間違いだけのセダン選び

1998 年 11 月 7 日作成
1999 年 2 月 10 日リンク追加

1. 概論

RV ブームもいずれ正気に返るであろう. あれはカリーナ ED などペチャンコの車をもてはやした反動で, 歴史的には一段階成長したといってもいいが, 中道から外れていることに変わりはない. 実用性,運動性,経済性のいずれをとっても, セダン・ハッチバック・ワゴンを含む実用的な前輪駆動乗用車が 本道であることは動かない. そこでこの企画.

2. 条件

まず,現代のセダンの満たすべき条件を挙げよう。

2.1 前輪駆動であること

前輪駆動の利点は,まず機能性.

(1) ドライブシャフトの分軽量になる,
同クラスでサイズもほぼ同じの Audi A4 1.8 と Mercedes Benz C200 を比べると,

Audi A4 1.8 MB C200
駆動方式FWDRWD
全長44954525
全幅17351720
全高14101420
ホイルベース26252690
エンジンL4 1.8lL4 2.0l
重量1280kg1360kg
10.15モード10.6km/l9.7km/l

であり、重量燃費とも A4 の方が有利であることが分かる.

(2) 室内,トランクが広くとれること.

が挙げられる.これらは後輪駆動車より本質的に効率が 優れていることを示している.
更に,運動性にも利点があることを確認しておきたい.

(3) 悪天候,悪路での安定性,

晴天時の直進性だけでいえば, 後輪駆動車でも遜色ない水準にすることはできる. しかし,雨天,凍結した路面など,状態が悪いときに前輪駆動車の 進路はとても安定している. 前輪駆動に慣れてから,後輪駆動車に乗るとちょっと路面が濡れても 恐く感じ,悪条件時のスタビリティでは大差がつく.

(4) 駆動力が掛かりやすい,

前輪駆動車は重いエンジンの加重が掛かった前輪を駆動するから, 空転しにくい. 後輪駆動のハイパワー車には,フェラーリ F550 マラネロから, マスタング GT まで,トラクションの問題が宿命的に付きまとう. 後輪に加重を掛けるため,バッテリーをトランクに移したり, トランスミッションを後ろに持ってくるトランスアクスルなど, シリアスな後輪駆動ハイパワー車は相当苦労している. BMW なども 50:50 の重量分布を実現するため, ホイルベースとエンジン,客室の配置には相当工夫しているようだ. 前輪駆動車は,本田のフロントミドシップのようなトリッキーなことを しない限り,トラクションには有利である.

2.2 全高 1400 mm 以上であること.

ひざを抱え込まない自然な着座位置のために必要.

2.3 ボディがしっかりしていること

車体の剛性感はもちろん,ドアガラスがサッシ付きで あることも条件である.

2.4 できれば 5 気筒以上であること

僕も確信はないのだが,考えているのはこういうことである. 別項に書いた通り, 4 気筒エンジンの不釣合力は無視できない. 新車の頃はエンジンマウントが振動を吸収してくれるが, 車齢が進んで大体 7,8 年以降はその作用を失う. しかし,古くなった車のエンジンマウント交換に費用を 費やすのは,買い替えと比べてなかなか決断が難しい. 結局,マウントを頼りにせず,エンジン自体の振動が 少ない方が車に長く乗れる可能性がある. 4 気筒ならばバランスシャフト付きを評価したい.

走行安定性,駆動力に関しては四輪駆動の方が優れているが、 コスト、重量等の負担があるから二輪駆動とは同列には論じられない.

3. このへんでどう?

3.1 AUDI A4 2.4

日本で扱いやすいサイズ,ボディ・内装の作りの良さ, 操縦性と乗り心地の良さなど,筆頭に挙げるにふさわしいのは やはり A4 であろう。 かなり乗り心地は軟らかいのに,呆気なくコーナーを抜けて乱れない足回りは, デビュー当時前輪駆動車の新しい基準として絶賛されたものだ.

Audi はこれまで Mercedes Benz (Mercedes Clysler)や BMW より格下の扱いで あった.しかし,MB はかなりコストダウンが進行して, これからの MC はかつて MB とは別物になりそうだし、 BMW は技術的保守性が目立ちデザインのアクもきつくなってきたことから, これからは Audi が最前列にでてもおかしくない.

