右手がイタイ。

近年の携帯電話における、
その機能の強化、更新、はたまた改良は、まさに瞠目すべきものが有る。

しかし、その機能の向上こそが、又一方で、
携帯メールを媒介とした対人コミュニケーション上において、
一通の受信メールの中に内包されている
相手の感情を微妙に変化させているという、その事実を、
果たして何人の読者諸兄がお気づきなのであろうか。


そう。たとえば一通のメールがあなたに届いたとしよう。
そのメールの文章に込められた相手の感情が、
明らかに違うのである。
昔と、そして今とでは。



たとえば、「ごめんなさい」である。

まずは次のメールを見て頂きたい。




受信 [1/200]
送信者:一条 ゆかり
4/17 23:56
[今日は     ]

ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)




これ↑である。

ようやくのことで漕ぎつけた2回目のデート。
(1回目のデートで喜ぶにはまだ早すぎる。
 2回目のデートが出来るかどうかこそが真の勝負の分かれ道なのである。 潮見 2003)


決戦の朝。
比較的新し目の(ゴムが伸びてないヤツ)トランクスを選んで
爪切りで右手を丹念に切っている時に入った1通のメール。




受信 [1/200]
送信者:一条 ゆかり
4/17 10:35
[突然で悪いんだけど。。  ]

なんかね、
今日起きたらすっごく頭痛いの(>_<)
熱あるのかなぁ(T_T) ちょっと行けそうにないかもしれない。。




じっさい、95%ウソである。

深爪しそうなくらいに切ってある、
携帯を持つ右手がワナワナと震える。

いや、確かに震えるが、
このメールに対して




送信 [1/100]
宛先:一条 ゆかり
4/17 10:42
[Re:突然で悪いんだけど。。  ]

えーからバファリン飲んでさっさと来いや




なんて言える猛者もそうそうおるまい。

たいていはこんな感じ↓なもんである。




送信 [1/100]
宛先:一条 ゆかり
4/17 10:42
[Re:突然で悪いんだけど。。  ]

そうなんだー(>_<)
大丈夫? 大変だね。
無理しないで今日は休んどきなよ。
また今度遊ぼうな。(^o^)/




ああ情けない。
ほんとに情けない。

ムカつきたいけど、
ムカつくわけにもいかず、
とりあえずオトナのオトコ、
包容力の有る人間ぶってみたぞ
的なところがあまりにも見え見えなのである。

特に (^o^)/ が。
ムリに笑っている顔文字君の、
特に(^o^)/ ←この健気に挙げている右手が。


オトコとは実に忍びない生き物なのである。


だが、ここで一つ忠告しておこう。

バファリン飲んで・・・とまでは行かずとも、


今日俺すげー楽しみにしてたのにー。 ←NG。

じゃあ次いつ遊べんの? 木曜日とかは?  ←NG。

つーか俺、今日どうしたらええの?  ←超NG。


、なのである。

未練タラタラもダメ。
がっつきすぎもダメ。
相手を責めるのもダメ。


結局、オトコは、(^o^)/ 右手を挙げるしかないのである。
例えその右手がわなわなと怒りに震えていようとも。

ああオトコってヤツは。




多少脱線してしまった。

んで、本題に戻って、このメール↓である。




受信 [1/200]
送信者:一条 ゆかり
4/17 23:56
[今日は       ]

ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)
ごめんなさい(T_T)




ドタキャンされた夜に届いた1通のメール。
上記メールを一瞥して、賢明な読者諸兄ははたしてどのように思われるだろうか。

ああ、ほんまに謝っているんだな。

なーんて思われる読者諸兄は、
有体に言って、
まだまだケツが青いな、と申し上げねばなるまい。


確かにその解釈は正しい。
いや、正しかった、のだ。

数年前ならその解釈は確かに正しかった。

しかし、たった数年のうちに、
時代のめまぐるしい変貌と併せ、
携帯電話のメール機能を使用したコミュニケーションも又、
大幅な変化を遂げているのである。



検証してみよう。

なぜ、(ケツの青い)読者諸兄は、
ああ、ほんまに謝ってるんだな。
と思われたのだろうか。

それは、多分、彼女が送ってきたメールの文字数にあるのではなかろうか。


ご  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:6回

ごめ  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:10回

ごめん  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:13回

ごめんな  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:14回

ごめんなさ  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:15回

ごめんなさい  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:17回

ごめんなさい(T_T)  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:19回


そう。たったこれだけの文を打つのに必要なボタン操作回数は実に19回。
そして ごめんなさい(T_T)×7 で、153回。

153回である。

これだけのボタンを押す労力をかけて文を作成した一条ゆかり。

ほんとに謝っている一条ゆかり。


そしてこの単純かつ単調な思考ルーチンこそが、
潮見に読者を「ケツの青い」と呼ばせてしまう所以なのである。


青い。実に青すぎるのである。


彼女が所持する携帯はN504isなのである。

履歴機能+T9搭載携帯なのである。



検証してみよう。


ご  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:2回

ごめ  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:3回

ごめん  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:4回

ごめんな  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:5回

ごめんなさ  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:6回

ごめんなさい  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:7回

ごめんなさい(T_T)  ←ここまで打つのに必要なボタン操作回数:9回


ここまで打つのに9回。
履歴機能をフル活用し、ごめんなさい(T_T)×7で、15回。

15回。
実に15回である。

ボタンを15回押すことなんて、
たぶんみかんの皮を剥ききるよりも早いだろう。



そして、みかんの皮を剥ききるよりも簡便なメールを送ってきた
一条ゆかりに対し、
潮見は今、怒りでわなわなと震えたその右手でメールを送るのである。




送信 [1/100]
宛先:一条 ゆかり
4/17 23:56
[Re:今日は     ]

いーよいーよ。
気にしないで(^o^)/
少しは風邪良くなった?
あったかくなったし、ちょっと油断しちゃったんかな?
明日からまた仕事やし、あんまり無理しない方が良いよ。
それじゃあまた遊ぼうね(^o^)/




ムリに挙げた右手 (^o^)/ がイタイ。
深爪しすぎた右手 (^o^)/ がイタイ。




ああオトコってヤツは。






追記:T9のコト知らない人には何がなんだか全くわからないテキストでどーもすみませんす。


追記:僕の友達には一条ゆかりは居りませんのでご了承の程。
    でもゆかりって名前、なんかええよね。


追記:NECさん広告で使ってくれてもいいよこのテキスト


徒然エッセイの目次へ

HOME