保管していない場合は(国税法87/3条により原則として5年以上)、タックスインボイスの税額の2%の加算税。
ただし、加算税は事情により減額されることがある。
3.期限までに申告、納税しない場合、重要な部分につき不完全なタックスインボイス等を発行した場合などについては2千バーツ以下の刑事上の罰金。
4.VAT登録証の掲示を怠った場合、5千バーツの刑事上の罰金(国税法85/4条により登録証は事業所内の目立つ所に掲示しなければならない)。
5.タックスインボイスを買い手に渡すのを怠った登録事業者は1ヶ月以下の懲役もしくは5千バーツ以下の罰金、または両方。
6.売上税、仕入税、商品・材料台帳に虚偽の記載をした場合、3ヶ月以上7年以下の懲役および2千バーツ以上20万バーツ以下の罰金であるので、台帳の記載には遺漏のないように注意しないと危ない。
(ここでいう懲役を含む刑事罰は、国税法90/5条により、法人である場合は、法人の代表取締役「ガマガーン・プージャットガーン」または支配人「プージャットガーン」がその罰を受けることになる。ただし、本人が違反を承諾しなかったか関与しなかったことを証明した場合を除かれる)。
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