ほんとのバイカー (ボツ文章バージョン)


<ボツ文章 その1>

思わずうぅむっと唸った。僕は。パソコンの前で。

ほんとのバイカーって、いったいなんだろか。

このメイルが僕のアウトルック・エクスプレスの受信箱にコトンと落ちて以来、
アタマの片隅でずっと考えてた。

なにかとてつもなく本質を突いている質問のような気がして、
又、どうしてもこれは答えなければいけない質問のような気がして、
アタマの片隅でずっと考えてた。

ほんとのバイカーってのは、いったいなんだろか。



恋愛に例えてみればわかり易いのかもしれない。
なんて、ふと今思った。

唐突だが彼女の名はバイ子。(今決定。)

ある日突然恋に落ちる。

きっかけは
ストリートで突然前をよぎっていった彼女の姿だったのかもしれないし、
彼女のコトを口々に噂し憧れる友人たちの影響だったなのかもしれない。
雑誌に載っている彼女の風貌に惚れちまったのかもしれないし、
あるいは数多のエッセイに書かれる彼女との魅惑の生活に憧れたのかもしれない。

とにかくそんなきっかけで、彼女と恋に落ちる。

彼女をオトすのはそんなに難しいコトではない。
結局、金、である。
彼女は金さえ積めばどうとでもなるオンナなのだった。

そして僕らは来る日も続くバイトや社内預金や分割30回払いやあっとその時@ローンに頼り、
そしてバイ子を己の物とする。

そして我々が夢にまで描いたバイ子との「魅惑の日々」が始まる。


僕とバイ子の「魅惑の日々」を語ろう。


そもそもバイ子になど、何の興味も無かった。
好きだとか、嫌いだとか、
そんな感情以前に、バイ子と付き合う自分の姿など、全く想像もできなかったのだ。

思えばきっかけは
原チャ恵(今決定。)だったのだろう。
京都の街で暮らすのにちょうど手ごろなアッシーちゃんとして
キープしていた彼女がとても優秀なアッシーちゃんだったのである。

だけど、原チャ恵は病気がち。
ちょっとした1泊旅行ですら一緒に行くコトはできなかった。
そして、どうにもまずいコトに、原チャ恵はその容貌からして、
とても友達に自慢できるような彼女ではなかったのである。

そんなときにO誌のグラビアを颯爽と飾っていたのがバイ子だった。
そんな彼女に僕は文字通りの一目ぼれ。
金にモノを言わせて、彼女を自分のものにしたのである。大学3年の春だった。

僕とバイ子の同棲生活が始まった。

彼女は僕の自慢だった。
彼女を連れて歩くのが嬉しかった。
街中から突き刺さる視線。

僕は彼女に相当貢いだ。
どんどんケバくなっていく彼女。
彼女の喘ぎ声に街をゆく人々は目をひそめて振りかえる。

そう。彼女は僕の自慢だった。

彼女との蜜月は数年続いた。
いろいろなところに旅行に行った。
日帰り旅行もあればお泊り旅行もあった。
グループ交際というやつも何度かした。

もちろん何度もケンカもしたし
その度に彼女は僕につけられたキズを癒しに実家(バイク屋)に戻っていったけれど、
数日もすれば、また僕のもとにおさまっている彼女がいるのだった。


そんな彼女との最大の思いでといえば、それはやはり
日本縦断旅行になるのだろう。
27日間という長きに渡り、苦楽を共にし、そして北海道から九州までを
踏破した2人の絆はさらに強くなる、はずだった。


絆はほぐれていった。
日本縦断をしてからすぐのことだった。

僕は彼女にかつてほどの情熱を注ぎ込めなくなっている自分に気づいたのだ。

僕と彼女にとって、日本縦断旅行は「結婚」と同じ意味を持つものだったのかもしれなかった。
少なくとも僕にとってはある種の明確な「到達点」であり、
到達点をすぎちまった今、
僕は彼女に以前ほどの興味を持てなくなってしまったのだった。

以前からバレないようにやっていた浮気の虫が騒ぎ出した。
あの頃、僕はサーフ子とバックパッカー子に相当入れこんでいた。
家に帰ると彼女が悲しそうに出迎える、そんな日々が続いた。

あれだけたくさん行った旅行にすら、僕らはほとんど出かけなくなっていた。

ある日、彼女の調子が悪い。
目覚めが異様にわるいのだ。
どれだけたたき起こそうとしても「ケホン、ケホン」と
クルしそうな声を出してしかし起きあがらない彼女。

気づいたときは手遅れだった。
彼女は重い病にかかっていた。
享年4歳と3ヶ月。
それはあまりにも早い、彼女の死だった。

彼女の異常に気づけなかったこと。
それは明らかに僕のミスだった。
彼女への愛情が明らかに薄れていた僕の、明らかな落ち度だった。

自己車検時のシャフトオイルの入れ忘れ。
それに伴うエンジンの急速な劣化、
定期的な整備をしないことによる異常の発見の遅れ。
結果としてのエンジンの焼き付き。

自らの犯した痛恨のミスを静かに恥じながら
僕は今の自分がもはやバイカーではなくなっちまったことを強く、深く認識した。



、というまあ涙ちょちょ切れるめっちゃカッコ悪い話になってしまいましたが
如何だったでしょうか。

僕がバイ子を愛せなくなっちまった理由。

それは
日本縦断という昔からの夢、一つの到達点に達しちまったこと、(=結婚)
そして
浮気の虫がうずいちまったこと。(=浮気)
あるいは
もともと、彼女の中身ではなく、その容姿に惹かれて彼女を愛したこと(=見た目で選んだ)
なんかも理由になるのかもしれない。

ほんとのバイカー。
そんな定義があるのだとすれば
ある種の到達点(結婚)に達しても彼女への感情が衰えることはなく、
他の趣味に目が行く(浮気)こともなく、
バイクを愛し続ける事ができる人の事を言うのかもしれない。

翻って自分を見れば、
自分は確かにある時期、バイクを愛していた。
ただ、その愛情が一次的だったという意味において、
ほんとのバイカー足り得なかったのではないかなあなんて思うわけで。

バイクに関わらず、いわゆる趣味に対する各人の態度というのは
恋愛に対する各人の態度と密接な関連があるのかもしれないなあなんて思うのだった。


さて、あなたはほんとのバイカーですか?






<ボツ文章 その2>


さて、まずは自分のコトを鑑みよう。

少なくとも今の僕はバイカーではない。

理由:2年前にドラスタが廃車になって以来、僕はバイクを持ってないから。

そもそも今の僕は
バイカーでもなけりゃ
社会人になって以来マルイや三越でしか服を買っておらず革ジャンマニアでもない、
あるいは去年唯一行った海外旅行といやあHISグアム4日間ビーチの旅でバックパッカーでもなけりゃ、
去年の夏は3回しか海に行かずでサーファーでもないのだけれど、
そこらへんのところをイマイチご理解なされておらない方が非常に多い、
、というか、ほとんどの方がその辺の事情を
未だ理解されていないような気がするのだけれども気のせいですか?
、というのは本筋とは違うわな。

閑話休題。

、というわけで今度は昔の自分を鑑みる。

さて、目を閉じて考えようじゃないか。
ドラッグスター400に乗っていた自分。
マフラーをバイトの連れと一喜一憂しながら交換していた自分。
文字通り革ジャン命だった自分。



徒然エッセイの目次へ

HOME