テレビ受像器のだいたい

このごろテレビ受像器が良く分からない。 私、志田が疑問に答えます。 ただし専門家でないので、嘘が交じっているかも知れません。

1996年3月26日補訂
1996年3月15日作成


最近の製品動向

4:3テレビは廉価版に絞られた

4:3テレビで3次元YC分離など性能を追求したものは壊滅しました。 大型でもガラスクシ型フィルタで、ビデオ端子数なども絞られています。 また海外への生産移行でブラウン管のグレードダウンもあります。 例えば29インチでは SONY はスーパートリニトロン管モデルがなくなり、 東芝のもラベンダーマスクから画面の曲率の小さい(歪みが大きい) ブラウン管へのモデルチェンジが行なわれました。 その代り価格はびっくりするほど安く、 29インチでも、6~8万円で買えます。 ワイド放送の比率を考えるとパーソナル用としては 買い得かも知れません。

テレビデオ(ビデオ内蔵テレビ)の台頭

4:3、ワイドテレビともVHS HiFiビデオを内蔵したモデルに 人気があるようです。 接続の手間が要りませんし、録画も簡単です。 ただし、心配はテレビとビデオのライフサイクルが違うことです。 テレビは滅多に故障しないで10年くらいは映りますが、 ビデオは故障も多いし、定期的な整備を必要とします。 ビデオの調子が悪くなったら、 テレビごと修理に出すのは運ぶのも重いし、 その間テレビが見られなくなってしまいます。 それを避けたければ、出張修理を頼むか、 丸ごと買い替えるか、ビデオだけもう一台買うか、 どれも無駄ですね。 どうも、ビデオは別の方がいいような気がしますけど、 どうでしょう。

手抜きがないワイドテレビは28型以上

画面が小さいならそんなに細かく映らなくてもいいとばかり、 小型で手抜きをするのがテレビの悪しき伝統である。 ワイドテレビでは28と32型は同じ回路を使っているが、 24型以下は簡略化されている。 コンピュータのディスプレイは15インチクラスでも テレビ以上の解像度を持っている。 テレビとコンピュータの融合がいわれる今日、 テレビも考え方を変えて、PCディスプレイも兼用できる 20型以下の高性能テレビというのをつくったらどうか。

概論

8mm映画からホームビデオへ、アナログレコードからCDへ、 コンパクトカセットからMDへというように、 技術の進歩(特にデジタル技術)にともなって メディアの世代交替が起こる。 1950年代の技術で作られた現行テレビ方式も ようやく乗り越える道のりが見えてきた。 現在の混沌はその入口を覗いているものと思われる。

普通の4:3テレビ方式(NTSC)

テレビ放送はデータを間引いて送っている

画像の情報量について考えましょう。 日本とアメリカで使われているNTSCテレビは、 一画面が525本の水平走査線から成り立っています。 垂直回帰期間に隠れてしまう部分があるので、 画面に現れるのは約480本。 これはほぼ640x480ドットのMacintosh 13inchモードや VGA画面に相当します。 640x480のフルカラー画面(24bits/dot)は一枚7.2Mbitの 情報量があります。 現在ではちらつきや健康から75コマ/秒が推奨されているので これを採用すると、理想的なVGA相当テレビでは553Mbit/s という情報量になります。

一方、一つのチャンネルに6MHzの周波数帯域幅が 割り当てられています。 AMラジオでは一つの局に9kHz、FMラジオでは100kHzなので、 画像を送るためにそれよりは遥かに広い幅が割り当てられています。 この帯域幅の中で4.2MHzが映像信号に当てられています。 その他は音声及び隣のチャンネルとのすき間になります。 S/N比42dBを仮定すると、7bitsの分解能にあたるので、 サンプリング周期の半分が帯域幅になることを考慮して、
4.2[MHz] x 7 x 2[bits/Hz] = 60[Mbits/s]
となり、理想テレビの1/9の情報量しかないことが分かります。 この差を埋めるために、現在だったらいろいろなデジタル圧縮技術を 使おうということになるでしょうが (つまりデジタル化テレビ放送)、 現行放送はそれがない時代に作られたものですから、 さまざまな妥協や視覚の性質を利用した誤魔化しに よって情報量を節約しています。

