それまで乗っていた 4 気筒車が古くなり振動、騒音があまり激しく なってきたので、1997 年末に買い替えました。 新しい車は 5 気筒です。 5 気筒ガソリンエンジンの元祖 AUDI は止めてしまいましたが、 5 気筒ディーゼルは Mercedes Benz ともども健在ですし、 VOLVO は 850/70 に横置きで、FIAT/LANCIA も横置きで採用するなど、 5 気筒エンジンはむしろ普及しつつあるといえます。 そこで疑問を持ちました。
VOLVO S70 の横置き 5 気筒 2.5 リッターエンジン.
HONDA Inspire の縦置き 5 気筒 2.5 リッターエンジン.
1998 年 2 月 19 日 作成
1998 年 5 月 5 日 Volvo 5気筒エンジンの写真を載せました。
1998 年 9 月 21 日 ホンダ 5気筒エンジンの写真を載せました(浜村さんより)。
2000 年 11 月 15 日 世界初の V6 エンジン搭載車が判明したので,
ランチャ・アウレリアの写真を載せました.
| 気筒数 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 8 | 10 | 12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 爆発間隔 | 360° | 240° | 180° | 144° | 120° | 90° | 72° | 60° |
直列エンジンの場合には等間隔爆発にするが、 V型エンジンの場合力学的な釣合を優先するため、 バンク角によっては不等間隔爆発になることがある。 V 型エンジンでは左右のバンクの対応するシリンダは同じ クランクに接続したほうが構造簡単である。 このとき、左右のバンクの位相の差はバンク角に等しい。 しかし、バンク角が 90°より大きいと V 型エンジンの コンパクトであるという利点が損なわれるので、 V6 の場合にはシリンダ毎のクランクにして等間隔爆発と 小さいバンク角を両立させることができる。 一例として Volkswagen の15°V6 VR6 エンジンと、 一気筒減らした V5 VR5 エンジンが挙げられる。 また国産の乗用車用 V6 エンジンのほとんどもそうである。
| 形式 | V6 | V8 | V10 | V12 |
|---|---|---|---|---|
| バンク角度 | 120° | 90° | 72° | 60° |
V8 エンジンから単純に 2 気筒外して V6 にしたような 90°バンクの エンジンの場合、90-150-90-150-90-150 の不等間隔爆発になる。 アメリカ製 V6 エンジンや、最近では Mercedes Benz の V6 エンジン がそうである。 ホンダの 90°V6 はボンネットを低くするためで、 カムは気筒毎になっている。
しかしそうではない。 ピストンが頂点にあるときのクランク角を 0°とすると、 クランク角 90°のときピストンは中点ではなく中点より下にいる。 その理由は、コンロッドが垂直から傾くため、クランクの長さの 垂直成分はその余弦であり幾分短くなるためである。 ピストンは、クランク角が -90°〜 90°のときには余弦運動より速く、 90°〜 270°までは余弦運動より遅く動く。 これはつまりフーリエ級数展開したとき、角速度 ω について cos 2ω, cos 3ω, …の成分があるということである。
クランク半径(ストロークの半分) r、コンロッド長さ l、 ストローク中央を原点とするピストンの位置 x とする。 ρ = r/l と定義すると、一般に 1/3 < ρ < 1/5 であり、
x = r cosθ + l sqrt(1 - ρ sin^2θ),
となる。これを展開して、ρの 5 次の項まで書くと、
x/r = cosθ
+ [ρ/4 + (ρ^3)/16 + (ρ^5)/512] cos 2θ
- [(ρ^3)/64 + + 3(ρ^5)/256] cos 4θ
+ [(ρ^5)/512] cos 6θ,
となる。
仮に ρ = 1/4 とすると、一次の項に対する高次の項の比は、
二次 1/16、四次 1/4096、六次 1/521288 となる。
| #1 | #2 | #3 | #4 | |
|---|---|---|---|---|
| 群 | A1 | B2 | A2 | B1 |
| クランク角 | 0° | 540° | 180° | 360° |
| 爆発順序 | 1 | 4 | 2 | 3 |
| #1 | #2 | #3 | #4 | #5 | #6 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 群 | A1 | B2 | A3 | B3 | A2 | B1 |
| クランク角 | 0° | 480° | 240° | 600° | 120° | 360° |
| 爆発順序 | 1 | 5 | 3 | 6 | 2 | 4 |
| #1 | #2 | #3 | |
|---|---|---|---|
| クランク角 | 0° | 480° | 240° |
| 爆発順序 | 1 | 3 | 2 |
| #1 | #2 | #3 | #4 | #5 | |
|---|---|---|---|---|---|
| クランク角 | 0° | 576° | 144° | 72° | 288° |
| 爆発順序 | 1 | 5 | 2 | 4 | 3 |
| 左#1 | 右#1 | 左#2 | 右#2 | 左#3 | 右#3 | 左#4 | 右#4 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| クランク角 | 0° | 360+90° | 270° | 630+90° | 90° | 450+90° | 180° | 540+90° |
