猫は絶対に墜落死しないのか?


われわれの日常の経験則では
どこかから落ちた(飛べない)物体は
だいたい その落ちた高さに比例して衝撃(ダメージ)を受けます

地球の重力中心に引かれて落ちる物体は
(重力による加速を受けて)落下距離が大きくなるにつれて
どんどん早く落ちるようになっていくためですね

しかしながら
空気による摩擦抵抗だって速度に比例して大きくなるんです

早く落ちれば落ちるほど
物体が一定時間内に触れる空気の体積が増大することから
落下速度が大きくなるほど
「濃い」空気のクッションに載っている形になります

この結果 落下速度がある早さに達してしまえば
重力による加速と空気抵抗が釣り合ってしまって
落下速度はそれ以上増えなくなります

空気があるところで落下している物体は
やがて必ず
加速運動ではなくて等速運動をするようになるんです
このときの速度を
終端速度(terminal velocity)などと呼んでいます

大気中を落下する物体の終端速度は
その物体の形状によって大きく変わります

地面に対する表面積が大きくて重量が少ない物体ほど
落下後 早い段階で終端速度に達するのはわかりますね?

スカイダイビングをしていて
ちゃんとパラシュートが開いたひとと開かなかったひと
この両者の終端速度が思いきり違うことぐらい
どんなおバカさんにもわかることでしょう

猫は高所から落下すると
まず反射的に「猫スピン」をして足先を地面に向けます

地面までの距離が近ければ
そのまま音もなく着地してしまうのは
みなさん よ〜くご存知のとおり

地面に到達するまで時間がかかる場合
猫スピン 猫はとりあえずその姿勢を保ったままにします

重力加速でどんどん落下速度が上がっても
あわてず騒がず 姿勢保持
・・・すると
増大する空気抵抗でだんだん四肢が広がって
脚の付け根にあるちょっと弛んだ皮膚が
空気をはらんでふくらみます

これが「猫ムササビ」状態です

この形態をとった猫の終端速度は
時速100kmにちょっと欠けるぐらいだといわれています

そのぐらいの速度で地面に衝突しても
(腹を地面のほうに向けているかぎり)
大半の猫は・・・かすり傷ひとつ負いません

そのうえ カンのいい猫なら
落下中 首の角度を微妙に調節することで
すこし前方に滑空しながら落ちるんだそうです
そういう「技」まで併用できるのなら
さらに着地時の衝撃は緩和されることになるでしょう
(ただし これが実験的に検証された例はないらしいんですが)

対するに ニワトリは
鳥の一種とはいえ完全に飛翔能力を失った鳥でしかありません

空中にほうり出されればバタバタ羽ばたきはしますが
飛行経路をコントロールする能力はありません
すぐに
上下に対する見当識を失ってきりもみ状態に陥ります
(野生化したニワトリだと ちょっと違うそうなんですが)

きりもみになったら怖い・・・ニワトリだって
怖いものだから
頭を両足の間に突っ込んで身体を丸めるという
(落下しているときには 最悪としかいいようのない)
ニワトリ独特の防御姿勢を取ろうとするらしいです

だけど「それ」をやっちまったら
空気抵抗が減って終端速度が上がることになります

猫がムササビならニワトリは さしずめ「爆弾」
あとは「地面に激突⇒破裂しますコース」しかないっすね

かくして
羽根のあるニワトリが墜落死して 猫が無傷という
非常に不思議な結果になるんです

もっとも
野良猫じゃなくて家猫だったりすると
甘やかされていてトロかったり肥満気味だったりしますから
怪我なく着地というわけにはいかないでしょう

猫ムササビ形態の終端速度には(日本の平均的な建築物だと)
5〜6階ぐらいの高さから落ちるだけで到達するようです

旅客機利用の旅行に猫を同伴させて
なにかの事故で上空から猫が落ちて
死なせてしまうことを心配なさっているかた

6階以上あるビルの屋上から猫を投げ捨ててみたときに
無傷で生還するようなら
あとはどれほど高い場所から落としても
猫はなんともありません
猫のことより
あなた自身の終端速度を下げる方法を先に考えてください

なにしろ
猫って高いとこから落とされるのが好きなものですしね

子猫