本能寺の変勃発

実に唐突だが、僕の部屋は汚い。
そんなこと前々から気づいていたし、
その事実に対して一片の恥じらいも後ろめたさも感じてはいなかったのだけれども。

そうただ単純に、僕の部屋は汚いのだ。
その事実を改めて目の前に「ほれ」と突きつけられた出来事があったので、
それをばちょっくらと小話に。

数日前、親友Sが我が部屋に来訪したのである。

大前提として、そもそも我が部屋は、
諸般の外的な事情の下、現在他人の入室を一切想定していないのである。
もともと、掃除=体面もしくは体裁
という定義づけしかできない愚かなわたくしめに取って、
他人の入室を想定しない部屋に掃除機をかけることなど
まさしく「想定外」以外の何モノでもないわけであり、
チベットやインドやカンボジアの
汗と埃にまみれたドミを体験したバックパッカーことわたくしが
チマチマと部屋の掃除なんかできるかいぼけー
なんつー、客観的に見てきわめて合理性に乏しいと思われるであろうその理由をタテにわたくしは、
今まで部屋の掃除を事実上完全に放棄していたわけである。
(作者注:いや、ちょっとはやってるいいすぎた。)

、というわけでこの1年間ほど、
私の部屋はなんびとも入れぬジ、アンタッチャブルもしくはリアル、パンドラの箱として、
長くその扉を主人たるわたくし以外にぴったりと閉ざしていたわけであるのだけれど、

無謀にも我が部屋に泊まりたいなんて言ってきた野郎には
鼻で笑ってマンション1Fの集会室と毛布1枚をあてがってきたわけなのだけれど。(実話)

なにしろ今回の相手はSである。

こいつも元バックパッカー+バイカー。
かつて幾度と無く足を踏み入れたヤツの部屋も
相当アンタッチャブっていた、もしくはかなりパンドラぽかった記憶がしっかりとわたくしの脳裏に刻まれているのである。

まぁこいつなら問題あるまい。

確信に似たその想いを根拠に、
「ゆうとくけどかなりちらかってるから。」
その言葉を合図に、今その扉は彼の前に開かれたのである。









「・・・・・・・・・・・・・・・・・・潮見 これヤバいだろ。」







「・・・・・・・・・・・!!!」







裏切られた思いだった。
本能寺の周りにはためく明智の旗印。
織田よ、信長よ、今俺は痛いほどお前の気持ちがわかっちまうぞ。
そんな憤懣やるかたない気持ちでSを追い出した。

「お前なんて集会室で寝てればええねんぼけー」

込み上がるやるせなさを必死で寝かしつけながら、
スーツから寝巻きに着替えた。

あのバカ野郎裏切りやがった。
明智に心を許した信長が悪かったんだ。
秀吉が毛利相手に苦戦してるからといって、
あんな大軍をヤツにつけてやる必要なんて何もなかったんだ。

気持ちの整理のつかないまま
コンタクトをオプティフリーでこすり洗いする。
(作者注:こういうとこは几帳面)

突然閉められたはずの扉がガチャリと開いた。
Sだ。集会室に左遷したハズのSだ。


「おいこらてめー なにしにもどってきやが・・・・」




「てぃろてぃろりーん」




「・・・・・・・・・!!????」




扉のすきまからSの右手だけがにょきっと室内に突き出ている。
右手の先に握り締められている携帯電話。



「てぃろてぃろりーん」




「・・・・いや、せっかくだから
 撮るだけ撮っておこうと思って。」




ズカズカと部屋内に進入する光秀。

あっちに「てぃろてぃろりーん」

こっちに「てぃろてぃろりーん」

はたまたむこうに「てぃろてぃろりーん」


ああ我が住居が蹂躙されてゆく。
パンドラの箱が白日の下にさらされてゆく。

というわけで、今日。
仕事納めの12月29日。
さっき3時間ぶっつづけでやった掃除の甲斐もございまして、
私の部屋はすこぶる綺麗でございます。



徒然エッセイの目次へ

HOME