夏の瞬間

木曜の夜の会社がえり。
ようやく東京に訪れた熱波が
新宿のアスファルトの上をひたひたと流れている。

僕の前を歩くギャルが2人。
僕の前から歩いてくるおっさんが1人。

タンクトップの彼女達をみて
その口元が動く。

「ナツダネエ。」

決して声に出さないまでも、確かに彼はそう呟き、
僕の視線に気がついて慌てて口をつぐみ知らぬ素振り。


そう。夏だ。


凡そ生きとし生ける全てのオスにとって、
TVの天気予報の30℃の文字では、
ミンミン蝉の気だるい声では、
懲りずにCDショップに並ぶTUBEの新曲では、
きっと足りない。

タンクトップが、ビキニが、キャミが、ワンショルダーが、チューブトップが、
僕らに夏を運んでくる。
僕らに夏を知覚させ認識させる。

地球の地軸の微妙なズレと
我が太陽系の恒星から降り注ぐ光の加減によってもたらされたその季節は、
オゾン層をつきぬけ、彼女達のカラダを借りて僕らに夏を知らしめる。



こうして木曜の夜。
8月7日午後7時26分。
新宿の路上で僕は、
ある1人のおっさんに平成15年の夏が訪れた瞬間を図らずも確かに目撃したのだった。



徒然エッセイの目次へ

HOME