異変



進むよ進む。


2等列車で知り合った二人組。

スリランカの列車の勝手がわからず、
ホームで右往左往していた僕ら目掛けて飛んできた
ロンゲのスリランカ人の兄ちゃん。

スリランカで男のロンゲは珍しい。
しかも胸にはタウカンのサーフボードのアクセ。

「サーフィンやんの?」

そう聞くと、
ヒッカドゥワという南部のビーチのホテルで働いていたとのこと。
仕事の合間にサーフィンをやっていたそうだ。

「去年の津波、オマエも知ってるだろ?
 あれで俺の友達も何人か死んだんだ。
 今からLTTE支配下の街の難民キャンプへボランティアに行って来る。
 仕事? ボランティアするから辞めちまったよ。」

そういってニヤリと白い歯を見せて笑った。
名はラシクと言った。

隣にいるのはアイルランドの老人。
ボランティアのお偉いさんらしく、ラシクは彼を難民キャンプに連れて行くのだそうだ。

妙に人懐っこい兄ちゃんだった。
列車が出て1時間後、
僕の席の隣に立って話しかけてくる。
拙い僕の英語力では30分話すのが限界。
目を虚空に漂わせてボーっとしていても、
その目をしかっと捉え、またニヤリと笑いかけてくる。

行く先々の駅で何の前触れもなく10分も20分も、あるいは1時間も停車する列車。
分岐点が来る度に分割されゆく列車。
前の車両は右を目指し、後の車両は左を目指す。

その度に灼熱のホームに飛び降り、
一緒に煙草を咥え、ガハハと談笑し、いつしか僕は、彼に親しみを覚えるようになっていた。



我が二等列車。名も知らぬ駅のホームから。


何十個目かの駅を過ぎた頃、
尋常じゃあない揺れが僕らのお尻を突き上げた。

もともと、TDLのビッグサンダーマウンテンくらいの揺れは常に有った。
横揺れ、ホッピング、絶え間ない微振動。

だけれども、今回のそれは、本当に尋常じゃあなかった。


ガツンッ、ガツンッ、ガツンッ、ガツンッ、ガツン・・・・・・・・


断続的な、いやぁーな衝撃が僕らを上下にシェイクし、
そして列車は止まった。



05.10.19


NEXT

旅エッセイの目次へ

HOME