丸め込まれたのは誰? (怒涛の就活編 第3話)

午前7時。規則正しく起床。
目覚ましテレビを見てから眠りについていた生活に、かすかな未練を残しつつ。

壁に掛かっている、まっ白なワイシャツ。
紺のスーツ。
黒の靴下。
黒の靴。
黒の鞄。
黒の髪。
白、紺、黒、黒、黒、黒。
就職活動というシステムに、組み込まれていく自分。

うちひしがれているドラッグスターを横目で見ながら、
駅への道を歩く。

赤坂、大手町、霞ヶ関。
筆記試験、面接、グループディスカッション。
確実に決定されていく、自分の進路。

僕の人生が、決まっていく。

夕方の満員電車。
汗にまみれた体の奥底で回り出すのは、
ベタベタながらも、B’zのPLEASURE。

一晩中ギターと女の話で盛り上がっていたアイツも
そつなく大手に就職決まり、ためらいがちの出世街道。

重いマーシャル運んでた腰の痛み
まだおぼえてんの?

いつのまにかこの街に、丸め込まれたのは僕?
居心地良いと笑ってる、そんな余裕は要らないのかな?

高校生の頃、意味もたいして考えず、
カラオケで絶唱していた曲。

俺は普通のサラリーマンじゃあ終わんねーよ。
ビッグな男になったんねん。
夢をつかんだんねん。
ジーパン着て仕事してえなぁ。
やっぱ、会社つくるっしょ。
おやじになってもハーレー乗ってさぁ。

つい数ヶ月前まで、
仲間うちで繰り返されていた、無責任な、そして威勢の良い言葉たち。


ねぇ、稲葉さん、ひょっとして、俺は丸め込まれているんでしょーか?

ピーターパン・シンドロームに冒された、
大人になりたくないでちゅ〜。
なんて口走ってる若造のたわごとでした。


怒涛の就活編 第4話へ


徒然エッセイの目次へ

HOME