「在日コリアンと日本社会−『公民権』をめぐって」
金 早雪(信州大学経済学部)
0. 前史:戦前「帝国(皇国)臣民」時代
【在日朝鮮人の増加】1910年約2500人、20年2万人、30年30万人、終戦時200万人
・push:米騒動→産米増殖計画→増産以上の移出激増→朝鮮農民の下方転落→人口流出
・pull:所得・雇用機会の格差、37年以降には徴用・強制連行も
【戦前の在日朝鮮人と参政権】
@ 梁泰昊「尼崎市会議員—朴炳仁のこと」(『ほるもん文化』3号所収)より:
1925年の男子普通選挙法(選挙区は日本本土のみ)により、1929年の堺市議会議員選挙に初の朝鮮人立候補者を出すが落選、その後42年までに立候補者延べ382人、当選99名。
A 松田利彦「衆議院議員選挙と朴春琴」(『ほるもん文化』3号所収)より:
1930年現在、日本人の有権者/人口比が2割に対して、在日朝鮮人有権者は8.1%(24,244人)。「欠格事項」(貧困で公私の救助・扶助の受給者や一定住所のない者など)ゆえか。
1.在日朝鮮人の法的地位
1945年 衆議院議員選挙法(女子を含む普選法)付則で、(内地)戸籍法非適用者を排除
1947年 外国人登録令(52年より「外国人登録法」)により、事実上、日本国籍剥奪→「三国人」
1951年 出入国管理法(198*年より出入国管理および難民認定法←82年難民条約加盟)
1952年 サンフランシスコ講和条約発効:日本国籍剥奪と法律126号2条6項「一般永住」
1965年 日韓条約(法的地位協定)による「協定永住」(申請許可主義・3世代25年間)
(1978年 マクリーン判決:外国人の政治活動禁止)
1992年 難民認定入管法改正:一般永住・協定永住などを「特別永住」に
2.日本における国籍と市民権
・ 参政権 → 3.参照
・ 公務就任権
・ 国立大学外国人教員採用:1982年「3年任期」
・ アジア系各種学校と国立大学入学資格
3.(定住)外国人参政権問題
【背景】
・ 世代交代/定住化
・ 1971年日立就職裁判を契機とする種々の権益擁護運動(年金、住宅、公務就任etc)
・ 日本国籍取得への心理的抵抗と「帰化」行政・要件の壁(氏名変更の窓口指導)
・ 諸外国(とくにヨーロッパ)の外国人参政の諸事例
・ 1980年代以降のニューカマーの増加(在日韓国・朝鮮人は半数以下に)
【近年の動き】
・ 1989年参院選で大阪在住英国人が選挙(投票)権をめぐって提訴(93年最高裁上告棄却)
・ 1991年大阪府で在日韓国人が選挙(投票)権をめぐって提訴(95年最高裁棄却)
・ 1992年参院選「在日党」立候補不受理を提訴(95年敗訴:地方参政権付与可能の判断)
・ 2002年3月 滋賀県米原町の住民投票で外国人が初投票
愛知県高浜市、常設型住民投票の外国人参加改正提案(6月可決見込み)
【論点と政府のスタンス・対応】
@ 地方・国政: 地方選挙限定が主流
A 永住(旧植民地出身者・日本人の配偶者等)・定住かどうか: ニューカマー排除
B 選挙権・被選挙権: 公職とくに公の意思の参画への外国人の参与不可
政府:自民党はおおむね、外国人にはいかなる参政権も付与すべきではないという立場
2001年5月「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法案(仮称)」の浮上
【補足】国際化時代における国籍法の課題:
@ 生地主義と血統主義(日本は1985年に父系から父母両系に)が生む陥穽
国際結婚・移住などの結果、二重国籍あるいは無国籍の可能性
A 国籍取得(「帰化」naturalization)の要件
***参考文献
内田雅敏『「戦後補償」を考える』講談社現代新書。
内海愛子ほか『「三国人」発言と在日外国人』明石書店、2000年、1000円。
かわぐちかいじ「太陽の黙示録」、『ビッグコミック』連載中。
金早雪「信州大学発・いろんなコリアン」、『ほるもん文化』10号(近刊)、新幹社。
金満里『生きることのはじまり』筑摩書房、1996年、1068円。(在日韓国女性障害者の自叙伝)田中宏『在日外国人』岩波新書、1991年。
トーマス・ハンマー(近藤敦監訳)『永住市民(デニズン)と国民国家』明石書店、1999年。
原尻秀樹『在日としてのコリアン』講談社新書。
『ほるもん文化(在日朝鮮人が選挙に行く日)』3号、新幹社、1992年。
Q1 外国籍住民に地方参政権を付与することについて、どう考えますか? ・ 参政権は日本国籍者に限定すべきだから、参政権が欲しければ「帰化」すべきだ。 ・ 一定の条件の下で付与してよいなら、どういう条件が合理的か。 ・ 国籍条項をなくす(!)ことも一案だが、その場合(とくに国政)参政権者をどう定義するか。 |
Q2. 今後、日本社会は在日韓国・朝鮮人をどのように処遇すべきでしょうか? ・ 国籍が違う(帰化しない)以上、外国人として処遇せざるを得ない。 ・ 本国とは縁も切れているなら、日本社会に溶け込むように、日本国籍も自動的に付与すべき。 |
Q3. 質問・感想、要望など何でもどうぞ・・・ |