地図に無い村で。 その2

最初は日本人だと思った。
ラオスに入国して初めて会った記念すべき日本人。
喜び勇んで声をかけた。
「うぃっす!。」
「・・・Hello。」
少しの途惑いの後、彼らが僕に返した言葉は、まごうことなきイングリッシュのそれだった。

おいおいラオス人かぁ。あちゃあ。ドジったなあオレ。。。

「観光かい?」

僕の横に腰を下ろす彼ら。
我が途惑いをよそに、妙に親しげに話しかけてくる。

名前をサイとモンと言った。

「なんかサイモン&ガーファンクルみたいだなあ。」

そんな僕の想いをよそに、
どこの屋台からか夕飯を買って来てくれて僕にご馳走してくれる。

物静かで冷静、紳士然としているモン。
ワルガキのような顔つきで人懐っこいサイ。
大学生なのだと言う。

胡散臭そうなガンジャ売りや土産物売りのような、
なんとなーくイヤ〜な気配、というか、危険なニオイは彼らから微塵も感じとれず、

どうやら怪しいヒトたちでは無いらしい。たぶん。

そう踏んだ僕は彼らに心を許し、一時の語らいを楽しんだ。

いつしか日も暮れ、

「んじゃ、オレ帰るわあ。ご飯さんきゅーね。」

そんなことを英語で言い、
僕は颯爽と自転車に跨ろうとした。

跨ろうとした自転車のカギがぶっ壊れていた。

おろおろする僕を尻目に、自転車をいじり出す二人。
サイがどこからか持ってきたバカでっかい石ころ。
二人でガンガン自転車のカギをぶったたいてる。

こいつらおもしれえよ。

どんどんひしゃげてゆき、
やがてポトリと落ちた自転車のシリンダーを眺めながら、
僕は思わずガハハと爆笑していた。

数十分後、カギ無し自転車と化した自転車に跨り、
改めてサヨナラを言おうとした僕を彼らが呼びとめる。
2人でなにやらごちょごちょと話した後、
少し躊躇しながらモンが語りかけてきた。

「潮見、明日の晩、僕達の村でパーティーがあるんだ。
 俺たちが君を招待するから、良かったら一緒に来ないか?」

僕も少し躊躇したが、他にすることが思い浮かぶわけでもなし、
実際その招待は渡りに船だった。

「オーケー、じゃあ明日の二時にゲストハウスまで迎えに行くよ。チャオ!」

多分そんな感じのことを言って彼らは去っていった。

ラオスの心地よい夜風を切りながらゲストハウスに帰ると、
とっぷり暮れたゲストハウスの前でpongが待っていた。
自転車を壊しちまったコトを詫び、
その罪滅ぼしというわけでもないけれど、
pongの身の上話に三時間ほど付き合った。
大学に入るために三年間、
ゲストハウスのフロントをやって学費を貯めているのだという。

そんな彼の眼に、卒業旅行などとのたまい、
外国を何週間もフラフラ旅行してる俺はいったいどう映るのだろか。
、などということは特に考えるわけでもなく、
僕はただふんふんと彼の境遇を聞いていた。

pongのチャリを借りて夜食を食べに出かけた。
ラーメン一杯30バーツ(90円)。
田舎のクセに何故か高い。



翌日、晴れ上がった空の下、
若干そわそわしながら彼らの迎えを待っていた。

ここはアジア。
正直、疑いが完全に無いわけでは無かった。
期待、楽しみ50%、不安、疑念50%、
そんな心持でかれらの迎えを待っていた。

二時ちょうど、モンが迎えに来た。
胡散臭そうな眼で彼を見るpong。

「潮見、誰だこいつ? 大丈夫か?」

そんなコトをアイコンタクトでしきりに僕に訴えかけてくる。
まぁ、もし何か有ったらpongが警察にでも通報してくれるだろ。
それで踏ん切りがついた。

「よし、行こうぜモン。」

僕はモンと二人、彼らの村へと向かった。


「村」というのがいったいぜんたいどこにあるのか、
せいぜいビエンチャンのどっかにでもあるんだろと思っていたのだけれど。

乗合タクシー(というかピックアップトラック)に揺られ
砂塵の舞う道をたっぷり1時間と30分。
超怒級のド田舎で僕とモンはトラックから飛び降りた。
そこが彼らの「村」 イライ・ビレッジだった。


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