CPU 選び2003: クロックダウンの季節

27/Aug/2003 Pentium 4 のクロックダウンについて追加

17/Apr/2003 追記: 最新CPUの最大消費電力に Pentium-M の データを入れてある. デスクトップ用 Pentium-M マザーボードが待望される.

31/Jan/2003 追記: この記事をご覧になったある方よりメイルを頂きました. mobile AthlonXP 1800+ CPU と Albatron KX-400-8X マザーボードの 組み合わせで 166MHzx9=1.5GHz で起動したそうです.

2/Jan/2003 作成


1. 熱い CPU はなぜ困る?

Intel の CPU が世代交代するとき、新世代の初期型より旧世代の 最終モデルのほうが完成度が高いことがある. Pentium の初期型 60/66 より 486 の最終型 DX4-100, PentiumPro より MMXPentium,初期型Pentium4 (Socket423 で Willamette コア) より PentiumIII-s (Tualatinコア). いずれも処理性能ではほぼ互角,消費電力も発熱も旧世代機のほうが少なかった. 旧世代だと将来のアップグレードの可能性がないのでは? という不安についても,実は差がなかった. Pentium66,Socket 8(PentiumPro),Socket423 のいずれも, 次のモデルではそれぞれ Socket5,Slot1,Socket478 に 変ってしまったのである.

PentiumIII の最終モデル Tualatin-512K には,1.13/1.26/1.4GHz の 3モデルがある.サーバー専用という位置付けであるが, 多くのデスクトップ用マザーボードで支障なく稼動する. この CPU の優れたところは Pentium-4 1.6〜1.8GHz 並みの処理能力を 30ワット前後の消費電力で提供することである. 同時期に発売された Pentium4 (Willamette) 1.7GHz では約 60W, 改良された Northwood コアの Pentium4 1.8AGHz でも約 50W 消費するから, 断然クールである.

Intel/AMD のデスクトップ CPU は,これまで処理性能を上げることに力を注ぎ, 消費電力の増大には,電源部や放熱を強化して対応してきた. 今日の最速 CPU はわずか 1cm 四方のシリコン片から最大 80W 以上の 熱を放出する. その弊害が大きくなってきた.

  1. エネルギー消費: PC は世界中に何億台もある. PC の消費電力はいまや先進国の電力消費のなかで無視できない比率になっている. それでも,電力分働いていればまあよい. ほとんどの CPU は空回りしているし, 家庭用 PC が AV 機能を持つようになっているが, PC の待機電力は ビデオ やテレビよりけた違いに大きいことが問題である.

  2. 騒音: 熱を逃がすため PC には冷却ファンがいくつもついている. 熱が増えればより強力なファンをたくさんつけなければならず, 風切音が増えてしまう. 作業に耳障りであるだけでなく,AV 装置としての価値を損なう. 静音パソコン流行のゆえんである.

  3. 故障: 電子部品の寿命は,温度が10度上がると半分になるといわれる. CPU が周囲に放出する熱に加え,大電流化によって電源回路の 内部抵抗による部品自体の発熱もあり, マザーボードや電源の故障は増え,短寿命化している. また,送風量が増えたので筐体内にホコリが溜まりやすくなり, 長い間にはトラブルの原因になる.

2. power/performance 比とは

単なる絶対性能,あるいは価格性能比(プライスパフォーマンス)では, このようなことは勘定されない. 「電力性能比」すなわち「エネルギー効率」を尺度として 考えなくてはならない.

このような考えのもとに,低消費電力を狙って作られた CPU に, Transmeta 社の Crusoe や VIA 社の C3 がある. Crusoe は単体のマザーボードが発売されていないため, デスクトップPCに使うことは難しい. C3 は PentiumIII とおなじ Socket370 なのでデスクトップPCにも使える. 1GHz でも最大 12W しか消費せず,クロックの低いモデルではCPUファンなし のヒートシンクだけで使える. C3 の困ったところは絶対性能が低いことである. 特にに浮動小数点演算を行う FPU が遅く,1GHz といっても PentiumIII や Celeron でいったら 300MHz から 400MHz 相当の性能しかない. それなら,いくら C3 が省エネルギーだといっても, 古い CPU を使いつづけるエコ度には敵わないであろう.

サブギガヘルツクラスの PentiumIII や Celeron は,世の中に いくらでもあり,ぞくぞく更新時期を迎えているから, それを拾ってくればいいのである. 10W 台の CPU を狙うなら,coppermine の低クロック版を探す手がある. 0.18μ プロセスを使った Coppermine コアの PentiumIII 533EB などは, 二次キャッシュも大きく FPU も速いのに消費電力は 15W ほどでC3 と大差ない. 667MHz までの Coppermine CPU は 20W を切っている. 0.18μプロセスは,0.13μに比べて消費電力での不利はそれほど大きくない.

つまり,いくらクールでも性能があまりにも劣っていると新品を買う意味がない. 先に述べた Tualatin CPU はこの点で優れた CPU なのである. こうして,はじめ 2001 年内で終了といわれた Tualatin は, 予想を越えた長生きをして 2003 年を迎えた. しかし,さすがに終息の時期が近い. 消費電力 30W 級では依然としてライバルはないものの, Pentium4 や Athlon の熟成が進んで, 高速 CPU との性能差がつき始めているのである.

3. クロックダウンとは

そこで,メインストリームの AthlonXP/Pentium4 CPU を使った 「クロックダウン」ということが出てくるわけである. そのねらいは二つある.
  1. 処理能力はなるべく落とさない: Tualatin-512K より高い処理性能を確保する.

  2. そこそこの消費電力: ファンレスは狙わない. おおむね 40W 以下であれば,発熱に関する心労はほぼ解消する.

