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Ace Combat 2
Namco / 1997.5.30
Playstation Award 1998 ゴールドプライズ受賞


  • AceCombat2
    • ナムコに入社して2年目、実質上初の本線投入。人気のあるフライト・シューティング・ゲームの曲を大量に任せてもらえるなんて夢のようだった。
    • 当時、機材の知識はまったくなく、サンプラーも初めてお目にかかった。先輩であるのんたんから「魔法の箱や!」と教えられ、そのまま「そうか、魔法の箱なのか。じゃあ自分には手におえないや」とアホな納得をしていた。実際、先輩の組んだ究極のドラム・キットをそのまま使わせてもらった。
    • このゲームは後に名作とされるだけあって、開発中のデバッグの時点でも相当熱く、面白かった。チーム自体もゲーム自体も熱い。こんなプロジェクトに携わることが出来て本当に大感謝。
    • 曲作りは、各面のBGMをイメージ・スケッチを企画書風にまとめ、イメージが合いそうな既存曲を集めたMDを各スタッフに聴いてもらって音楽ジャンルのブレンド具合を相談したり、ゲームとは直接関係のない各スタッフの音楽の趣味までも参考にしたりした。
    • リリース直後は、ギターのサウンド作りと演奏のつたなさに一人後悔というか苦悶した。ただ自分はゲーム・ユーザーのことを第一に考えて、ギターの世界に寄りすぎず、遠すぎず、扇情的な機能を果たす曲に活かす、という意味でシュアな仕事をしたと思うことにしている。
    • 自分も1ゲームユーザーとしてこのゲームの世界観・熱量で多くの熱烈なファンと喜びを分かち合えたこと、新人の事実上第一作目でファンがついてもらえ、物凄く恵まれたことだと思う。
  • Title
    • 前作の青空から一転、夕焼けが渋いタイトル画面。これから多くの戦いをしなくてはいけない、という使命感や紛争の雰囲気を演出するため、映画のサントラ風に。戦争風サントラの雰囲気を身体に染み込ませるためザ・ロックのサントラをよく聴いていた。タイトルからいきなり悲壮感漂う曲にした訳は、ゲームの中の出来事とはいえ人の命を扱う重みをユーザーの胸に刻んで欲しかったから。
  • Dystopia
    • ミッション説明画面。Titleと同系統でまとめ、任務の重さを演出。もとはTitleとつながったひとつの曲だったのを、同期であり同プロジェクトのグラフィック担当であったK藤氏の助言により二つの曲に分けた。結果はもちろん大正解。この曲は一種のキーとなり最終局面のBGMとしても使われることになる。
  • Invoke
    • 時間がなく、JV1080一台でミックスまで完結している曲。プログレ趣味が少し出た激しいフレーズのベースリフが特徴。
  • Briefing
    • 初めて作った曲。私の打ち込みを元にのんたんがチョッパーベースを弾いてくれた。テンポやタイミングがシビアで収録に時間がかかってしまったが、のんたんの演奏時の緊張感が結果的に曲にスリリングな緊張感を与えている。へヴィローテーションのため有名になった曲。
  • Lodestone
    • ゲームファンのゲームファンによるゲームファンのための曲、という想いで、ゲームミュージックファン受けする曲を意識して書いた曲。つまり自分が聴きたい曲を書いた。果たしてその想いが通じ、ゲームリリース後にマイコンベーシックマガジンの打ち込み投稿コーナーにこの曲が登場。かつて一介のゲーム音楽小僧として同誌を愛読しまくっていた自分が、仕事でゲーム音楽を作って、しかもその曲がある種憧れだった雑誌のコーナーで題材にされることになろうとは。感無量の瞬間。
    • シンセのサウンドなど、ジョン・ウィリアムスのロサンゼルス・オリンピックのテーマにも少しインスパイアされている。ギターは一応入っている。グリス・ダウンから入り、コードとフレーズを兼任。ピッキング・ハーモニクスも忘れない。海外のゲームファンにも人気が高かった。
  • El Dora do
    • ゲームサウンドにおけるアドバイザーとして、画面を創造するグラフィッカーの存在は大変重要なものだと認識していて、彼らの真意を汲むために頻繁にグラフィック・ルームに出入りしていた。この曲はそんな交流の中で生まれた。このゲームはバリエーション豊かな戦場がウリでもあり力も入っていた。限られたマシン・スペックの中で雄大な自然を見事に表現したグラフィックに対して、スケールの大きさを感じさせる曲によるイメージの演出が必要だったのだ。
