特許戦略の初歩その9





特許出願の案内>>特許戦略の初歩その9

 用途発明とは

用途発明とは、従来から存在する物と同じ構造であっても課題や用途が新規な発明で、新規で特殊な用途に有用性があれば特許となる発明です。用途発明は電気、機械分野よりもむしろ材料・化学・医薬分野で使われる概念です。例えば、新規な構造の化学物質を製造した場合には、何に使用できるかを記載する必要が生じ、その用途についての記載がない場合は競争相手に用途発明を抑えられてしまうことも考えられます。用途発明は、用途発明同士を比較することで、特許性が生じますので、後願を排除するためには、新規な用途と思われる部分に、当業者が反復継続して所定の効果を挙げることができる程度まで具体的・客観的なものとして記載され、顕著な効果の存在を示すことが必要です。


 判例 

いわゆる用途発明とは、物の一属性に基づき、その物をある特定の用途に用いることについての発明であつて、その発明の成立には、その用途について発見的であることと、その確認が明確にされていることが必須である(東京高裁 昭和54(行ケ)109 S59. 6.21判決)。 「良好な作用を示した」「高い効力を示した」との記載は、発明者において予め定めた評価基準にあてはめて顕著な効果を示したことを意味すると理解できるものと認められる。

「用途発明」とは、物の有するある一面の性質に着目し、その性質に基づいた特定の用途でそれまで知られていなかったものに専ら利用する発明をいうものとされ、物が周知あるいは公知であっても、用途が新規性を有する場合には、特許性の認められる場合があることを示すためにされている用語である(東京高裁 平成10(行ケ)308 H12. 7.13 判決)。

用途発明は、既知の物質のある未知の属性を発見し、この属性により、当該物質が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明であると解すべきである。なぜなら、既知の物質につき未知の属性を発見したとしても、それによって当該物質の適用範囲が従来の用途を超えなければ、技術的思想の創作であるということはできず、また、新たな用途への使用に適するといえるものでなければ、適用範囲が従来の用途を超えたとはいい難いからである(東京高裁 平成10(行ケ)401 H13. 4.25判決)。 用途発明の新規性を判断する上で、対比の対象となる発明は、用途発明でなければならない(同)。先願明細書の記載によっては、用途発明である先願発明は、構成上本願発明と一致する部分を含めて、当業者が反復継続して所定の効果を挙げることができる程度まで具体的・客観的なものとして構成されているとはいえず、発明として未完成であるというべきである。

医薬についての用途発明においては一般的に、物質名、化学構造だけからその有用性を予測することは困難であり、明細書に有効量、投与方法、製剤化のための事項がある程度記載されている場合であっても、それだけでは、当業者は当該医薬が実際にその用途において有用性があるか否かを知ることはできないから、明細書に薬理データ又はそれと同一視すべき程度の記載をしてその用途の有用性を裏付ける必要があり、それがなされていない本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法36条3項の規定に違反するものといわなければならない(東京高裁平成8年(行ケ)第201号平成10年10月30日判決)。


 用途発明についてのコメント

用途発明の先後願がある場合に、新規な用途ではないとの主張によって後願排除も可能だと思いますが、先願発明が未完成との抗弁も可能です。後の出願を有効に排除するためには、先の出願の用途発明を完成させておく必要があり、所定の効果を挙げることができる程度まで具体的・客観的な実施例の記載が求められるとの判例もあり、それは先の出願にはできない場合もありそうと思います。特に、医薬分野では、有用であるとのデータが必要と思います。

特許戦略の初歩その1
特許戦略の初歩その2
特許戦略の初歩その3
特許戦略の初歩その4
特許戦略の初歩その5
特許戦略の初歩その6
特許戦略の初歩その7
特許戦略の初歩その8
特許戦略の初歩その9


有明国際特許事務所 For domestic and international business transactions



特許出願案内に戻る

〒135-8071
東京都江東区有明3-6-11 TFT郵便局私書箱2117号
TEL 03-5530-5011 (代表) FAX 03-3528-3210
URL:http://www.ariapat.jp webmaster@jurisplus.co.jp


有明国際特許事務所

このページへのリンクは自由ですが、無断転載はお断りします。
All Rights Reserved.