PC の CPU 選び(第二版)

2001 年 11 月 17 日作成

1. 破壊大王に気をつけろ

その昔 Cyrix MII は「発熱大王」と呼ばれた. その伝でいえば,さしずめ AMD K7 CPU は「破壊大王」といえるだろう. この記事 をみて欲しい. 研究室で購入した七個の Slot-A Athlon CPU が, 十数枚のマザーボードをつぎつぎと消費していく様子が書いてある. マザーボードの寿命は平均一年くらいで,もはや Slot-A マザーは なかなか手に入らないから,マザーのない CPU がごろごろ余っている 状態である. これらのマシンはすべて原則二十四時間運転していた.

これは Athlon CPU の品質問題ではない. CPU そのものが破損した例はないからである. また,単なる過熱と片付けることもできない. 温度モニターはすべて正常な範囲にあった. また,以前 Dual PentiumPro マザーボードを四年近く運用しており, 消費電力は二つの CPU で合計最大 80W にも登るにも関らず, 何の問題も生じなかったからである. 数年前のことだから, AT ケースは今ほど放熱を配慮したものではなかった. その他に Single PentiumPro のマシンも数台あったが, 問題は生じていない.

最近の CPU は定格電圧がうんと下がっている. PentiumPro は定格 3.3V であるから一つ 40W で約 12A, 二つでも 24A なのにたいして, K7 Athlon 650 は 1.6V で 54W なので 34A 近く流れてしまう. そのためマザーボードに搭載された電圧レギュレータ用コンデンサ の選定によっては,リップル電流が過大となり, 高々数千時間くらいの運用で故障に至ると推定される.

マザーボードの品質問題と考えることもできるが, FIC, ABIT, MSI というメジャーメーカーの製品が軒並やられている ことを考えると, 30A もの大電流を流す CPU は, マザーボードの設計に重大な困難を引き起こしており, 現実に短寿命という問題を生じている,といってもいいように思う. ASUS, Gigabyte なら大丈夫なのか, というのはもう少し様子を見ないと分からない. 解決策はいくつか考えられる.

  1. 壊れないマザーボードを探す. しかし,予め分からない以上,これは第二策と等価である.
  2. 消耗品と割り切って,壊れたら新しいマザーボードを買う.
  3. 電流の多い CPU を避ける.

君子危うきに近寄らず.ここでは第三の道を採ろう. x アンペアという絶対の線引きはできないが, 最新 CPU のスペック表をみると 20A を大きく越えない, という基準が現実的であろう. これで排除されるのは以下の CPU である.

Athlon/Duron CPU がすべて駄目というのではなく, Thunderbird/Spitfire 系ならクロック周波数を 700MHz 以下に 押えれば 20A に押えられる(表1). 現行の Palomino/Morgan 系なら 800MHz 位までは出せるだろう. 電圧をに低めにするとさらによい. ただし,電力消費は電圧の二乗で効くが電流は比例するので, 低電圧に設定しても,発熱には効くほどは電流には効かない. Unlocked CPU を入手したり,加工ができたなら,クロックダウンが渋い.
秋葉原では低電圧の Athlon4 と倍率変更ゲタのセットが売られている. 定格は 1.4V で 100x9=900MHz だが,どうせコアは同じであろうから, Athlon XP 対応マザーなら動く. 志田が試したサンプルでは,電圧は 1.52V までしか下がらなかった (Gigabyte GA-7VTXE)が 133x7.5=1GHz は楽勝であった.

表1:AMD CPU のスペック
モデル最大電力電圧[V]電流[A]キャッシュ
Athlon (TBird) 65038W1.7521.7384KB
Athlon (TBird) 70040W1.7522.8384KB
Duron (Spitfire) 60027.4W1.617.1192KB
Duron (Spitfire) 65029.4W1.618.3192KB
Duron (Spitfire) 70031.4W1.619.6192KB
Duron (Spitfire) 75033.4W1.620.9192KB
Duron (Spitfire) 80035.4W1.622.1192KB
Athlon 4 900 24W1.417.1384KB
Athlon MP 1000 (参考)46.1W1.7526.3384KB
Athlon MP 750 (推定)34.6W1.7519.8384KB

ここには,各 CPU の最大熱出力(消費電力に同じ)をまとめた. この程度のグラフも世の中に出回っていないのはどうしたことか. 最大電流を知るには,これを電圧で割ればよい.

2. 候補1: intel Pentium III-S (Tualatin)

Intel Pentium 4 Processor は消費電流/発熱に関して 高速な AMD CPU と同じデメリットをもつ. しかも AMD CPU のようにクロックダウンで回避するという 手も使えないので,選択肢からは外れる. そこで脚光を浴びるのがコードネーム Tualatin と 呼ばれる最新の Pentium III/Celeron プロセサである.

表2: intel Tualatin のスペック
モデル最大電力電圧[V]電流[A]二次キャッシュFSB
PIII-S 1.13GHz27.9W1.4519.2512KB133MHz
PIII-S 1.26GHz29.5W1.4520.3512KB133MHz
PIII-S 1.40GHz31.4W1.4521.7512KB133MHz
PIII 1.13AGHz29.1W1.47520.1256KB133MHz
PIII 1.2GHz29.9W1.47520.6256KB133MHz
PIII 1.33GHz33.9W1.47523.0256KB133MHz
Celeron 1.2GHz29.9W1.4520.6256KB100MHz

Tualatin コアを使った Pentium III CPU は, はじめ 2001 年第三四半期のみといわれたが,今も販売は続いている. 年末に更新されたスペックシートには 1.33GHz も掲載されている. サーバー用の III-S CPU も 2002 年 1 月には 1.4GHz が発売され, 年内一杯は提供されるという話である. intel がいうほどには Pentium 4 CPU へ強引に移行できない理由が あるのである. 特に省スペースデスクトップや CPU 数の多いブレードサーバーではそうだ.

FSB 帯域で劣る P6 が他の CPU と伍していくためには, 大容量のキャッシュと少しでも速い FSB が鍵である. 多少値は張るが是非 Pentium III-S 1.13GHz を選びたい.

3. 候補2: VIA C3

C3 は遅い,同じクロックの Celeron よりも遅いといわれるが, クロックあたりで考えると Pentium 4 より速いという説もある. 1.6GHz の P4 (61W) と比べると, 性能は半分で消費電力は五分の一以下というわけだ(表3). 悪くないではないか? 実際ここまでクールだと,CPU ファンなしでヒートシンクのみの 運用もできるらしい.

表3: VIA C3 (Samuel2) のスペック
モデル最大電力電圧[V]電流[A]キャッシュFSB
C3 80011.3W1.67.1192KB133MHz