  1. コマ数を減らす。 以前はちらつきに対する基準が現在より緩かったので、 60コマ/秒で十分と考えられていた。 NTSCよりずっと後のVGAのグラフィック画面も、 ハイビジョンも60Hzを採用している。 これで20%減(442Mbits/s)らせる。
  2. インターレース(飛び越し走査)化する。 画面を奇数走査線、偶数走査線にわけると半分の細かさの 画面が2枚できます。1/60秒に半分ずつ送り、 1/30秒で全情報を送ることにすれば、 一応1/60秒/コマという約束は守ったままで情報量を半分に することができます(221Mbits/s)。
これでも4倍多過ぎますが、あとは画像をデジタルの ビット列でなくアナログのAM変調波形で送ることで データを減らしています。

テレビ信号はアナログである

テレビ信号はパソコンの画面と違って、 ドット単位の情報ではありません。 2次元の画面を走査線の集まりとみて1次元化し、 それをAM波形として表します。 各微小部分はRGB値の代りに、 輝度Y、赤(オレンジ)の強さI、青(シアン)の強さQの 値で表します。 そして、輝度にもっとも広い帯域を、 青にもっとも狭い帯域を割り当てることで 情報を節約しています。
  1. 輝度の分解能
    輝度信号帯域4.2MHzを30x525で割ると、 一本の走査線あたり266周期(530ドット相当)になります。 実際にはこのうち17%程度が水平回帰期間に 割かれるので、理想的水平解像度は448ドットになります。
  2. 色情報を間引く
    赤信号帯域は1.5MHz割り当てますので、 赤い色に対しては160本の解像度になります。 つまり、幅3ドット以上の広さがないと 赤い色が付かず、 青信号には0.5MHzを割り当てますので、50本の 解像度になります。 つまり画面上9ドット以上の幅のある部分にしか 青い色が付かないということです。
つまり広い物体にだけ色をつけるという考え方で 色情報を節約しています。 色信号は輝度信号の周波数の高い領域に重ねていますので、 細かい画像や色信号はそれだけS/Nが悪くなっています。 このように、テレビは人物や風景を写すことを前提としており、 文字を前提としたコンピュータのディスプレイよりは 性能が悪くなっています。

テレビから離れてみる理由

昔から「対角線の5倍テレビから離れて見ろ」といいますが、 それは目が悪くなるからでは*ありません*。 テレビ画面のアラが目立たない距離というので定められただけです。 その証拠に画質の向上したハイビジョンでは対角線の3倍と 言われますし、もっと精密なコンピュータの画面では、 等倍程度で使います。 コンピュータのディスプレイに関しては、眼精疲労とか、 画面から静電気でホコリが飛ぶとかいわれますが、 これは対角線の5倍とは全く関係ない話です。

現行放送の画質改善

というわけで、もともと情報が間引かれているテレビの画質を 良くしようと思った時にできる方法は2つです。
  1. 元の信号に含まれている情報をできるだけ 失わないように復元する。
  2. もっともらしい想像で補間、補強する。
第一の手法の代表はクシ型フィルタによるY/C分離です。 昔のTVは単純に3MHzのLPFで輝度信号、 HPFで色信号を分離していましたが、 実際には周波数が重なっているので、分離は不完全でした。 そのため、輝度の解像度が悪くなったり、 色信号に輝度信号が交じって縞模様に虹が現れたりという 不都合がありました。 クシ型フィルタは、 隣の走査線の信号と加算することで輝度信号が、 減算すると色信号が得られるというものです。 ベーシックなクシ型フィルタでは、ガラス遅延線やCCD素子を 使って走査線1本分の遅延信号を作り、元の信号と加減算します。 両隣の走査線を使って性能を高めたのが3ラインクシ型フィルタ、 フィールドメモリを使ってもう一方のフィールドの走査線も 使うのが高級機に採用されている3次元Y/C分離です。 しかし、これも隣合った走査線はほとんど同じである という画像の性質を利用していますから、 2の方法も採り入れているといえます。

2の方法では、輪郭を強調して画像をシャープに 見せるなどが使われます。 また、飛び越し走査を順次走査に変換する時には、 あいだの走査線を推定補間しなければなりません。 静止画ならもう一方のフィールドの画像をそのまま 使えばいいのですが、動画の時にはずれが生じます。