    • 基本シーケンスは緊張感溢れる海外ニュース番組風のテーマから、ノード・リードによるシンセ・リードが出てくるあたりはナムコのドラゴン・スピリットの曲にインスパイアされている。その後出てくるシンセ・シーケンスはヘヴィ・プログレの勇Dream Theaterに影響されている。最後伸びやかにシンセ・リードが舞い踊る部分は、果てしなく高く広い空をイメージしている。ギターは一切入っていないが、熱い曲として人気のある曲。
  • Fire Away
    • 「ギター弾きにしか作れないフレーズを!」というスローガンのもと、80年代ハード・ロック・フレイヴァー炸裂のスピード・チューン。ノリの基本はジョン・サイクス率いるBlue Murder1stアルバムのブラック・ハーテッド・ウーマンと、同じくジョン・サイクス在籍時のTyges Of Pan Tangのラブ・ポーション・ナンバー9。ただ、インストでハード・ロックを作る場合、押し切り型のストレートな構成ではヴォーカルがない分、色気が不足するため、途中で「これぞロック!」というワイルドなリフを挟むことでメリハリをつけた。このリフはSurpence Albus / White Snakeでのスティル・オブ・ザ・ナイトや、Nothin' But Trouble / Blue Murderのクライ・フォー・ラブなどがインスパイア元。楽譜も理論も関係でなく「どう感じさせたいか」というアプローチで作られるフレーズの典型。ソロは2種類。1ループ目のソロはThin Lizzy
      のスコット・ゴーハムの一部の奏法と、Megadethのデイヴ・ムステインお決まりのソロ奏法が一瞬出てくる。2ループ目は、出だしはラブ・ポーション・ナンバー9でのジョン・サイクスのストレッチ&マシンガン奏法で引っ張り、続いてSurpence Albus / White Snakeよりクライング・イン・ザ・レインで見られるピックを使ったライトハンドのテクニックを応用、次の雪崩のようなラフなフルピッキングの速弾きは、Out Of My Tree / John Sykesのリーダートラック、ソウル・スティーラーのソロ奏法を参考にした。基本的に頭おかしいんじゃないの系のマシンガン・ソロ炸裂。
  • Rising High[M]
    • 初期にSC-88のみで作り、後にギター・ダビングと、のんたんのドラム打ち込み修正とオルガン・アレンジを経た、ハードかつキャッチーな、通称ヒット曲。自分の曲が人の手によって生まれ変わるのを見るのはとてもエキサイティングな経験だった。なんといっても当時の自分は、リスト・ウィンドウでドラムを打ち込むなんて初めて見るぐらいの素人っぷり。乱暴な打ち込みだった。ただし、歌の代わりであるメロを中心とするシンセの音の動きだけはかなり拘ってエディットした。ギター・リフは打ち込みで考えてしまったため、実際に演奏するのは至難の業だった。しかも編集の簡単なハード・ディスク・レコーディングではなく、DA-88での人生初のエンジニアさんによるレコーディング。テンポが速く物理的に演奏不能なリフばかりで、細切れのレコーディングを余儀なくされた。エンジニアさんの神懸り的なパンチ・イン、パンチ・アウトの妙技にただただ驚くばかりだった。
    • リフの基本はメガデス。クロマチックでパワー・コードが下がる時の「ワルい」感じを導入。Blue Murder / Blue Murderのセックス・チャイルド、Nothin' But Trouble / Blue Murderからウィー・オール・フォール・ダウンのごく一部の奏法も混ざってる。Luna SeaのSUGIZOの歪みギターによるオープン・コードのヴォイシング/アンサンブルのテクニックも使っている。一番最後の小さいシンセ・シーケンスはAfter Burnerからのインスパイア。
  • Warning Line[M]
    • 後期に作った渾身の一作。上記2曲も熱いが、この曲は熱さに加えて怨念みたいなものまで感じられる。実はミックス前に元データを誤って消してしまい、残っていたのはMDに録音した1テイクのみだった。当然NGなハズだが、エンジニアさんとのんたんは、成長の証し、気合が目に見える曲だということでそのデータをマスタリングしてもらった。この曲の冒頭から延々と拍を食い続けるメイン・ギター・リフは、Thin Lizzyからインスパイアされたもの。続いて重なってくるコードはTrilogy / Yngwie Malmsteenからクイーン・イン・ザ・ラブの雰囲気で、Luna SeaのSUGIZO風のオープン・ヴォイシングを使ってダビングをしている。続いてハーフ・ミュート連打のリフになるが、これはジョン・サイクス全般からの影響。そのままハモりが重なる。バロック風の激しいシンセ・フレーズのパートでは、ハーフ・ミュートに加えコードのスライドも織り交ぜたちょっと密度の高いリフになっている。続いてギター・ソロA。これは前振りに過ぎず、大した見所はない。