拡幅競争は誰のため?

K. Shida
2005年12月10日

1. 本論

小型欧州車は日本で乗るのに最適といわれてきたが,だんだん怪しくなってきた. モデルチェンジごとの大型化(特に車幅)が日本の道路事情の限界を超えつつあるからだ.

最初の徴候は1998年,BMWの3シリーズとフォルクスワーゲンゴルフIVが相次いで 3ナンバー化されたことである.3シリーズは1740mm,ゴルフは1735mmに広がった. 「ゴルフが3ナンバー?」と当時疑問符がついたものの, 「ま,+40mmくらいならそれほど不自由はしない」とあまり深刻に考えなかった.

しかし2001年にプジョーが306から307になったとき, +65mmの拡幅で1760mmになったのをみて初めて不安な気持ちが広がる. 幅1760mmは,当時一クラス上(Dセグメント)のアウディA4(1735mm)や メルセデス・ベンツCクラス(1730mm)よりも広く, ボルボS70(1760mm)と肩を並べるものであったからだ. 1750mmを超えると明らかに運転中幅を意識させられる場面が増える.

そして2004年ゴルフVも307と同じ1760mmになり,今年2005年の新車では, シトロエンC4が1775mm,BMW3シリーズはついに1.8mを超えて1815mmになった. 極めつけはフォード・エスコートで,1600cc/200ccクラスでありながら, 2000年に発表された先代モデルの1710mmから,2005年の現行モデルは1840mmと 一気に+130mm幅広くなった.

1840mmといえば,メルセデス・ベンツEクラス(1820mm)よりも広く, セルシオ(1830mm)やシーマ(1845mm)と同クラス,つまりプレステージカーの領域なのだ. こうなるともはやほとんどの立体駐車場には入らない.

立体駐車場の寸法制限は,車の大型化に合わせて新しいものほど緩やかになり ここ数年の新築ビルでは5300mmx2000mmx1550mmなどというものも存在するが, 主流は4800mmx1800mmx1550mm程度であり,古いビルでは4700mmx1700mmx1550mm すなわち5ナンバー枠のものもある.

もちろん大型化する理由はそれなりにある.

  1. 衝突安全性の確保.
  2. トレッド拡大による操縦性の向上.
  3. 室内空間の拡大(時代とともに平均体格が向上している?)
  4. 経済力の向上に伴う消費者の上級指向.
などが挙げられている. 要するに,同じ寸法であれば,数年毎のモデルチェンジにおいて消費者に 体感できるだけの進歩ができないということであろう. 5シリーズ並のボディに3シリーズ,コロナ並みのボディにカローラという 名前を付ければ,それは良くなるに違いない.

プレステージカーでもRV車でもない小型車を買ったつもりなのに, 運転に気を使う上に立体駐車場にも入らないのでは面白くない. あくまで5ナンバー枠で探すなら,一クラス下のBセグメント, フォルクスワーゲン・ポロ,プジョー206,フォード・フィエスタ, シトロエンC3などから選ぶことになる. その代わり内外装や新技術の採用などはCセグメントより落ちることは 覚悟しなくてはならない.

一方国産メーカーは,バブル期以降3ナンバーモデルが増えたといっても, 売れ筋の小型車は5ナンバーサイズをキープしている. 1500ccクラスのトヨタ・カローラ,日産ティーダはもちろん, 2000ccクラスのトヨタ・プレミオ/アリオンも,RV車の範疇に入る日産ラフィスタ, セレナまで1700mm枠に収まっている. やはり日本では5ナンバー枠という心理的ハードルが残っていることを意識しているのだ.

一方主力車種も3ナンバー化したのはホンダ,マツダである. ホンダは国内よりアメリカ市場を意識した商品企画をしており, マツダもフォードとの資本関係から世界戦略向け統一プラットフォームを 使わざるを得ないという事情がある. つまり日本においてもヨーロッパにおいても, アメリカ市場を意識すると大型化せざるを得ないのだ.

アメリカは,もちろんかつてはV8のフルサイズカーがあふれており、 それを基準にしたインフラ整備がなされているため, どんなプレステージカーでもミニバンでも取り回しに困ることはほとんどない. よって快適性が向上するなら大きい方を好む. 一方ヨーロッパでは旧市街地や昔からの街道など日本と同じ程度に狭い道も多く アメリカ向けの大きい車は不便である. ヨーロッパの道では,ジャガーやSクラスがごろごろ走っている, ということはまったく無く,Bセグメント以下の小型車が多く, それもセアトとかルノーとか日本ではブランドになっていない車種が多い. メルセデスなどドイツ本国ではC180以外ほとんど見かけない. つまりヨーロッパの自動車会社は,EU向けの小型車と輸出用の外貨獲得戦略車種 を分けて考えている. プレステージカーのみならずC,Dセグメントも輸出向け扱いになってきたのである.

2. 資料

各社の主力車種の車体寸法を,世代順に示す. 1700mmを超える横幅を太字で示す.

2.1 成長著しいもの

表1.フォルクスワーゲン・ゴルフ
発表年I 1973II 1984III 1992IV 1998V 2004
全長[mm]37153975402041554255
全幅[mm]16101665169517351760
全高[mm]14101415143514551500
ホイルベース[mm]24002475247525152578

表2.ゴルフのオルターナティヴとしてのポロ
発表年I 1996II 2002
全長[mm]37503915
全幅[mm]16601655
全高[mm]14251480
ホイルベース[mm]24102470

表3.BMW 3シリーズ セダン
発表年02er 1966I 1975II 1982III 1991IV 1998V 2005
全長[mm]423043554325443544704525
全幅[mm]159016101645169517401815
全高[mm]141013801415139514151425
ホイルベース[mm]250025802570270027252760

表4.3シリーズセダンのオルターナティヴとしてのハッチバック系
発表年tiコンパクト1994tiコンパクト 20011er 2004
全長[mm]421042654240
全幅[mm]169517501750
全高[mm]139514101430
ホイルベース[mm]270027252660

表5.プジョー30Xと206
発表年309 1990306 1994206 1999307 2002
全長[mm]4050399538354210
全幅[mm]1630169016701760
全高[mm]1395138014401530
ホイルベース[mm]2470258024402610

2.2 比較的成長がゆるいもの

表6.メルセデス・ベンツCクラス
発表年190 1990C-class 1994C-class 2000
全長[mm]445044954535
全幅[mm]169017201730
全高[mm]137514201425
ホイルベース[mm]266526902715


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