V6 2.4 のほうを押すのは,フォルクスワーゲン車 2 台の体験による. 8 年くらいで VW のエンジンマウントは作用を失うが、 もともと騒音対策の弱い VW では,その後の常用速度は エンジンの回転数 3000rpm 程度が限度となる. 3 速の 1000rpm あたりの車速が 27km/h だった初代ゴルフ 3AT では、 85km/h,同 31km/h だったゴルフII では 90-95km/h が実用限度に なる.A4 1.8 は 4AT であるが,最終減速比は低く,4 速でも 1000rpm あたり 35km/h 程度でしかない. これは 3AT のゴルフ II より 10% しか速くない値である. その点 2.4 の方は最終減速比がずっと高いので高速巡行に向いている.

3.2 VOLVO S70/V70

Volvo S70 samnail 伊勢湾フェリーを待つ 1997 S70, Jan/04/'99.Nikon F601 35-105mm f3.5-4.5.
もともと Audi 車は VW に比べて前席重視で後席はそれほど広くない. もう一回り広い車なら,Volvo の 70 系である. また,皮張りシートの選択肢が広いことも Audi と異なる.

エンジンは,足回りとのバランスからいって 2.5 10V で十分だが, 自然吸気エンジンのトルクは車重に対し並なので, 速い流れに乗るには実用車的に回す必要がある. トルクで押し出される高級車風の走りを望むなら, ライトプレッシャーターボを選んでもよい.

操縦性と乗り心地は,Audi 程ではなく、 A4 と違って前輪駆動の「くせ」はかなり明確に残っている. ネガティブオフセットジオメトリの特徴である,大舵角で復元力が なくなり,かえって勝手に切れ込んでいく性質は,古い世代の 前輪駆動車のものである. 偏平タイヤを履いてはいてもアンダーステアは明確で 飛ばすには向かないし,高速で矢のように直進もしない.

しかし足回りで一つだけ傑出しているところがある. それはとても二輪駆動とは思えない,雨天や雪道など低 μ 路での 異常なスタビリティーの良さである. 雪の残る富士スカイラインの登りコーナーを約 60km/h で何気なく クリアしたとき,ふっと脇を見るとジムニーが路肩に突っ込んでスタック していて驚いた. やはり北欧の車というべきか.

3.3 Cadellac De Ville Concourse

さらに広々した車がよければ,キャデラック・デ・ヴィルにとどめを刺す. GM / FORD のアメリカ二大ブランドが何といっても偉いところは, V8 エンジンを積む大型前輪駆動プラットフォームをどんどん 量産していることである. これを実用車のメカニズムを流用しているととるのは誤解であり, FWD のスタビリティの高さを得るため積極的に採用しているのだ. デ・ヴィル・コンコースもその一つで,全長 5.4m の残り少ない フルサイズカーの一つだ. コラムシフト 6 人乗りの車内は,セヴィルより明らかに広く, ボクシーなデザインも実に魅力的である. 日本のどこで乗るのか,という気もするが,全長 5.6m の シボレーのトラックで毎日通勤する人もいるし,製造終了した シボレー・カプリスに人気がでていたりするので,大丈夫なのだろう. 燃費は国産高級車と比べて悪くない.

3.4 TOYOTA Vista

1998 年に出たトヨタの新型車ではプログレ,アルテッツアの RWD 車が話題で, 一部では後輪駆動車の復権だと騒ぐ向きもあるようだが, 僕はビスタにもっとも衝撃を受けた. ポイントはやはり 1515mm という全高であり, 1970 年代以降普通の三ボックスセダンが 1500mm を越える 全高を持ったことは世界的にも絶無だと思う. 1973 年にゴルフが高い着座姿勢で居住空間を稼いだと発想の転換を 称賛されたときも全高は「たった」 1410mm でしかなかったのだ. 国内では多少話題になっても,車の世界史には何の痕跡も残さない 日本の乗用車が多い中で,ビスタは初代ゴルフなみの意義を もった車といって良い.

居住空間だけ考えたらナディアやスパシオのような小形 1 ボックスの 方が魅力的に見えるかも知れないが,成り立ちがセダンである車と RV の操縦性はやはり違う.RV は常に限界を意識させられる運転になり, セダンと同列には扱えない. 重量や旋回半径でもビスタの方が有利である. 唯一の難は,格好が悪いこと.といっても背高のプロポーションは 美点であるからもちろんそのことではない. フロントはまだ我慢するにしても,テールのデザインがひど過ぎる.

僕は,マークII 三兄弟は近い将来前輪駆動になると睨んでいる. 前回のモデルチェンジで現路線が煮詰まって手詰りなことは明白になったし, クオリスはパイロットモデルの役割ももっているのではないか? それにしても,クルーというヒントを持ちながらそれを生かせ なかった日産は…


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