ほんとのバイカー

お名前 = Tさん(仮名)

メールアドレス = ○○@○○○○.ne.jp

ホームページアドレス = http://

ご感想 =

潮見さん、ちょっと僕の悩みを聞いてください。
僕は今ドラッグスターに乗っています。
4月で乗り始めて2年になります。
でも最近僕は気づいた事があります。
それは僕は本当のライダーじゃないって事です。

なんでそう思うかというと、
僕はバイクに乗るよりも車に乗る方が楽しいし、楽だと思うからです。
ドラッグスターというすばらしいバイクに乗れる事は自慢できる事だと思うのですが、
心の中では、車の方がいいじゃんって思います。
でも、自分が乗るんじゃなくて、見る分には
車乗りよりもライダーの方がかっこいいと思います。

つまり、僕はライダーじゃなく、
ライダーに憧れてるだけなんです。
ライダーをかっこいいとは思うけど、
自分が乗るとなると話は別なんです。
じゃあなんでバイクに乗ってるかというと、友達の影響です。
あとDSの前は原チャのマグナに乗っていたから、
その延長でDSにステップアップしただけなのです。

潮見さんの旅行の話は読んでいます。
おもしろいです♪そして羨ましいとも思います。
僕は1人旅はなんか心細くて出来ないし、
キャンプもしたいとは思いません。
潮見さんみたいにバイクにまたがって自由にやってる人をかっこいいと思ってるだけで、
自分がしようとは思わないのです。
サーファーに例えると『丘サーファー』みたいな、
こんな『なんちゃってライダー(笑)』な僕は
ライダーを辞めるべきなんでしょうか?
今は学生でお金が無いので、車を買うとしてもまだ先になりますが…。
何か意見を聞かせてください。よろしくお願いします☆
長々と失礼しました!
submit = 送信



思わず、うぅむ。と唸った。

なんだか妙に他人事とは思えないというか、共感できるというか、
どうしてもこの質問に対しては誠実、かつ真摯に答えなければならない
(それはTさんに対しても僕自身に対しても)というか、
そんな感情がこんがらがっちまって、
僕はモニターの前でしばらくうむうむ唸りながら動けずにいたのだ。

そう。妙に共感できるのである。

本当のバイカーってなんだろか。
そして、オレってば本当のバイカーなんだろか。

そんなことを、妙に真剣に、滑稽なまでに思いふけった経験、それは僕にも確かに有るのだ。


確かにある一時期、僕はバイクに夢中だった。
僕はバイクにハマり、
昼夜問わずのバイトに励み、毎夜月刊オートバイのカタログを眺め、
そしてドラスタを購入した。
毎週バイク屋に通い、
友達とああだこうだ言いながらバイクを分解し、
プラグとミラーとタンクとマフラーを僕好みのものに替えた。
友達との、あるいは1人での度重なるツーリング。
そしてその集大成とも言うべき日本縦断ツーリング。
1ヶ月で6000km近い距離を踏破した。

確かに、その一時期、僕はバイクに夢中だった。
確かに、「バイク」というその「趣味」にハマっていた。

だがしかし、その一方で、
バイクを買い、
ドラスタの改造を一通り終え、
日本縦断ツーリングを終え、
その度毎に僕は確かに感じていた。

自分のバイクへの興味が少しずつ減退していく、その事実を。

そして2004年1月の今現在、僕はバイクに乗っていない。
2年前にドラスタが廃車になったあの日から。
もう月刊オートバイやミスターバイクや月刊ハーレーダビッドソンを書店でチェックする事も無くなった。
街をゆくバイクを右から左へ追うことも無い。
バンソンの革ジャンはシーズンに2、3度着るか着ないか。

そう。今の僕はただのバイクに乗っていない人。だ。
本当、偽者を語る以前の問題。

そしてこんなことを思う。
あれだけ好きだったバイクをあっさり廃車にしちまい、
そして次のバイクを買う事を考えすらしない。
それでは過去のバイクに対する我が身を焦がす想いとは
いったいなんだったんだ@尾崎豊 と。
あの想いは幻想であり偽りだったのか。と。
実は過去の自分ですら、本当のバイカー足り得なかったのではないか。と。


そしてそれは決して「バイク」という趣味に留まる問題ではない。

このしがないHPを見ている皆さんはうすうすお気づきの通り、僕は多趣味だ。
、というか、「熱しやすく冷めやすい」、の典型的なパターンとでも言うべきか。(苦笑)


バックパッカー。
ハマった。
アメリカ、メキシコ、タイ、カンボジア、ラオス、台湾、中国、チベット、ネパール、インド。
述べ4回に渡る長期旅行。

今。リーマンになった僕は、バックパックを担ぐこともない。
たまに行く海外はHISサイパン4日間のビーチの旅。
例え、サラリーマン、というその身分が
バックパックを担ぎにくくしているという明確なその事実があるにせよ、
一方でさちさんは、たそは、cokerさんは、
あいかわらず行っているではないか。と。

サーフィン。
ハマった。
毎週往復5時間かけて電車で湘南まで通ってた。
11月になってもスプリングで海に浸かってた。
海に行けない日はジムのプールをひたすらクロールで往復してた。

今。海からさらに遠く離れた地に住むようになった僕は、
サーフケースを担いで電車に乗る事も無い。
クルマさえ無い、リーマンになって極端に休みが減ったというその事実があるにせよ、
根性さえ、熱意さえあの頃のままならば、
5時間30分電車に揺られて湘南に行く事も可能ではないか。と。

