Big-M's Special
"J-JAZZ"  日本のジャズ
Update '99.6.11


  ---  Column 綾戸智絵というシンガー  ---


「チーボー」こと綾戸智絵がブレークしている。


2,3年前あたりからネットなどの口コミ情報で熱狂的なファンが増え出したことに
注目し続けてていた。
最近いくつかの特集もののTV番組や雑誌で紹介されたことでブレークにいっそう
火がついたようである。
最近では6月9日付けの週刊誌SPA!の初っ端で篠山紀信のグラビア写真入で
大々的に掲載されている。
 
人気大爆発真っ最中!という現在の状況だが、その人気の中身をみると、単に一
部のジャズマニアの受けがいいというわけではない。実に幅が広いファン層を獲
得しているという点が興味深々なのだ。
かといって彼女の歌は一般向けをねらった安易なものというわけではない。
音楽的にはしっかりと奥が深く、しかも狭いジャズ・ジャーナリズムの世界の垣根
を越えて多くの人達の心を引きつけているというのが面白い。
ちなみに作家の村松友視、コピーライターの糸井重里といった人達が惚れ込んで
ほとんど追っかけ状態なのだそうである。
 
新作CDの「Life / EWCD-0011」を入手して聞いてみた。
 
声と言葉に込められたハッとするような強烈な「気」に圧倒されるのである。
選曲、録音、ジャケットデザインなど技術的に見ても非常によく出来ている。
 
・・・おっと待てよ!こんな覚めた見方をしてる場合ではない。
とにかく歌そのものに痛く感動するのだ。
 
ライブは残念ながらまだ聞いていないが、NHKのTV番組「トップランナー」
に出演して歌っているのをじっくり見た。
まず圧倒的でスタイリッシュな唱法で一撃をくらってしまう。
そして歯切れのいい大阪弁のMCを浴びせ掛けるギャグ満載のサービス精神、
そしてそのギャグの裏に見え隠れする、身も心も満身創痍の彼女の壮絶な人
生遍歴、それらすべてに興奮させられる。
 
涙と笑い!(というと松竹新喜劇になってしまうが・・・)にあふれる磨き抜かれ
たエンターティメントの技ばかりでなく、表現技術を越えた存在自体の凄さにも
圧倒されるのである。
 
マスコミや一部の業界人の熱烈な反応はもとより、一般ファンの反応もただ事で
はない。
綾戸智絵の歌を聴いて感動した!元気をもらった!人生が変わった!
こんな声が巷から続々と寄せられているそうなのである。
 
「家庭崩壊状態で登校拒否を続けていた娘が彼女の歌を聞いて高校に行き出す
 ようになりました。家庭も見違えるように明るくなりました。」
                           神奈川県 夏木ミサ子(仮名)38才

「長年付合っていた彼と別れて、落ち込んで一時は自殺まで考えましたが彼女の
 CDを聞いて生きる勇気が湧いてきました。本当に感謝してます。」
                           福井県   野村梅乃 (仮名)19才

「CDを聞いて感動すると体の血の循環がよくなって長年の持病の腰痛がうその
 ようになおりましたぢゃ。」
                           佐賀県  坂本虎二郎(仮名)76才

「小学校2年の息子に毎日CDを聞かせたら、アトピーが直りました。」
                           岩手県  松本典子 (仮名)34才

「綾戸智絵って、超スッゴーーイ!ってゆーかぁ・・お洒落だしー、みたいな?
 おいおい、なーーんてねー・・」
                           東京都  渋谷プー子(仮名)15才

ここまで書くとこれがギャグであると気がつかれた方もいるのではないか。
(ってゆーか・・・もとからバレバレではないか・・・!)

嘘を広めるつもりは毛頭ないのである。これほどに聞き手の熱狂的な反応があ
るということをお伝えしたいのである。

さて、保守的なジャズジャーナリズムの世界を見ると、打って変わって冷ややか
な目で受け止められているという現象があることもここで紹介しておきたい。
歴史と権威のある某ジャズ専門紙では、前作のCD2作についてもかつてかなり
手厳しい評価をしていた。そして目下これだけブレークしている現実に対しても
特にコメントの記事はなく沈黙を続けているのだ。
これが綾戸智絵が大手レーベルからの誘いに背を向けて、中小のインディーズレ
ーベルでの制作にこだわりつづけることと関係があるのかどうかは私の知るとこ
ろではない。
また、あのチリメンビブラートがいやだ、とか英語の発声が乱暴だとかいった感
想を持つリスナーがいるだろうことは想像がつく。
ま、これは好みの問題だからどうのこうのとやかくいうことはない。
 
ともあれ、なにかに感動してないとやってられない、というような閉塞感みたいな
ものを感じる今の世相の中で綾戸智絵の歌が輝いているのだ。
幸か不幸か、こういった世相と彼女の歌が不思議な符合を見せているのだ。
その結果が今のブレーク状態ではないかと思っている。
バブル時代は「熱い涙と深い感動・・・へっ、そんなのだっせーー!!」
だったはずだ。
今の時代そのものが深い感動を乞い求めているのではないか、そんな気がする。
 