ソロ本番はワウ・カッティングのバッキングでガラッと雰囲気が変わる部分。これは不良っぽさの出るダブル・チョーキングから始まり、ハーフ・ミュートの隙間にピッキング・ハーモニクスも織り交ぜ、Van Halen風のチョーキング中のライト・ハンド、高音域でのペンタトニックの応酬など、コピーし甲斐のある構成。このソロの、ドライで荒れたギター・サウンドはRichie Kotzenの雰囲気を少し出したかったため。このソロの後はまた執拗なハーフ・ミュート連打の高速ハモりリフ。このしつこさはシン・リジィの雰囲気を出したかったので。続いてまたバロック風のシンセ・リフになる。ここはメイン・ギター・リフをペダル・ノートとして、ベートーベンの月光をリミックスした。そして最後は冒頭のイングヴェイ風のコードに受け継がれる。ここで曲がループするわけだけど、最後にピストルのような爆発のような効果音が一発入ってからループに戻る。この曲はプレイ時間が長く難易度も高い最終局面のために作った曲で、てんこ盛りの構成でゲーム中のほかの曲と比べて少し長く感じるようになっている。
  • Sunset Glow[M]
    • ギターなしの曲。殺伐とした世界観一色では色気がなく少しカラフルにしたかったので、歌謡曲のようなコテコテのコードの色合いをゲームに与えることにした。サウンドもアレンジも非常にライトにしてある。とはいえ、途中にメリハリをつけるためベース、ドラムのソロ的なコーナーを設け、チョッパーベース猛連打やあり得ないドラム・フィルなどでゲームミュージックでしかあり得ないサウンド要素も加えてある。この部分はナムコのギャラクシアン3などに影響されている。もちろん到底偉大な先輩方のサウンド・クオリティには追いつかないレベルで、ベースといいドラムといい打ち込みの技術の稚拙さが炸裂。エンジニアさんは「ポップスだ!」と喜んでくれていたのが嬉しかった。
  • Complection[M]
    • Aim Highのフレーズを膨らませたモノ。ロック・ギターを弾く人なら誰でも作れるであろう1984 / Van Halen風sus4リフ。シンセもヴァン・ヘイレンみたいな音のハズだったが、機材が空いてなくてショボい音になってしまった。
  • Failure
    • 聴いてのとおり、Warning Lineの最初のフレーズ。これは特に狙いではなく、時間がなかったため。すいませんです。
  • Hanger
    • 最終局面のブリーフィングBGM。初期の曲で、いわゆるゲームミュージックを目指して作成。ただし音楽的に一捻り加えてあって、前半のパートは7/8拍子による不安定さで最終局面での混沌とした意識を、また無機的なシンセ・シーケンスで任務遂行の非情さを表現。後半の6/8拍子から成る叙情的な部分の対比を作っている。任務は機械的にこなさねばならないが、そうはいっても人間なので色々思うところはあるよ的な雰囲気。曲の構成が変わるところで音色のリリースが残っていることによって音が当たってしまっているミスが遺憾。また、この曲も機材不足で思ったシンセ音を使うことが出来なかった。
  • Normal Ending
    • 初の大仕事を振り返り、最後に作った曲。既にムービーのカット毎のイメージ、タイミングは完成されていたので、それに完璧に合わせて作る必要があった。ムービーのワンカットワンカットの意図・色彩に合わせ、すべての曲の抑揚・構成を完璧に同期させた。文字通り、完璧に、である。曲としても成立されられたのは奇跡以外の何者でもない。同期と曲としての完成度を天秤にかけ、両者とも一切譲らなかった。そのため自己ボツ曲は7〜8曲。どれも違う曲調だった。
    • クリーン・トーンのギターを中心に据えた。クリーン・トーンなぞ普段は弾いたこともなかったが、やってみると調子づいてメロディのハモりまで作ってしまった。結局この曲では歪みギターのパフォーマンスは冴えないが、Jay Graydonハーレム・スキャーレムスティーヴ・スティーブンス、エイドリアン・ヴァンデンバーグなどに見られるようなグッと来るフィーリングを目指した。
  • Guitar Play
    • Lightning Speed[M]
      • のんたん作曲。8ビートならお手のモノ。ギター収録は瞬間でスカッと爽やかにFinish。これで勢いづいた。
    • AimHigh
