始まりはロー・テンション。

昼過ぎ、彼女を駅までバイクで送っていった。
昨夜の一時的な感情の盛りあがりも、今は冷め、
諦めムードが漂うバイクの上。
国道四号線を無言で飛ばす。

”じゃぁね。”
ただ、それだけの言葉を残して、彼女が改札の向こうに消えていった。
そして僕も、彼女の姿を見送らない。



・・・さて、準備、だ。
その足で、上野のバイク街に向かう。

旅の前にやらなければいけないこと。
・・・ほら、ほら、ぼけーーっとしてないで、ちゃんと思い出そうや。

えっと、フロントタイヤの交換、ブレーキパッドの交換.
・・・なんてこった、ここ数日のごたごたで、オイル交換すらしていない。
あとは・・・・

ドラッグスターをバイク屋に引き渡し、
店先のベンチにへたり込む。
頭を垂れ、ただ黙々と、タバコの煙をふかすことに集中する。


夕方、再び四号線を通り、家へ。
次は、荷造り、ですか。
”もう、何も考えずにベッドの上に倒れこんでしまいたい。”
そんなことをしきりにぼやく体を叱咤し、
押入れからバックパックを引きずり出す。
彼女のヘルメットは、かわりに押入れの奥へ。


深夜4時、バイクをマンションの前に引っ張り出す。
路上灯の下、ただ、黙々とパッキング。
ふと気づき、タンデムステップをそっと上に戻す。


・・・さて、出発、だ。
高校時代からその実現を夢想してきた。
この数ヶ月間、毎夜プランを練りつづけてきた。
日常の合間を縫ってバイト代をコツコツと貯め続けてきた。
そして、ついに今日、日本縦断旅行の旅立ちの時が来たのだ!!。


・・・なんの感慨もない。
・・・なんの盛りあがりもない。
・・・なんの興奮もない。

ちょっと考えた後、少しだけため息を吐いて、
バイクのイグニッションを回す。



さて、出発だ。



01.06.30


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