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北アイルランド
政治的背景
アイルランドの政治的分割は、アイルランド32州のうち26州が何世紀にもわたる英国支配(その間にはアイルランド全土が連合王国の一部として英国に統治されていた120年間が含まれる)の後に、独立を手に入れた1920年〜1921年に始まる。残りの6州は北アイルランドとして英国領にとどまる選択を許され、統治権は英国議会に残されたものの他の多くの権限は1920年にベルファストの地方
議会及び政府に委譲された。 1921年から1972年までの間、北アイルランドは英国議会議員を選出していたものの、地方政府は地方行政に関して自治権を保持していた。政権はこの地域の多数派であるユニオニスト(英国に留まる事を望む者の総称)を支持母体としたユニ
オニスト党が独占し、北アイルランドの全人口の3分の1を占めるナショナリス ト派(南北アイルランドの統合を望む者)は地方政府に参画できず、選挙権や住
宅、さらに雇用の機会などに関して構造的な差別に苦しんできた。 市民権獲得を目指した1969年の非暴力運動は敵意に満ちた激しい抑圧を受けた。
以後北アイルランドは長く政治的危機を迎えることになる。1970年代初頭にはそれ以前にも時々繰り返されていた。IRAによる武装行動が一段と増え、それにつれてロイヤリスト過激派と呼ばれる反対勢力による武装行動も増加した。
末期的状況の下、1972年に北アイルランド地方議会と政府は停止され、再び英国政府があらゆる面において北アイルランドを直接統治することになった。これ以後、1974年に権限分担行政機関が設けられたほんの短い期間を除いて、北アイルラ
ンドの統治は現在まで英国政府の北アイルランド担当相のもとで行われている。 北アイルランドは現在のところ英国議会に17人の議員を選出している。
英国・アイルランド政府間協議(1981年)
1980年のダブリン城での当時のホーヒィー首相とサッチャー首相との両国首脳会談において英国とアイルランドの両政府は二つのアイルランド、及び英国とアイルランドの関係改善に向けて合意に達することが出来た。
これが両国関係の新しい出発となり、翌1981年には両国政府間評議会が設けら れ、この評議会によって、北アイルランド紛争の解決に向けて最重点的に協議できる公式の枠組みが出来上がった。
英国・アイルランド間の合意
1985年11月、英国・アイルランド両国政府は、英国・アイルランド間の合意に調 印し、国際協定として後日国連に寄託した。この合意は、「北アイルランドに平和と安定をもたらすため、アイルランドにおける二つの主要な伝統の和解と二国間の新しい協調体制の創造、反テロリズムへのいっそうの協力」とその目的とし
ている。政府間評議会が設立され、アイルランド政府が北アイルランド問題に対 して意見を求め、提案をする事が可能となった。そして、英国、アイルランドの
両政府に両国間に起こりうる相違点の解消のための決然たる努力を求めている。 評議会の議長は両国の代表、アイルランド外務大臣と英国の北アイルランド担当相が務める。
Round Table Talks 1991/1992 (円卓会議 1991・1992)
1991、および92年に、アイルランド・英国両国は北アイルランドの主な政 党を招き円卓会議を開催した。(シン・フェイン党は 除外。)会議は北アイル
ランド情勢を形成する3つの関係、北アイルランド内の関係 、南北関係、およ び英・アイルランド関係という3つの柱に沿って行われた。幾つか共通の立場を
確認することは出来たが、包括的な合意に到達することは出来なかった。
Joint Declaration 1993 (共同宣言 1993)
1993年12月15日、当時のアルバート・レノルズ首相とジョン・メー ジャー英国首相は共同宣言を発表し、アイルランド・英国関係、およびアイルラ
ンド国内関係の政治的解決を目指す和平プロセスの土台となる基本原則を表明した。 宣言の核をなすものは、自決権と同意尊重の原則である。英国政府は「北アイルランドに如何なる利己的な戦略上や経済的関心も有さない」ことを表明し、「北アイルランド住民が英国との連合又はアイルランドとの統一のどちらを選ぼうとも多数の民主的意志を支持する」ことを再確認した。さらに英国政府は宣言の中で「もし統一されたアイルランドがアイルランド住民の望みであるならば、南北双方の合意により、双方で自由かつ同時に表明された了解に基づき、自決権を行使してこれを実現できるのはアイルランド住人のみである」ことに合意してい
る。また、アイルランド政府の立場として宣言は、「アイルランド全体の住民に よる自決という民主的な権利は北アイルランド住民の過半数の合意と了解があってはじめて達成され、行使されるべきものでなければならない」ことを認めている。
この宣言は、政治的目的追求に関る全ての問題の解決は平和的、かつ民主的手段にのみよらなければならないとしている一方で、「平和的方法にのみよることを