      • のんたん作の初期の名曲で初コラボレーション。ギター以外のオケを渡され、ギター・メロディは自分が作曲。最初の面の曲なので、大空へ羽ばたく喜びを表現したかった。よって、ダイナミックなサビの導入とともにツイン・ギター・メロディが駆け上がり、伸び上がり、さらにフレーズは上に跳躍する。伸びやかなフレーズと徹底した3度のハモりで爽やかな雰囲気を作っている。曲が3連なこともあり雰囲気はThin LizzyPraying Mantis風になっている。2ループ目のサビ部分はメロではなくソロになっている。ギターをシングル・リードにすることでより自由な動きが出来るようにした上で、リア・ピックアップとフロント・ピックアップの2つの音色に分け、速弾きの掛け合いをした。リアのほうはスタンダードなブリティッシュ・ロック、フロントのほうは当然、 Yngwie Malmsteenの奏法である(笑)スウィープ奏法による大胆なアルペジオ・フレーズでスケール感を出した。とかなんとか言ってるけど、要は遊び心。
    • Bear Tracks
      • のんたん作。執念のドラム打ち込みと、怪しい曲展開が聴き所。ギターはほぼ指示通り、のハズが、後半はやはり暴れたい放題。
    • Fire Youngman[M]
      • ハードロック系変形合体ロボもの、というのんたんの代表曲。この曲名も、間違った英語をそのままゴリ押し。笑えるほど白熱した曲。まず出だしから熱い。ギターは左チャンネルではピッキング・ハーモニクス、右チャンネルはナチュラル・ハーモニクス+アーミングでAメロへ突入。Aメロでは左右まったく違うリフを弾いている。左チャンネルは原田喧太から少し影響を受けたリフ、右チャンネルはLions Heartの初代ギタリスト、マイク・オウワーズ風。日本の軽快なロック・リフと、北欧コテコテの様式美リフが同時に鳴っているような感じ。先輩に、「曲のグルーヴと違う!」と言われても、「え?グループ?」とまったく訳が分かってなかった。その後、衝撃的な戦隊モノのアレンジで度肝を抜いた後、ソロへ。ここはチョーキング+ビヴラートを多用したツイン・リードでPraying Mantisのクライ・フォー・ザ・ニュー・ワールドでのコテコテな臭さ、暑苦しさを狙った。ただ、このソロは完成直後も少し不満が残った。ちなみにこの曲、1ループ目の最後に入るあり得ないほどド派手なハンド・クラップも注目ポイントだ。
    • Blow Away
    • Night And Day[M]
      • 前作の曲のリメイク。FMラジオの交通情報のような爽やかラテン風味。エースにラテンとは大胆な発想。メロディは別の先輩が作ったものなのだが、ギターの普通のフィンガリングでは演奏不可能で、かなり苦労した。最後のほうでは疾走感を増したかったのでメロディを勝手に崩してソロにしている。ここではラルク・アン・シエルのKEN、そして最後の最後はルナシーの「G」という曲のギターソロの難解なスライド+スキッピング連発のソロの奏法を応用している。
    • A Fresh Youngster
      • のんたん作。メロディは自分が担当しました。この頃になると開発も終盤で、エンディング曲の制作に向けてイケイケギターばかりでは済まされず、ギターの引き出しを増やすために勉強をし始めた頃。教科書はジェイ・グレイドンの教則ビデオ
    • Ending Atract
      • 正にやりたい放題、というかイカれた。時間がなく、ギターは1テイク。
    • Extra Ending
      • のんたんのアダルトな一品。後半のギターは二人で膝を突き合わせフレーズを練った。「うわ、このタメ、やらしぃ〜!」とか笑いながら収録。ギターのタメは本当にやり過ぎた。この曲でも最後に盛り上げたかったため、基本的な奏法のラインを逸脱したソロを構築。

ザ・ロック



Image and Hours / Dream Theater



Blue Murder / Blue Murder



危険なパラダイス / Tyges Of Pan Tang



Surpence Albus / White Snake



Thunder & Lightning / Thin Lizzy



Rust In Peace / Megadeth



Out Of My Tree / John Sykes



Nothin' But Trouble / Blue Murder



セガ・ゲーム・ミュージック VOL.3


Style / Luna Sea



Trilogy / Yngwie Malmsteen


Wave Of Emotion / Richie Kotzen


1984 / Van Halen


Airplay for the Planet (Ltd) / Jay Graydon


The Best Of Praying Mantis / Praying Mantis


Lions Heart / Lions Heart

  
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