CPU交換計画のためのPentium4パフォーマンス評価

 

2006年8月12日 K. Shida

 

1.  はじめに
 CPUのベンチマークテストはたくさんのウェブサイトにあるが,商業サイトはたいてい最強のゲームマシンを目的としてテストをアレンジしている.そのためCeleronのようなバリューチップのデータを見つけるのがむずかしいし,また最新型同士の比較はあっても,過去のCPUと現在のを比べたいときには不便である.SuperPIや,SETI@homeのような特定のアプリケーションの実行時間を競う参加型のベンチマークサイトもあるが,これらは特定のアプリケーションの実行性能を表していて一般性がない.ここではCPU交換計画の立案を目的としてPentium4 CPUの間のみのパフォーマンス評価を行なう.データはTom
s Hardware Guide http://www.tomshardware.com/ のCPU CHARTSからPCMark2004とPCMark2005の値を拝借する.PCMarkは,FUTUREMARK社製のベンチマークソフトで,CPUとMemoryはそれぞれ主に演算性能,メモリアクセス性能を測るために作られたプログラムである.2004と2005はバージョンの違いであって,2005はマルチスレッドに対応しているので,ハイパースレッディングやデュアルコアを備えていればスコアが高く出る.

2.  コアの種類による性能の違い
 図1に,クロック周波数3.0GHz,FSB周波数800MHzで揃えた三種のP4コア,Northwood,Prescott,CederMillのPCMark2005のスコアを示す.上のものほど新しい.四つ目はNorthwoodコアだがFSBが533MHzと低い旧型のモデルである.みて分かることは,CPUのスコアは,コアによる違いはほとんどなくクロック周波数だけで決まるということである.NorthwoodからPrescottになるときパイプラインの構造がだいぶ変わったが,性能アップには結びついていない.
 メモリアクセス性能はNorthwood 3.0/800が一番高い.DDR-2はむしろDDRに負けている.最近のDDR2版AMD Athlon64のベンチマークでも同じ傾向の結果が報告されている(Xbit Labs.). 3.06GHzのNorthwoodはFSBが遅いためメモリアクセス性は劣っている.FSB周波数が2/3倍に対して,スコアは4/5倍になっている.RD1066という種類のメモリは高速だが今では見られないもので,一般的なDDR333メモリを使ったスコアはPCMark2004の方にある.それによると,CPU/MemoryのスコアはRD1066のとき4659/3862に対しDDR333では4529/3232で,それぞれ-3%/-16%となる.バージョンが違うので厳密ではないが,仮にこれらの結果をつなげて評価するとすれば,3.0GHz/800/DDR400のCPUに対して3.06GHz/533/DDR333は-2%/-32%なる.単純に和で比べると-20%遅いことになる.FSBやメモリチップの速さは大きな影響を及ぼすことが分かる.
 もし3.06GHz/533/DDR333を3.0GHz/800/DDR400で置き換えると,発熱は81.8Wと同じで,性能は2割アップとなる.さて,それでは3.06GHzと同等の性能となるFSB800MHzのCPUはどれだろうか.


1:コアの種類よりFSBの方が影響が大きい.

 


3.       クロック周波数の効果
 他の条件を同じにしてクロックだけを変えたとき性能はどう変わるか.CPUの演算速度はクロックに比例しても,メモリや入出力まわりが変わらないので,トータルでは比例係数は1より小さくなると予想される.図2でこれを確かめよう.Northwoodコア,FSB800MHz,DDR400メモリとし,コアクロックだけを変えた.TDPとはThermal Design Powerすなわち設計熱出力である.グラフの見やすさを考え単位はデシワット(0.1W)とした.値を十分の一すればワット単位になる.これをみるとCPUスコアのクロックに対する比例係数が1なのに対して,Memoryスコアは0.54,TDPは0.84である.
 ここで2節の疑問に戻る.仮にさっきと同じようにCPUとMemoryスコアの平均が目安になると考えると,最下位モデルの2.4GHzでさえ3.0GHzの84%の性能をもっていて3.06GHzより速いことになる.TDPでいうと81.8Wから66.2Wに約2割減となる.実際には単純平均というより,アプリケーションによってその比重がCPUスコアからMemoryスコアの間に分布しているのだろう.


図2:クロック周波数の及ぼす効果

 

4.       交換計画の立案
 今まで分かったことは,新コアに変えるだけでは性能上の利得はなく,また高クロック版に変えるだけでは飛躍はないということである.しかしFSBとメモリを高速化することによって同じクロック周波数で2割の性能アップができた.このことはキャッシュメモリの小さいCeleronとPentium 4との比較でより顕著に表れる.図3を見てほしい.Celeron 2.4GHz/400/DDR200をP4 2.4GHz/800/DDR400に変えることによって,11%のTDP上昇と引き換えに56%性能がアップする.これは悪くないとりひきだ.
 もしビデオ編集などの長時間かかるプログラムを実行するとマシンが不安定になる症状があれば,性能を落とさずにクロックの低いクールなCPUに取り替えることで,排熱や電源に余裕を作り出すことができる.性能向上が望みならば,同程度のTDPのより速いプロセサに取り替えられる.

 

図3:FSBとメモリを変えたときの効果.