どうするかというと,クロックアップの逆を行けばいいのである. クロックアップでは三つのことをする.
  1. クロック逓倍率を上げる: 逓倍率は FSB に対する CPU コアの駆動周波数の比のことで, たとえば PentiumIII 1.4-S ならば 1.4GHz=133.3MHzx10.5 なので 10.5 倍となる. Athlon のいくつかのモデルのように,マザーボードの ジャンパスイッチや BIOS の設定で倍率が変えられる CPU では, より高い倍率に設定するとマザーボードの動作に影響せず CPU だけ 速くなる.

  2. FSB 周波数を上げる: intel CPU のように逓倍率を変えられない場合には,マザーボードの 駆動周波数をあげると,それに比例して CPU の周波数も速くなる. 上の例では 140MHzx10.5=1470MHz のようになる. この場合マザーボード上の周辺回路や拡張カードなども規格外の 周波数で動作することになるので,それがトラブルの原因になる ことがある.

  3. コア電圧を上げる: CPU の動作周波数の上限を上げるため電圧を上げることがある. これを「カツ入れ」と称するが,やりすぎると CPU を破壊する. しばらくは動いても,寿命が極端に短くなることもある.

一方,理想的なクロックダウンとは次のようなものである.
  1. まず FSB 周波数を上げる: ただしマザーボード定格外の動作は避ける.

  2. つぎにクロック逓倍率を下げてコア周波数を定格より低くする:

  3. 生じた動作マージンを使って,コア電圧を下げる:

FSB 周波数を上げたいのは,コアクロックに伴って処理能力が 落ちるのを少しでも補うためである. おなじコアクロックで FSB を 100MHz から 133MHz へ 33%上げたり, 133MHz を 166MHz に 25% 上げたりすると, 逓倍率にもよるが,いろいろなベンチマーク結果を総合すると 5% から 7% 性能が上がるようである. 例えば, AthlonXP 2600+ は 133MHzx16=2133MHz と, 166MHzx12.5=2083MHz のタイプがある. 後者のほうがクロックが低いが性能はむしろやや速い.

4.プラン

4.1 AMD AthlonXP なら

Athlon 系 CPU は倍率の変えられるものと変えられないものが 混ざっている. 変えられるのは Athlon MP と mobile AthlonXP である. デスクトップ用 AthlonXP は高速モデルに変えられるものが多いが, リテールパッケージ版では買ってみないと分からない.

現行の AthlonXP ファミリーでおもしろいと思われるのは, mobile AthlonXP 1800+ (133x11.5=1533MHz)である. 倍率は変えられるようになっているし, 定格電圧が 1.4V とデスクトップ用の同クロックモデルより 0.1V 低い. 秋葉原の店頭では 35W と表示されているのだが,本当だろうか. デスクトップ用 XP 1800+ の最大電力は 51W であり, 電圧低下分を勘定すると 44W になるのである. Cool'n Quiet と呼ばれるソフトウエアによる逓倍率制御機構を 効かせても,軽負荷のときに効くだけで最大電力は 変わらないはずである. モバイル Athlon ではジャンパの設定がデスクトップ用と違うので, 倍率や電圧の調整ができるマザーボードを選ぶとよい. マザーボードで手動調整できなくても,玄人志向が発売している CPU げたを履かせて,インターネットで情報を調べて ジャンパの設定をすることができる. 設定しないと 6 倍 1.55V の設定で起動してしまう. このあたりは Fab51 が詳しい.

さらに低発熱化したいなら,1333MHz とかに落として, 電圧も下げられるかどうか試してみるとよい. もし FSB166MHz で動かせるなら, 166x9=1500MHz などにも挑戦してみたいものだ. 予算に問題がなければ FSB166MHz に正式対応していて 逓倍率も変えられる XP 2600+ を素材にしてもよいだろう.

4.2 intel Pentium4 なら

27/Aug/2003

800MHz FSB の Pentium 4 CPU がでたので, P4 のクロックダウンのプランが立つようになった. P4-2.4CGHz を FSB533MHz に落とすとクロック周波数は 1.6GHz になる. 2.4C の最大熱出力が66Wだから単純に 2/3 倍すると44W になるが, 次に述べるように,そんな単純にはいかないかもしれない. 駆動電圧は多少下げられるだろう. 既存の P4 1.6AGHz に比べて,性能上のメリットは三点ある.

  1. ハイパースレッディングが有効になっていること.
  2. 1.6A だと FSB400MHz でメモリが DDR266 までなのに比べて, FSB533MHz なら DDR333 メモリが使えるので, 主記憶のアクセス時間が相対的に縮小する. つまり,FSB800MHz で DDR333 を使うと,FSBとメモリクロックの比は 5:2, DDR400 を使っても 2:1 なのに対して,FSB533MHz で DDR333 を使えば, 8:5 に比が小さくなる.
  3. 1.6A のほとんどはメモリ先読み機構にバグのあるステッピングなのに対し 新しい2.4Cでは解決して性能が向上していること.

2/Jan/2003

残念ながら今の Pentium4 はクロックダウンには向いていない. 逓倍率の変えられる Pentium4 はない. FSB が 400MHz と 533MHz のモデルがあるので, 533MHz のモデルを 400MHz に落とすことはできる. しかし 2.4BGHz の FSB を 400MHz にしても, ストックモデルの 1.8AGHz と同じになるだけで, 何も嬉しくない. Pentium4 はクロックをいじるよりも, 駆動電圧を下げてみる手だろう. たとえば定格電圧 1.5V 最大電力 54W の 2.0AGHz モデルが 仮に 1.35V で動いたとすると, 最大電力は電圧比の二乗で変わるので8割の 43W となる.


UP K. Shida