理工系学部の偏差値と立地条件のナゾ

K. Shida
2002 年 9 月 19 日

1. はじめに

代々木ゼミナール が公表している「2002年度入試追跡調査結果」は面白い. いわゆる「大学の偏差値」はここで決っているのである. この記事では「私立大学学部別入試難易ランキング」について 多少分析しよう. 次の表の赤い線は,理・工系のランキング表に挙げられている 153 学部 についての偏差値の度数分布表である. ただし,偏差値 40 以下とされている学部はすべて 40 として扱った. これらの大学はほぼ全入とみてよいだろう.

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2. 偏差値の低い大学ほど多い

驚いたことに,赤い線で表される偏差値の分布は, 正規分布とは似ても似つかない. 偏差値が低い大学ほど多いという,右肩上がりのグラフになっている. もっとも度数が多いのは偏差値 42 の大学であり 15 校ある. 平均は 47.7 である. 偏差値が 50 以上の大学は 51 学部だが,49 以下の大学はそのちょうど 二倍の 102 学部ある. 理工系学部の大部分はうまくいっていない.

3. 都市部の大学は有利である

青い線は,そのなかで,東京都23区,神奈川県横浜市, 神奈川県川崎市,京都府にある 28 学部の分布を示したものである. この地域をこの記事では「都市部」と呼ぶ. 行政区分による分け方が適当かどうかは後で論じる. その偏差値の平均は 54.4 である. 一方,水色の線はその他の 123 学部の分布を示し, 平均は 46.1 である. その差は 8.3 もあり,立地条件が偏差値に及ぼす影響の 大きさが分かる. 都市部にあって偏差値が 50 未満なのは表1に示す 4 学部しかない. 立地条件が良ければ,よっぽど下手を打たない限り 成功することが分かる.

表1:都市部にある偏差値 50 未満の大学
偏差値大学場所
42関東学院大学工学部横浜市金沢区
42国士舘大学工学部東京都世田谷区
43桐蔭学園横浜大学工学部横浜市青葉区
49神奈川大学工学部横浜市神奈川区

一方,都市部以外に分類される上位の大学を表2に示す. このうち都市中心部から鉄道で直通していないのは 東京理科大学だけであり,それ以外は実質は都市部に近い といえるだろう.

表2:都市部以外に分類される上位の大学
偏差値大学場所
61国際基督教大学教養学部(理系)東京都三鷹市
59同志社大学理工学部滋賀県草津市
58東京薬科大学生命科学部東京都八王子市
58東京理科大学理工学部千葉県野田市
58関西学院大学理工学部兵庫県三田市

便宜的に行政区分による分け方をしたわけだが, このことから,本当は都市中心部からのアクセスを, 距離,時間,乗り換えなどの要素を考慮して分けた方が いいだろうということが分かる.

4. 実力の差?

もちろん,立地条件に差がなくても偏差値が違う場合もある. たとえば,明星大学工学部(偏差値 40 以下)は東京都日野市にあるが, これは同じJR中央線沿線の国際基督教大学(61)と 東京薬科大学(58)に挟まれている.

5. 都市部の大学の偏差値はゲタばきか?

そういうわけで,都市の人口と大学に達成可能な偏差値は強い相関がある (表3). 都市部にある大学は,並のオペレーションでも 50 以上の偏差値を 保てるが,地方の大学は努力してもあまりむくわれない. いい例は金沢工業大学(偏差値 43)である.

表3:地域ごとのトップ学部
地域偏差値大学場所
首都圏65慶應義塾大学理工学部横浜市港北区
関西圏61同志社大学工学部京都府京田辺市
中部圏55南山大学数理情報学部名古屋市
九州51福岡大学理学部福岡市城南区

そこで,地域ごとに比べるという発想が出てくる. 武蔵工業大学(偏差値 51)は全国区では 153 学部中 40 位前後で, まあいい線をいっている. これを東京23区内にある 19学部 だけについて比較すると表4になる.

表4:東京23区内にある理工系大学
偏差値大学場所
63早稲田大学教育学部(理系)新宿区
63早稲田大学理工学部新宿区
61上智大学理工学部千代田区
60東京理科大学工学部新宿区
59東京理科大学理学部新宿区
59立教大学理学部豊島区
57北里大学理学部港区
56青山学院理工学部世田谷区
55学習院大学理学部豊島区
55法政大学情報数学学部文京区
54芝浦工業大学工学部港区
54東京女子大学文理学部杉並区
54日本女子大学理学部文京区
51武蔵工業大学工学部 世田谷区
51日本大学理工学部千代田区
50東京電機大学工学部千代田区
49日本大学文理学部世田谷区
48工学院大学工学部新宿区
42国士舘大学工学部世田谷区

これを見れば,武蔵工業大学は立地条件を生かし切っていないことは 明らかである.
謝辞: 大学にとっての立地条件の大切さを示唆して下さった 相磯秀夫東京工科大学長に感謝いたします.