誓い、民主的プロセスに従うことを示した民主的な権限の受託をうけた政党は民主政治に全面的に参加し、今後両国政府と関係政党間で行われることになる対話に自由に参加することができる」と述べて、軍事組織関係者にも政治的な和平プ
ロセスに参加できる道を開いている。
Paramilitary Ceasefires 1994 (停戦 1994)
1994年8月31日、IRAは軍事行動の完全停止を発表した。これに続き、 ロイヤリスト合同軍事司令部(CLMC)も同様の趣旨を1994年10月13
日に声明している。これらの停戦を受けて、両国政府はシン・フェイン党ならび にロイヤリスト2政党との直接対話を開始した。
Joint Framework Document (枠組み文書)
1995年2月22日、 当時のジョン・ブルートン首相ならびにジョン・メー ジャー英首相は「合意のための新しい枠組み」と題する文書を発表し、北アイルランド政党による対話と交渉を支援するために両国政府間で確認された見解を示
した。同文書にはいかにすれば北アイルランドに存在する2つの伝統を持つコ ミュニティーの永続する要望や利害を損なわずに、名誉ある和解を導き出すこと
ができるか示されている。同文書は共同声明にうたわれた原則を実行することを 目標とし、双方にとって偏りの無い憲法改正と北アイルランド状勢を形成する3
つの関係全般に関る新しい政治のありかたを提案している。また、より充実した人権保護策も盛り込まれている。両国政府は 「枠組み文書」が計画書ではな
く、討議の基礎となるものだと明言した。また、両国政府は北アイルランドの政 党を含む包括的交渉を公約しており、その結果について南北での国民投票という
形の民主的批准を受けることを表明している。 「枠組み文書」の発表と同時に、英国政府は北アイルランドの内部調整のため のより詳細な具体案を発表した。
Subsequent Political Development (その後の政治情勢の経過)
「枠組み文書」が発表された翌年には、全政党を含む包括的対話をより推進する ための様々な努力がなされた。1995年11月28日、アイルランド・英国両首相はコミュニケを発表し、交渉の基本ルールの合意と武装解除問題にどのよう
に対処していくかについて合意に達するという二重の目的をもったプロセスを開始した。 両国政府により設立された国際委員会(議長:ジョージ・ミッチェル米元上院
議員)は1996年1月24日武装解除問題に関する報告書を発表した。報告書 はまず双方の軍事組織に交渉前武器放棄の意志がないことを認めた上で、交渉に
参加する全関係者が民主主義の六原則に従い、完全かつ検証可能な武器放棄を含めた非暴力主義に徹することを誓約するよう勧告した。委員会はさらに幾つかの武器放棄方式を挙げ、交渉参加組織に対し交渉期間中にある程度の武器放棄を実施する案を検討するよう勧めた。
1996年2月9日IRAは停戦を破棄した。それに伴い、アイルランド・英国 両政府はシン・フェイン党との閣僚レベルの接触を絶ったが、事務レベルでは続
けられている。閣僚レベルの対話の再開ならびにシン・フェイン党の交渉への参加は1994年8月のIRAの停戦の再開が前提であることを両国政府は合意している。
Political Negotiations (政治的交渉)
5月末の北アイルランドでの選挙を受けて、北アイルランドの主要政党(シン・ フェイン党を除く)ならびにアイルランド、英国政府間の包括的交渉が1996
年6月10日に開始された。アメリカの元上院議員ジョージ・ミッチェル、カナダの将軍ジョン・デ・シャステランとフィンランドの元首相ハッリ・ホルケリが議長を務めている。
Renewed Ceasefire (停戦再開)
1997年7月20日 IRAは、停戦を再開した。
International Fund for Ireland (アイルランド国際基金)
英国・アイルランド間の合意第10条の条項に基づいて、1986年アイルラン ドと英国の両政府は経済及び社会の発展、さらには全アイルランドのナショナリストとユニオニストの対話、和解を促進させるためにアイルランド国際基金を設立した。アメリカ、EU、カナダ、オーストラリア及びにニュージーランドがこ
の基金に寄与した。 アイルランド国際基金は、その目的の遂行にあたり、特に北アイルランドでもっ とも不利な立場に置かれた地域の改善に重点を置いて、私企業や地域社会団体の経済活動をさまざまなプログラムを通して支援している。
Economy (経済)
1996年6月の北アイルランドの推定労働人口は57万3,090人。主要就 労分野は、サービス業(74%)、製造業(鉱業、採石業を含む)(18%)、
建設業(4%)、農業、狩猟、林業及び漁業(3%)、電気、ガス及び水道水供 給産業(1%)である。1996年8月の失業者数は9万2,554人で、全労
働人口の12%にあたる。 北アイルランドの現在の人口はおよそ160万人である。
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