一本の電話

明後日からのスリランカ旅行に備え、
全く終わらない仕事を
さも無理やり終わったかのように思わす作業に邁進していた8月14日の深夜。
人気の無いオフィスの暗がりに実家から一本の電話が入る。

「スリランカの外相暗殺されたって。知ってた?」

適当に相槌を打ちながら
慌てて右手でマウスを探る。
ヤフートップページに踊る外相暗殺、国家非常事態宣言の文字。



スリランカ外相暗殺 非常事態宣言、停戦崩壊の危機 反政府組織の犯行か

スリランカのカディルガマル外相(73)が十二日夜、コロンボ市内で暗殺され、
クマラトゥンガ大統領は十三日、国家非常事態を宣言、
さらなるテロ発生に備えて厳戒態勢を敷いた。
政府内にはタミル人の反政府武装組織、
タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)による犯行との見方が強く、
同国は二〇〇二年二月以来続く停戦崩壊の危機にひんしている。 
 
事件発生後、コロンボ市内には軍部隊が展開し、政府施設などの警備を強化。
コロンボに通じる主要道路でも厳しい検問が実施されている。
クマラトゥンガ大統領が「治安維持と捜査強化」を目的に国家非常事態を宣言したことで、
令状なしの家宅捜索や容疑者の逮捕も可能となった。
 
スリランカの北・東部地域を実効支配し、同地域の分離独立を目指すLTTEと政府との内戦は
一九八三年に本格化。約二十年に及ぶ内戦で六万五千人が死亡したとされる。
九九年にはクマラトゥンガ大統領の暗殺未遂事件も起きている。
〇二年、LTTE提案の停戦を政府が受け入れて無期限停戦がスタートしたが、
政府軍の撤退をめぐり対立、和平交渉は〇三年に中断したままだ。
また今年六月には、インド洋大津波の被害が甚大だったLTTE支配地域の復興に
協力し合うことで合意したが、多数派のシンハラ人勢力の反対で復興作業の方も進んでいない。
欧州のスリランカ停戦監視団体を率いるホークランド氏は、
「停戦後三年半で最も深刻な事態だ。停戦はかつてない危機に直面している」とコメントしている。

(産経新聞) - 8月14日3時40分更新
(注:潮見一部抜粋)



「終わった。。。。」

一気に気持ちが萎んで行くのがわかる。

スリランカ政府とLTTE(タミル開放の虎)との間で
2002年以降続いていた停戦合意。
セイロン島に一時の安息が訪れていたはず、だった。

それがまぁなんと、よりによって僕の出発の2日前に。
LTTE批判の急先鋒たる外相が。
暗殺、されちまうとは。

頭を掻き毟りながらカノジョに電話。

「おぃ、中止や中止。」

「!なんで?」

「外相が暗殺されたんやと。100人のボディーガードいたんにあかんかったらしいわ。
 国家非常事態宣言が発令されとる。内戦に逆戻りの可能性有るわ。」

「それ私昨日から知ってたよ。」

「!! はぁあ? オマエなんでそんなん言わへんねん何考えとんねんほんまアホやろ!! 」

思わずカノジョにキレまくる。

「いや、なんとなく大丈夫だと思ってた。」

そうして終戦記念日の前日の夜は更けていく。



05.09.19


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