現行方式の問題点は、飛び越し走査である

飛び越し走査はインターリーブとも呼ばれます。 テレビは毎秒30画面ですが、1/30秒かけて 上から下まで描くのではなく、 1/60秒で走査線の奇数番号、 次の1/60秒で偶数番号というように2回なぞるのです。 画面に目を近付けてみると上から下へ、下から上へ 線が流れているのが分かりますが、 これがインターリーブの証拠です。 情報が半分になっているため、輪郭のはっきりした文字などが 上下にビリビリ揺れて見えるという悪影響があります。 コンピュータ用のモニタでも、 高解像化の初期には、水平走査周波数を上げないで 済ませるためインターリーブが使われたことがありましたが、 画質が劣るためにすぐ駆逐されてしまいました。 コンピュータモニタでは目の健康のため75コマの ノンインターレースが推奨されていますから、 60コマ/秒のインターレース画面であるテレビは 満足できない水準です。

現行テレビでは525本の走査線を毎秒30回描くので、 一秒間に15750本の走査線を描きます。 これを水平走査周波数といいます。 テレビからは15.75kHz周波数のノイズが放射されています。 可聴帯域なので、気になります。 テレビの後ろに回った時や電気屋さんのテレビ売場に いくと高音の雑音で頭がおかしくなりそうです。

これを解決するのが順次走査化です。

昔からテレビからは画面の対角線の5倍離れて見るように といわれてきましたが、 これは近くで見ると目が悪くなるからではありません。 第一に、それくらいはなれると画質の荒さが目立たなくなるから、 第二に、水平周波数の雑音も耳につかなくなるからです。

クリアビジョンとは

互換性を保ったまま放送側と受信器に改良を加えて、 画質の向上を図ったものがクリアビジョン(EDTV: Enhansed Definition TeleVision)で1990年に 定められました。 放送局側の改良としては
  1. ハイビジョン用の高品質な撮影カメラの利用や、γ補正。
  2. ゴースト除去信号の挿入。
受信器側の改良として
  1. 順次走査化。
  2. ゴースト除去装置の導入。
がありました。 しかし、クリアビジョン対応受像器はほとんど普及しませんでした。 順次走査にするには一画面全体をメモリに蓄える(フィールドメモリ) 必要がありますが、 1990年当時は半導体メモリが現在より遥かに高価だったこと、 静止画と動画の切替が不自然だったことなどの理由が考えられます。 また、ゴーストキャンセラも10万円以上しました。 そのため、クリアビジョンは効果が目に見えにくい割りに 高いと判断されてしまったようです。 しかし、その後メモリの価格は下がり、 現在のテレビ、ビデオでは3次元Y/C分離のため フィールドメモリが当たり前になると共に 静止画と動画の切替え処理も使われ、 改良されてきているので、 順次走査化する時期は熟してきたと言えるでしょう。

ワイドクリアビジョンとは

クリアビジョンが不発に終ったので、 横長化したワイドクリアビジョンが本命と考えられるようになりました。 もともと人間の視野は横長になっているため、 横長画面の方が視野一杯に広がって迫力を感じ、 はっきり視覚上の効果が得られます。 映画は、少し前から横長化しています。 ハイビジョンが5:3を採用したので、 現行NTSC信号と互換性を保ったままで横長化する ワイドクリアビジョン(EDTVII)方式が考え出され、 1995年に放送が始まりました。

単に4:3の画面の上下を制限しただけでは、 信号の一部を無駄にしていることになり、 画面一杯に拡大しても画質はかえって低下してしまいます。 そこで画質を補うための新しい信号を挿入しているので、 テレビの方でこの信号を解読できるかが問題になります。

ワイドクリアビジョン対応には4段階ある

ワイドクリアビジョン対応とうたってあっても、 どの段階かを見究めないとひどいことになります。 まずクリアビジョンに対応していない場合どうなるか。
  1. 4:3テレビはワイドクリアビジョンに対応していませんが、 この場合上下に黒い帯が出ます。
  2. 1995年までのワイドテレビも対応していませんが、 この場合手動でフルサイズに切替えれば画面一杯に見えます。 しかし、画質を補う信号は解読しません。
ワイドクリアビジョン対応と書いてあっても3ランクあります。 (方式としては4種類だが、実際の製品では3, 4段階は同時に 行なわれるため。)
  1. 識別信号対応。これが最低ランクで、 クリアビジョン放送がくると自動的に ワイド画面に切り替わります。 画質向上効果はなく、非対応ワイドテレビと同じです。
  2. 水平高解像信号対応。 識別に加え、クリアビジョンの信号のうち水平高解像度信号を 解読するものです。 これは、これまでの4.2MHzのビデオ帯域を6MHzの伝送帯域 一杯に広げて横方向の解像度を最高約600本にあげるものです。
  3. 垂直高解像信号対応、垂直時間解像信号対応。 横長画面では、画面の上下に空きが生じるため、 画面一杯にすると、そのままでは有効な走査線数が減ってしまい、 4:3TVより画質が悪くなります。 そこで、空いた部分に垂直方向の解像度を補う信号と、 順次走査化のための情報を入れてあり、これに対応するものです。
  4. 順次走査(フルスペック)。 以上の3つに加え、順次走査を行ないます。

