あのコがいない。

画面を見つめたまま、
ふと、傍らに、その右手を伸ばす。

確かに、そこに居るはずの、愛しいあのコを求めて。
その小さな体を、知覚しようとする、僕の右手。


・・・居ない。確かにさっきまでは、ここに居たはずなのに。
ようやく、画面から目を離す僕。

訝しげに、辺りを見まわす。
ちっぽけなマンションは、なにも変わっていない。
ただ一つ、あのコが消えた、という事実を除いては。

小さな舌打ちをしながら立ち上がる。
やれやれ。またかくれんぼの始まりだ。
全く、毎回毎回、ふざけるのにも程がある。

が、所詮、ちっぽけなマンションだ。
あのコが隠れる所なんて、たかが知れている。
しかも、その隠れ場所がパターン化してきていると言うその事実を、
あのコは気づいてもいない。

ゆっくりともう一度、辺りを見まわす。
おもむろにふとんをひっぺがえす。
テーブルの下を覗いてみる。
念のためユニットバスのドアも開けてみる。

居ない。どこにも、居ない。
だんだん焦り出す、僕。
舌打ちの回数が増える。
僕の体の、ある一部分が、さらに強くあのコを求め始める。

・・・欲しい。
いますぐあのコのカラダが、欲しい。
いや、あのコがいないのであれば、
いっそ、ちょっと深夜の街に繰り出して、
別のコで我慢してもかまわない。
ただとにかく、一刻も早く処理したいのだ。
この、体の奥底から湧き上がって来るわが身の欲求を。

たかなる欲望を抑えきれず、
財布をポケットに突っ込み、
家を飛び出そうとした僕の視界に、
唐突にあのコの姿が飛び込んでくる。


・・・玄関。
そんなとこに隠れていたのか。

抑えようとしてもこぼれおちてくる笑みを
隠しきれないまま、
あのコにその右手を差し伸べる、僕。

財布を入れていないほうの、
もう片一方のポケットをまさぐる。

取り出したジッポで
あのコの体に火をつける。
満たされていく、欲望。



ケント・スーパーライト。
やっぱりお前は、最高だ。


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