盛大なる酒宴

それにしてもとにかく、人間と話をしたかった。

よくよく考えてみたら、京都を出て以来数日間、人とマトモに話をしていなかった。

淡路島のキャンプ場は僕一人に家族連れが2組だったし、
高知県の砂浜ではたった一人。
誰も居ないアカウミガメ産卵地にテントを張り、
酒の肴はコンビニ弁当とスーパーのカツオの叩き。
一人ぐびぐびと缶チューハイを煽りながら夜の海を眺めていた。


テントのジッパーを開ければ太平洋

いつしか9月も半ばを過ぎ、
吹く風は日を増す毎に冷たくなっており、
そしてふと気づけば、
ピースサインを交わすべきバイカーの姿を
道路の対向車線に見る機会は本当に少なくなっていた。

僕はただ、人と話をしたかった。
テントの横で焚き火をし、
見知らぬバイカーと飲めない酒を飲み交わしたかった。
「いやー、俺ねー彼女と別れちまったんすよーあははー」
なんて思いっきりクダを巻いてみたかった。


そんなことをぼんやり考えながら僕は、
四万十川をドコドコと登っていった。

河口から水源地まで行ってみるつもりだった。


河口近く。

四万十川はやっぱり美しかった。
我が日本が誇る大いなるど田舎よ。
蓮華草が慎ましく咲く土手をドコドコと登っていく。


そして感じる秋のおとずれ。


沈下橋にバイクを止めて。(お約束)

いつしか近づく夕闇。
川面を美しく彩る秋の陽光がゆっくりと、だが確実に、その身を傾けていく。

僕は土手にバイクを止め、
タバコを口に咥えながらツーリングマップルをじっと睨みつけた。

「人が居そうなキャンプ場、人が居そうなキャンプ場」

うわごとのように繰り返しそう呟きながら、
地図の上を指で辿る。

「三島キャンプ場」

注釈が赤線でピピッと引かれ、「おすすめキャンプ場」との文字が鮮やかに踊っている。



「これだ。これしかねぇ!!」

僕は喜び勇み、かの三島キャンプ場に向かったのだった。



「三島キャンプ場」が有る街には
小さな小さな中学校があった。

下校する田舎ッコな中学生たち。
チャパツ、ゼロ。
ルーズソックス、ゼロ。

なんかほのぼのするねぇ。なんか白線流しみたいじゃん。

そんな、らしーくないことを呟きながら、僕は、
街の商店街でヤキソバと豚肉と玉ねぎともやしと
他のバイカーにおすそ分けすべく缶ビールを4、5本買いこみ、
いそいそと三島キャンプ場に向かったのだった。


目指す三島キャンプ場は四万十川の中州にあるようだった。
橋を渡り、稲穂のさんざめく田んぼを抜けて、
いよいよついたかの地には、
人っ子一人居なく、そして猫が居たのだった。




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