ただのワイドテレビは極めて中途半端な存在

4:3放送は不自然に引き延ばさないと画面一杯になりませんし、 ワイドクリアビジョン放送も、ハイビジョン放送も 写ることは写りますが本来の画質は得られません。 ワイドクリアビジョン対応でないワイドテレビを早く買って しまった人はお気の毒です。

ハイビジョンとは

ハイビジョンはNHKが開発した走査線が1125本ある 画質のいい横長テレビで、NTSCとは互換性がありません。 走査線を増やしたことで映画なみの品質が得られると されています。 ハイビジョンの放送方式がMUSEで、 周波数幅が広いため地上放送はできず、 衛星放送で行ないます。 ハイビジョンは'87年に開発されましたが、 本質的にはアナログであり、 普及に手間取っている間にデジタル技術が急速に進歩したので、 新世代テレビとしては相応しくないという意見が台頭してきました。 そのためハイビジョンを世界規格にしようという主張は挫折し、 むしろ日本も含めて将来はデジタル化しようという 流れになってきました。 ハイビジョンは1997年から本放送が始まりますが、 先行きは分かりません。 もっともデジタルテレビはまだ研究中で、 規格もまだ定まっていないので、 今使える高精細テレビの規格としてはハイビジョンしかない というのも事実です。

ハイビジョンを見る方法には2種類ある

ハイビジョンを見る方法には2通りあり、 カタログに「ハイビジョンが楽しめる」などと書いて あっても完全ハイビジョンとは限らない。
  1. MUSEデコーダを備えたハイビジョンテレビを用いる。 ハイビジョン本来の品質が得られる。 現在ハイビジョン受像器は32型で40万円台。
  2. MUSE-NTSCコンバータを用いてNTSCテレビで見る。 ハイビジョンの画質効果はなく、普通のテレビと同じ。 コンバータ内蔵TVやビデオは3,4万円程度の差額で買える。

地上放送、衛星放送、CATV

これはテレビ信号の方式ではなく、 放送形態による区別です。 地上のアンテナ塔から電波で放送するのが地上放送、 放送衛星から電波を送っているのが衛星放送、 有線で送っているのがCATVです。

文字放送 (Teletext)

ニュースビジョンなどの商品名で売られているテレビは、 文字放送が見られます。 また、単体のチューナを繋げば、 既存のTV (ビデオ入力端子)でも見られます。 文字放送は独立した放送ではなく、 各チャンネルの放送に付随して送られてくるものです。 垂直回帰期間に40本くらいの走査線がありますが、 この画像情報の乗っていない走査線を利用して、 文字やカラービットマップの情報を送るものです。 デコーダはFM音源も装備しているので、 安っぽいパソコンのような音も出ます。 番組はニュース、天気予報、交通情報、番組案内など、 各チャンネルで数百ページ分以上送られます。 そのため、見たいページが送られてくるまで しばらく待つ場合があります。 申し込みも情報料も要りません。

今一番実質的と思われるのは、NHK総合とテレビ東京で やっている株価全銘柄の放送です。 一部、二部、店頭、外国部、大阪、名古屋まで網羅しています。 証券会社のQuickのパネルは、主要銘柄だけですから、 それよりすごいです。 証券会社店頭にたむろしているおやじ連中に教えてやりたい!?

クローズドキャプション (CC)

字幕放送です。文字放送と同様電波のすき間を利用して、 音を聞きとれない人にも番組が理解できるように 字幕を送ります。これを解読して画面に重ねて表示してくれます。 アメリカでは、番組の視聴者が英語を自由に使えるという前提が 成り立たないためか、ほとんどの番組に字幕がついています。 日本では難聴者対策ということで、まだ対応番組は少数ですが、 ドラマ、ドキュメンタリーなどに良く付きます。 文字放送デコーダと兼用のものが多いです。 また、ビデオディスクなどで雰囲気を壊さないため 字幕をCCに追い出したものがあります。