アンテナ図鑑

SHIDA Koichoro

2007 年 09 月 15 日修正.
2003 年 01 月 06 日更新.

2002 年 11 月 27 日開設


電波をキャッチしたり送信したりするアンテナは, 私たちの身近なところにたくさんありますが, その割りには,普段あまり意識することが少なくなって いるかも知れません. ここでは,街で見つけられるアンテナを集めました. ただし,携帯電話の基地局は 別のページ に集めてあります.

1. TV アンテナ

VHF and UHF antenas on the roof

一本の柱に二つのテレビ受信用アンテナがついています. 上にあって右を向いている大きいアンテナが VHF チャンネル (1〜12チャンネル)用,下の手前を向いている小さめのが UHF チャンネル(13〜62チャンネル)用のアンテナです. どちらも同じ八木・宇田アンテナで,周波数だけが違います. UHF の方が周波数が高く波長が短いため,波長に合わせてアンテナも 小ぶりになっています. VHF チャンネルの波長は1〜2メートル,UHF は数十センチで, アンテナ自体の大きさと同じオーダーです. アンテナの大きさと,そのアンテナが送受信する波長と密接な関係があるのです.

上の VHF アンテナを例にとりますと, 軸線上右から来る電波を敏感に感じるので, そちらを送信アンテナのある東京タワーの方に向けています. アンテナの中左寄りにある輪になっている素子(エレメント)が 実際に電波を受信する部分です. その右側に短めの棒が9本並んでいますが,これが導波器, 左側にある2本の長めの棒が反射器です. 下の UHF アンテナが違う方向を向いているのは, テレビ神奈川 (TVK) のある横浜方面を狙っているのでしょう.

このアンテナは昭和の初期に東北大学の八木秀次(やぎひでつぐ)博士と 宇田新太郎(うだしんたろう)博士によって発明されました. 構造が簡単で,指向性(一方向から来る電波だけを敏感に受けること)が 強い優れた形式ですが,当時日本国内では認められませんでした. むしろ,アメリカが先に採用して,第二次世界大戦中に日本軍が占領した イギリス軍の基地で八木・宇田アンテナがレーダーアンテナとして 使われているのを発見したものの,日本の技術者には正体が分からなかった そうです. これは,日本は自前の技術に冷淡だという例としてよく引用される エピソードです. 八木秀次博士は,その後武蔵工大の第三代学長を勤められました.

家庭用テレビアンテナでは, マスプロ電工DX アンテナ の二社が有名です.

尾山台一丁目(武蔵工大のすぐ近く)の民家にて. 2002 年 11 月 27 日.Canon S30.


Array of VHF antenas on an apartmentこれも VHF のアンテナです. 集合住宅では,一本のアンテナから各部屋に分配すればいいのですが, そのシステムがない場合には,このように一つの屋根の上に アンテナが林立することになります. 日本中のどこででも良く見られる景色です. もちろん,すべて同じ方向を向いています. 上と同じ時に撮影.

Satellite Dishこれは衛星放送用のパラボラアンテナです. 衛星放送は赤道上 36000km の静止軌道にある放送衛星 (BS) または 通信衛星 (CS) の電波を受信します. VHF や UHF などの地上波放送との違いは, 周波数がより高い SHF 帯で,波長が数センチメートルと短いこと, 電波が弱いことです. そのため,八木アンテナよりもさらに指向性の鋭い パラボラアンテナを使います. パラボラアンテナは,反射望遠鏡と同じ原理で,衛星からの電波を反射し, おわんの前に飛び出している受信機のところに焦点を結びます. その代わり,直径は数十センチあって, 波長より何倍も大きくなければなりません. 上と同じ時に撮影.

パラボラアンテナは,天体からの電波を捉える電波望遠鏡にも 良く使われます.

ちなみに,衛星放送受信用の家庭用アンテナのことを英語では "satellite dish" といいます.

2. アマチュア無線アンテナ

Amateur radio antenas on the roofAmateur radio antenas on the roof ある方から訂正が入りましたので引用させていただきます.ありがとうございます.あやふやなことを書き申し訳ありませんでした.

