鈍行日記 2001年 11〜12月


2001年11月13日(火) そりゃ今日は確かに 
キムタクの誕生日だけれども、
と同時に、
俺の誕生日でもあるわけで。

いくらアメリカに飛行機がまた一つ落ちようが、
やっぱり俺の誕生日であるわけで。

ハッピバースデー トゥー ミー。

今日は朝から海に行って、夜明けの朝日と波と共に
俺の誕生日を祝おう。
24歳のこの日を祝おう。


男2人で。

2001年11月17日(土) 誕生日に再確認。
朝4時。
2時間半の睡眠から目覚め、
眠気に縛られた体をゆっくりと解きほぐしながら
ゆるゆるとした動作で荷物をバックパックに詰めていく。

サーフボードを抱え、静かにそっと304号室の扉を開けると、
そこは夜だ。東京の夜。

久方ぶりに夜空なんぞを見上げてみると満天の星空。
東京にしては実に珍しい。

「オリオン座だ。」

星座のカタチなどこれっぽっちも知らないけれど、
これだけは解る。

そこがキャンプ場の夜であろうが、異国の夜であろうが、
そして東京の夜であろうが、
夜空を見上げた僕は、無意識のうちにいつもその星座の姿を探している。
そして確認した僕はいつもそっと呟いている。
「オリオン座だ。」と。
そして何故かいつも、密かな安堵を覚えている。


始発に乗りこみ、御茶ノ水駅でSと合流。
2本のサーフボードを電車の壁に立てかけ、僕らは千代田線で海を目指す。

電車は代々木上原で地上に上がる。

「おい、あれ。」

Sが指差したその先には、夜明け前の新宿。
三角ビル、NSビル、都庁。
もう見飽きるくらい見ているはずなのに、
夜と朝の狭間に揺れぼんやりとその姿を浮かび上がらせている巨大構造物群は
普段の圧倒的なまでの存在感をより際立たせているように見える。

「東京やな」

Sがそう呟く。

「東京やな。」

解っている。
ここは僕とSが生まれ育った片田舎ではない。
それは解っている。
静寂の代わりに喧騒が有り、
田んぼと森の代わりに新宿高層ビル群が有る。

T小学校を卒業した僕らは十数年を経た今、なぜか東京で生きている。

そして例えばこんな景色を見たとき、僕らはその事実をもう一度確認したくなる。
「東京やな。」と呟いて。


電車が千代田線から小田急に変わっても、未だ日は昇らない。

東北沢、下北沢、世田谷代田、梅が丘。
ゆっくりと空が白んでくる。
そして電車が多摩川の鉄橋に差し掛かったとき、
信じられないほど絶妙なタイミングでご来光。
誕生日の朝日が多摩川の川面にその姿をキラキラと反映させ、静かに昇って来る。

座席で眠りこけている乗客たちを尻目に、
食い入るようにその朝日を見つめる僕ら。
美しかった。ただ純粋に、美しかった。


そうやって24歳の第一日目は始まっていった。
そしてこの日、僕はいろいろな事を「再確認」した。

どこにいても、いくつになっても夜空にはオリオン座が浮かんでいるということ。
僕が東京に住んでいるということ。
朝日はとても美しいものなのだということ。

あたりまえのような事をあたりまえのように確認し、
その度に、
密かな安堵を感じたり、
自らの現実を受け入れたり、
静かな感動を覚えたりしながら、
そして生きていく。

まぁたぶん人生なんてそんなものなのだろう。



追記1:つらつらっと書き終えた後、「うーん、こいつはあまりにもクサい。」と感じつつも
     「まぁせっかく書いたもんをアップしないのももったいないし」っつーことで。
     アクセス数が少ない週末のうちに片付けときます。


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