私の好みで新作「Life」の中から1曲紹介するとすると、"You've got a friend"
ということになるだろう。
この一曲、私にとっては実に興味深いのである。
歌の解釈や唱法に綾戸智絵らしさみたいなものを強烈に感じるのだ。
 
まずC・キングのオリジナルの原詞をかなりいじってしまっている。
もとの歌詞には微塵もない、friend(友達)=Jesus(イエス)であるといった、
ゴスペル的解釈を持ち込み、綾戸流のゴスペルの世界に完全に持っていってしま
っているのだ。
あなたのすぐそばにいる、いつでもあらわれてくれる友達、それは神である。
しかもその神とは堅苦しい概念でなく「神さんって話のわかるええおっちゃんや
でえ」ってな雰囲気で、きわめてフレンドリーな綾戸調解釈で歌われているので
ある。
そこに「天にむかってみんなで歌ったらええねん。それがゴスペルなんや。」
いう、目から鱗のあっけらかんとした彼女のゴスペル観を見出すのである。
CDの中で登場するアマチュアコーラス隊とのコールアンドレスポンスは本当に
興奮する。けっしてうまいコーラスというわけではないが、歌っている本人達が
鳥肌が立つような感動を味わいながら歌っているのがわかる。
気分がモロに伝わってくるのだ。
 
うーむ、バックコーラスに一度参加してみたいものである・・・
 
しかし聞くものの心を揺さ振る歌を久しぶりに聞いた気がする。
全然タイプが違うがロックシンガーのジャニス・ジョプリンの歌で感じるインパ
クトと同じような揺さぶられ加減である。
 
おまけに実に元気が出るのだ。なぜと言われてもどうにも説明しようがない。
体のありとあらゆる細胞の毛細血管がさわさわと広がって血流がどっと加速して
代謝がよくなってくるのを感じる。
血行促進、代謝の改善にもたらす効果はマムシの生肝、スッポンの生き血並み
ある。
みなさんにもぜひ綾戸智恵の生き血を・・・あ、じゃなかった歌を味わってみる
ことをお勧めする次第である。
もちろん保存食(CD)よりナマが効き目があるのはいうまでもないだろう。
 
実は私も、持病の腰痛と四十肩の痛みの予防のために綾戸智恵の歌を一日1曲
聴くことを画策しているところだ(そんなもん画策するなーーー!)
神経性胃炎や自律神経失調にも効果があるらしいぞ!(眉唾じゃのう・・・)
 
冗談はさておき(本気なのでは・・?)ライブを一回聴いてみたいものだ。
なかなかチケットが獲得できないのだ。しかしライブを一回聴いてしまうと二度
三度聴きに行かずにはいられなくなるのではなかろうか。
 
綾戸智恵の追っかけしたい、したい、したい、したい、したい、したーーい、な
どとはしたなく騒ぐと知性派の私のイメージが狂ってしまう(どこらへんが知性
派なのだ?)ので控えておく。

かといって衝動を無理に押え込むこともないぞ!などと自問自答と葛藤を繰り
返す日々なのであるが・・・・・・・・・・うーーーむ!・・・・熟慮熟考を重ねた結果

・・・・やっぱり追っかけすることにしよーっと!!!
(おいっ!なんだかんだ言って要はそれが言いたかっただけなのかよー?)

駄文をよくぞここまで読んでいただきました。本当にありがとうございます。


 

          


     CHIE AYADO /  Life  (EWCD0011) 
          Recorded in Tokyo on March 7,9,10&11,1999 

       Personnel
          綾戸智絵   vo,pi,B-3 organ
         日野元彦  tap    江藤良人  ds   杉本智和  b 
           K-WISH & ANOINTY MASS GHOIR  chorus
        
     Songs
        New York State Of My Mind     /  B.Joel
        Amazing Grace                 /  J.Newton
        Bye Bye Blackbird             /  M.Dixon-R.Henderson
        Tennessee Waltz               /  R.Stewart-P.E.King
        You've Got A Friend           /  Carole King
        Love Letters                  /  H.Heyman-V.Young
        Route66                       /  B.Troup
        I Could Have Danced All Night /  A.J.Lerner-F.Loewe
        Mr.Bojangles                  /  J.J.Walker
        Everything Must Change        /  B.Ighner
        Foe Once In My Life           /  R.Miller-O.Murden
        Fever                         /  J.Davenport-E.Cooley
        Yozorano Mukou                /  スガシカオ-川村結花
        Let It Be                     /  J.Lennon-P.McKartney

      Produce
       ewe East Works Entertainment Inc.
       http://www.ewe.co.jp

      綾戸智絵のホームページはこちら
       http://www.dmi.co.jp/chie/
 

 
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