鉄骨で組まれた立派な三角塔の上に乗っているのは, アマチュア無線のアンテナです. 左側の写真は手前に電線があって見にくいので, 右に別の角度から撮った写真も載せました. 上と同じ時に撮影しました. いくつかのアンテナが組み合わされています. 順番に見ていきましょう.

一番目立つ王の字型のアンテナは,短波帯 (HF) の 八木・宇田アンテナです. 周波数が低く波長が長いので,テレビ用よりうんと大きくなっています.恐らく14/21/28のトライバンダーと思われます. 50MHz 帯だとすれば波長は 6m です TVより波長が長くアンテナも大きくなるため,棒が三本しかありません(導波器,反射器がそれぞれ1本). また,棒の途中に少し太くなっている部分がありますが,単純に短縮させるだけでなく 3バンド程度に共振させる為のトラップコイルです.棒の長さを短くするための装置です.

その上にあるさらに長い一本の棒は,もっと低い周波数のアンテナです.トラップが入っている事から 7/3.5MHzのロータリーDPと思われます. これをダイポールアンテナ(双極子アンテナ)といって, アンテナのもっとも基本的な形です. アンテナ幅は,波長と同じだけあります. 八木・宇田アンテナはこれの前後に導波器や反射器を追加したものと 考えられます. ダイポールアンテナは前後対称な指向性がありますが, 八木アンテナほど鋭くありません.

その上に垂直に伸びている細い棒は,解像度が低くて判りませんが 途中に位相反転用と思われる部分があり430のコリニアアンテナ
かも知れません
アンテナではなく, 雷よけの避雷針です また,三角柱のてっぺんから四方向に張られているワイヤーも, アンテナではなく,転倒防止のステーです.

三角柱の上から少し下がったところに,黒いものが 入っていますが,これはローテーターとよばれるモーターです. 指向性のあるアンテナで世界中と交信するために, アンテナを回転させるものです.

三角柱のさらに下には,L字型の構造が取り付けられています. Lの縦棒の部分が 144MHz 帯のためのグランドプレーンアンテナです. 良く見ると縦棒のつけ根に,三方向に短い棒が飛び出しているのが 分かります. このアンテナは,周波数帯は VHF TV 放送と同じくらいですが, 無指向性,つまりあらゆる方向に均等に電波を送受信するという 特徴があります. 長さは波長の半分が基本です. 144MHz の電波は波長が 2m なのでアンテナの長さは 1m になります. これは,携帯電話についているアンテナと同じ形式です. 携帯電話の周波数は 800MHz とか 1.5GHz とかで, 波長が短いので,アンテナも短いのです. L字型のーの部分は,アンテナを取り付けるためのステーです.

Amateur radio antenas aside a windowAmateur radio antenas aside a window

こちらはマンションのお宅です. 左の写真では,八木アンテナが三つ一本のポールについています. このポールは回転するのでしょう. 三つのうち二つは同じものを並べていますが, 「スタック」といって感度と指向性をより強くする工夫です.下の二列が430MHZ帯、上が1200MHZ帯と思われます. 右の写真はグランドプレーンアンテナです.GPはラジアルの大きさから察するに430のコリニアでしょう. 構造が良く分かりますね. 2002 年 12 月 20 日横浜市青葉区.S30.

3. 米軍基地

Sobe Site, Okinawa通称「象の檻」,正式名称は FAC6026 楚辺通信所またはキャンプ・ハンザー. 海を望む丘の上にある. 直径約 200m,高さ 28m のカゴ型アンテナを持ち, アメリカ海軍の軍事通信傍受施設として使われている. アンテナとして巨大なのは,波長の長い低い周波数までカバーするため であろう.
特徴的な姿から,沖縄の基地問題を象徴する存在の一つとなっていたが,2007年現在は日本に返還され,基地は解体されている.
2002 年 6 月 3 日沖縄本島読谷村(よみたんむら)にて
Canon S30.写っている車は日産セフィーロエクシモ g 2.0.