アイザック・アシモフ「ファウンデーションへの序曲」邦訳記念、
「鋼鉄都市」のパロディで、「電鉄都市」。

  小田急線は混んでいた。
「しかしパートナー・イライジャ、容疑者が目撃されている2つの
時刻の間に殺人を犯し、戻ってくることは、時刻表によれば新横浜から
小田原まで新幹線を使えば可能です」
「そうだ」
  このとき、ドアが開いて寿司詰めの車内に更に客が入ってきた。
C5級刑事イライジャ・ベイリは押されてまっすぐ立てなくなり、
おそるおそる窓ガラスに手をついて体を支えた。両足は前に座っている
OLの膝の間に割り込んでいる。くそ、俺のせいじゃない。
「彼は知人の間でも有名な鉄道マニアだったといいます。
あなたのおっしゃるように、普通の神奈川県民に一駅だけ新幹線に乗る
習慣がないとしても、彼がそれに気付かなかったとは考えられません」
  ダニールは冷静だった。宇宙市の情報には、こんなラッシュのことは
含まれていただろうかとベイリは思った。ダニールの青白い、端正な顔は
ドアガラスに押しつけられ頬が潰れている。人間だったらもうちょっと
情けない顔をしそうなものだが、こんな時まで無表情なところはやっぱり
ロボットだ。
「それなのに、あなたは彼が犯人ではないとおっしゃるのですか?」
「ああ、彼は犯人ではない」
「それは合理的ではありません、イライジャ。」
「ダニール、これは心理的な問題なんだ。彼は筋金入りの鉄道マニアだった。
本物の鉄道マニアは、新幹線には乗らない」