クラブ。
ハマっている。
毎週のフライデーナイトフィーバー。
ただ黙々と踊り続け、そしてたまにナンパもする。
BOSEのコンポでハウスやR&Bやトランスをガンガン流す日々。

未来。三十路に到達した僕は、
クラブ通いを止めちまうだろう。
腹が膨れ、皺が増え、筋肉が老化するというその事実があるにせよ、
駆り立てる衝動さえあれば、子供を実家に預けてクラブに行く事も可能ではないか。と。


何かの趣味にハマり、そしてその情熱が薄れていくにつけ、
僕は密かに心の中で想っている。
あの頃の情熱は所詮儚き「かりそめ」だったのか。と。
結局僕は、本当のバイカーでもバックパッカーでもサーファーでもクラバーでもなかったのか。と。

んで、
ここ数日ラーメン屋や漫画喫茶やクラブでぼーーっと考えながら導き出した(ある種の)結論。

結局、それは恋愛と同じなんじゃあないか。と。

有る日突然恋に落ちる。
昼夜問わず彼女のことを想い、
なんとかあのコを手中に収めたいと願う。
奮闘し、足掻き続ける。

そして、「それ」を手に入れた瞬間、
まずそこで少し気持ちがフッと冷める。少しだけ。
(これはオトコだけかな。)

彼女との楽しい日々。
めくるめく日々。
だがそれも少しずつ色褪せていく。
デートの行き場所に困るようになる。
3回目のクリスマスには贈るプレゼントのネタが無い。
何百回めかのセックスはもはや新鮮味に欠ける。

街をゆくオンナのコを右から左に追うようになる。
デート代はいつしか割り勘。
毎日の電話が億劫になる。

それに追い討ちをかける自らの環境の変化。
例えばそれはリーマンになること。
大学生でヒマが有り余っている彼女と時間の感覚が合わない。
忙しくて彼女のことを思い遣るヒマもない。
遠距離になり、彼女と会う機会が減る。

それらの必然的な結果としてもたらされる別離。

そして思うのだ。
あれだけ激しく彼女を想っていた自分。
あの頃の情熱は所詮儚き「かりそめ」だったのか。と。
結局僕は本当に彼女を愛していなかったのではないか。と。


たぶん、そーゆーことだ。

彼女ができ、そして別れ、
「対象」は次から次へと変わっていく。

趣味ができ、そして情熱を失い、
これまた「対象」は次から次へと変わっていく。

そこに注目すべき差異は無い。

あの頃の彼女を愛する気持ちはかりそめだったのか。
結局彼女を本当に愛していなかったのか。

あの頃のバイクに対する気持ちはかりそめだったのか。
結局本当のバイカーではなかったのか。

彼女と別れた今、バイクに乗ることを止めた今、
確かにその想いはかりそめだったのかもしれない。

だがしかし、
あの頃は確かに本当に彼女を愛していた。
あの頃は確かに本当にバイクが好きだった。
その事実が残るだけだ。

もう少し突っ込んで書くならば、
本当のバイカーたり続けられる人というのは、
多分、バイクと「結婚」しちまった人の事を言うのだろう。

バイクを何年も乗りつづけ、いつしか自分の人生の一部になって切り離せなくなった人。
バイクを自分の生業とするようになり、バイクに乗ることを半ば強制的に義務付けられちまった人。

例え他のコに目が行ったとしても、
一時的にバイクへの想いが冷めちまったとしても、
「結婚」したがゆえにバイクに乗りつづけられる。あるいは乗りつづけなければならない。

そういう人だけが、本当のバイカーで有り続けられるのではないだろうか。


最後にもう一度Tさんのお話に戻ろう。

Tさんも本当にバイクが好きだったときが一時期は有ったのではないかと思う。
周りの友人たちが噂し憧れる彼女に一目ぼれ。
ただ、彼女を手に入れた瞬間、その感情は減退し、
今や彼女への興味が薄れちまってる。
デートもいいかげん飽きちまった。
もはや一緒に旅行に行くほどの仲でもない。

そうした彼女に対する感情、それを踏まえて、
次のオンナ(=車)にさっさと乗り換えた方が良いのか、
あるいは彼女への愛情が再び盛り返す日を待つのか、
それはTさんが決めたら良いのだとおもうわけであって、
多分それはTさんの
趣味に対する、恋愛に対する、あるいは人生に対するスタンスの問題ではないかなと思うのでありました。


深夜鈍行的即席人生相談
これにて終了。



P.S.1
Tさん(仮名)に送っていただいたメールが、
非常に興味、および執筆意欲をそそられるものだったので
Tさんのご了解を得て、今回のこのようなエッセイのカタチを取らせていただきました。
Tさんありがとうございます!

P.S.2
でもまあ、今回の文章は書くの難しかったです。いろんな意味で。
「エッセイにさせてくだしゃーい☆」なんて気軽に言うんじゃなかったな・・・
なんて思いつつ、頭をかきむしりながら書いてました(笑)
んで、せっかくなんで、
その潮見の頭のかきむしりっぷり、試行錯誤っぷりを別ページに残してみました。
なんせボツ文章なんでまとまりもクソもあったもんじゃありませんが、万が一興味がある方がいればどうぞ。

P.S.3
Tさんの質問に対する、あるいはこの文章に対する、
バイクを趣味とする、バックパッカーを趣味とする、はたまた革ジャンを趣味とするエトセトラエトセトラの
皆サマの意見を是非是非聞いてみたいところでもありますので
宜しければメール送るなりBBSに書きこむなりしてやってくれると嬉しいです。


ほんとのバイカー 後日譚へ
(↑読者サマから頂いたメールのご紹介 04.02.01)



徒然エッセイの目次へ

HOME