| 爆発順序(例) | 1 | 5 | 3 | 7 | 2 | 6 | 4 | 8 |
次の表は直 3 エンジンを裏返しに合体させたような想像上の V6 エンジン を示す。
| 左#1 | 右#1 | 左#2 | 右#2 | 左#3 | 右#3 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| クランク角 | 0° | 420+60° | 240° | 540+60° | 120° | 300+60° |
| 爆発順序(例) | 1 | 5 | 3 | 6 | 2 | 4 |
直 4 エンジンが飛び抜けて悪く、単気筒エンジンに近いことが分かる。 残存している 2 次のモードを打ち消すために考えられたのが 「サイレントシャフト」と呼ばれる、クランクの倍速で廻る 二本の不平衡シャフトである。 互いに反対方向に回転することで y 軸方向の不平衡力は打ち消し、 z 軸方向の不平衡力を 2 次モードの打ち消しに使う。 2 次のモードが消えれば 4 次のモードは 1/64 であるから効果は大きいが、 倍速で廻るから、摩擦損失が小さいという 4 気筒エンジンの利点の 一つは多少損なわれる。
V6 エンジンの配置は、左右のバンクによる振動が互いに打ち消し合うように なっていないため、振動の特性は直3 エンジンと本質的に同じである。
| 配列 | cosθ | cos 2θ | cos 4θ | cos 6θ | 不平衡力比* |
|---|---|---|---|---|---|
| 単 | F | Fρ | F q4 | F q6 | 1.25 |
| 直3 | 0 | 0 | 0 | 3F q6 | 2.0e-4 |
| 直4 | 0 | 4Fρ | 4F q4 | 4F q6 | 1.0 |
| 直5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1.0e-7 |
| 直6 | 0 | 0 | 0 | 6F q6 | 4.0e-4 |
| 60°V6 | 0 | 0 | 0 | (3/2)sqrt(3) F q6 | 1.8e-4 |
| 90°V8 | 0 | 0 | -4sqrt(2) F q4 | 0 | 2.2e-2 |
直 5 エンジンや V6 エンジンは、他のモードではむしろ直 6 や V8 より優れているが、このモードが残存していることが難点と言える。
| 配列 | 1 次 | 2 次 | 4 次 | 6 次 | 比* |
|---|---|---|---|---|---|
| 単 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 直3 | sqrt(3)M cos(θ-π/6) | sqrt(3)Mρcos(2θ+π/6) | sqrt(3)M q4 cos(4θ-π/6) | 0 | 1.79 |
| 直4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 直5 | 0.45M cos(θ-3π/10) | 5.0Mρcos(2θ-π/10) | 0.45M q4 cos(4θ+3π/10) | 0.45M q6 cos(6θ-3π/10) | 1.69 |
| 直6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 60°V6 | 3M cos(θ-π/6) | 3Mρcos(2θ+π/6) | 3M q4 cos(4θ-π/6) | 0 | 3.09 |
| 90°V8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
コンロッドの質量は、5.1/5.2 のモードに寄与する往復質量より ずっと小さいため、このモードによる振動は比較的小さい。 また、z 軸まわり回転のモードは、参考文献にも記載がない。 発生するシリンダ配置が 5.2 の y 軸まわりの回転のモードと 同じであり、それより遥かに小さいことから、独立に考慮しない のであろうか。
| 配列 | Q sinθ | Q sin 3θ | Q sin 5θ | 不平衡力比* |
|---|---|---|---|---|
| 単 | ρ | p3 | p5 | 1.0 |
| 直3 | 0 | 3 p3 | 0 | 1.8e-2 |
| 直4 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 直5 | 0 | 0 | 5 p5 | 5.7e-4 |
| 直6 | 0 | 6 p3 | 0 | 3.5e-2 |
| 60°V6 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 90°V8 | 0 | 0 | 0 | 0 |
従って今後のミドルクラスは、直5 と V6 が主流になる。 どちらも縦、横置き前輪駆動のどちらも可能であるが、 本研究の結論として、バランスにおいては大差ないことが分かった。
効率、ドライバビリティ、静粛性からいっても、ロングストロークの 低回転型エンジンへ回帰する気運が熟してきた。 最初っから分かり切っていたことではあるが、制約のなかでベストを 尽くすというリミットデザイン好みと商品性がエンジンのあり方を ねじ曲げて来たのだ。 これからはシンプルな多気筒エンジンか、VOLVOやVWのようにトルクブースタ としてターボを付けた小排気量エンジンに行くだろう。
そこで、横置き用に全長を短縮した直6 エンジンを考えてみよう。 ボア 69mm ストローク 106mm とするとシリンダあたり 396cc になるから、 5 気筒 2l 版をブルーバードに、6 気筒 2.4l 版をセフィーロベースの 次期ローレルに積もう。 リッター当り 60馬力以下に押え、最大トルクを 2500rpm で、 最高出力を 4500 rpm で発揮することにしよう。