提言:安全のため鉄道会社は改軌を促進すべし

K. Shida
26/DEC/200

 福知山線に続き,今度は羽越線でも脱線転覆事故が起きた.直接の原因は, 福知山線ではカーブでのスピードの出し過ぎ, 奥羽線では強風にあおられた, だという. それへの対策として,

  1. 運転保安装置の強化,
  2. ダイヤに余裕を持たせる,
  3. 悪天候時の運転規制強化,
  4. 防風策の設置,
などがなされるのだろうが,それらは小手先の対策にすぎない. 本質的な原因は,そもそも日本の在来線の規格では車両の安定性が劣ることにある.

ゲージ(軌間)とは二本の線路の内のりをいい, 在来線と呼ばれる日本の鉄道の大部分は1067mm(3フィート6インチ)である. このレールの上に幅2800mmから2900mmの車両が乗っている. ゲージと車幅の比は1:2.7であり、つま先立ちをしているように安定が悪い. 自動車でもトレッドが操縦安定性に大きく影響する. 欧米の鉄道のゲージは1435mm(4フィート5インチ)が標準であり、 新幹線もこれを採用している. 新幹線は車幅が3300mmほどなので、先ほどの比は1:2.3となり,より安定している.

線路は,カーブの個所では外側のレールを高めてバンクにしてあり、 そのため乗客が感じる横Gが押されられるとともに, 遠心力で列車が外側に倒れることを防いでいる. これをカントと呼ぶ. しかし何らかの理由によりそのカーブで列車が停止したとき, カントが高すぎれば列車は内側へ倒れてしまう. つまりカントもむやみに高くはできない. 軌間が狭ければ,静的安定性と動的安定性が両立するカントの範囲も狭くなる. 両立させるには軌間を広げるしかない.横風を受けたときの安定性についても同じことである.

明治五年に日本で初めて鉄道が開通したとき標準軌ではなく1067mmの狭軌が採用されたのは, お雇い外国人技術者の植民地的感覚にあり, それいらい技術的なハンディキャップになっている. 明治末にはすでに横浜線で狭軌と標準軌の比較実験が行われたほどである. しかし財政的な理由から改軌は実現せず, そのため狭軌の制約の中でできるだけ性能を高める「リミット・デザイン 」という不健全な技術開発が延々と行われてきた. 横転事故の遠因を台車の構造に求める説を唱える者もいるが, リミット・デザインの呪縛のなかでの発想であり本質的とはいえない.

京浜急行や近畿日本鉄道など一部の私鉄は標準軌であり, ロールの少ない乗り心地を提供しているが ,旧国鉄においては昭和三十九年の新幹線開業で初めて標準軌を大々的に採用した. これは高速を出すため狭軌では実現できないレベルの安定性と車両性能が必要とされたからである. その一方で在来線のゲージ問題は放置されきたが, 唯一新幹線の乗り入れを目的として改軌がなされたのは山形新幹線である.

国鉄が民営化されてJRとなり,航空機との競争や地方の要望などで在来線にも 今までより高性能な車両が投入され、時間短縮がはかられている. その中で,連続する転覆事故は狭軌の限界を露呈したものといえる. いかなるハイテクによっても物理の法則を覆すことはできない. 後付けの対策でお茶を濁さず,今こそ標準軌化という技術の王道によっ て安全な輸送を実現すべきだ.


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