時系列的改善ってなんですか?

11/Jan/2006
K. Shida

1. はじめに

歳うつり星かわり,1/2 型 150 万画素機や, 1/1.8 型 200 万画素機が店頭から消えてもはや久しい. 1/1.8 型CCDは2001年に300万画素と400万画素, 2003年に500万画素,2004年に700万画素,2005年に800万画素 となり近い将来には1000万画素に達するという人もいる. さて,画素数が増えて本当に画質が良くなったのだろうか. たまたま同じメーカーの同じサイズのCCDを装備するデジタルカメラを 何世代も使ってきたので,「時系列的改善」とやらを検証してみよう. 高画素化によって特に不利になると思われる夜景をテーマにする.

2. 300万画素機

はじめはキヤノンの PowerShot S30である.いつもの場所で撮ってみる (写真1). レンズは35mm相当,F2.8, 1/8秒,ISO400の設定でホワイトバランスはオート である. もっと古い機種の写真と比べてみると, SX-550と傾向が似ている. SX-550は1/2インチ150万画素機で画素ピッチは4.7μm, S30においては1/1.8インチ400万画素で3.45μmだから画素あたりの面積は 半分程度になるのだが,夜景は同程度に写ることが分かる. ただホワイトバランスが取りきれておらず緑かぶりしている.

S30は同じボディを持つ400万画素機 PowerShot S40 と兄弟モデルとして,2001年6月に発売された. ズームレンズはどちらも同じ35mm〜105mm F2.8〜F4.9である. S40よりも1画素が大きく,ISO800まで設定できるということで 一部で人気のあったモデルである. SX-550からの交換では,開放F値が2.4から2.8になったこともあり 夜景には多少弱くなった印象があった. 発売以来4年半たった現在から見ると,ホワイトバランスが 黄色みがかっていたり解像力もあまりないなど, 古さを感じさせる.

図1:Canon PowerShot S30 (9/Nov/2001)

3. 400万画素機

2台目はキヤノンの PowerShot S45である. 場所は岡山県倉敷市内(写真2). レンズは35mm相当,F2.8, 1/6秒,ISO400の設定でホワイトバランスはオートである. 1600x1200ドットで撮影し640x480に縮小した. S45はS40を改良した400万画素機であり,2002年10月10日に発売された. 画素ピッチは3.1μmである. CCDは同年11月30日発売の PowerShot G3と同じものである. この世代から映像エンジンLSIがDIGICと呼ばれるようになった. S35は存在しないので,S40/S30の後継機がS45に集約されたといえる. G3はGシリーズのなかでも傑作といわれており,S45,IXY450とともに このCCDを使った400万画素機は評価が高い. 画像としてはS30と比べて寒色系の絵柄になる傾向がある. ISO800の設定がなくなり最高400までになるなど, さらに夜景には不利になったように思われるが, 昼間の撮影では解像力はS30より上がっている.

S30とS45の写真の比較は,場所が違うためむずかしいが, S45のほうが緑かぶりが少なくホワイトバランスが良くなって いるように見える.

図2:Canon PowerShot S45 (19/Sep/2003)

4. 500万画素機

キヤノンの PowerShot S60である(写真3). S60は2004年6月18日に発売された1/1.8型500万画素機である. 画素ピッチは2.7μm. 撮影時レンズは28mm相当,F2.8, 1/8秒,ISO400の設定で ホワイトバランスはオートである. 2592x1944ドットで撮影し640x480に縮小した.

S45の後継機種は2003年3月20日に発売された PowerShot S50で, S45と同じボディでCCDだけ500万画素にのせかえたモデルである. S50は,ラチチュードが狭く,カラーノイズが目立つなど微小画素の害が 露になったモデルといわれている. S45と同一被写体で比べてみると,S45では見えている細かい模様が, 画素の多いS50だとむしろ潰れてしまう場合がある. ノイズリダクションを強めたことで情報量まで少なくなってしまった というのだ. (詳しくはソフトバンク・パブリッシング刊DIGITAL PHOTO専科2003年6月号 付録CDのSCENE_02フォルダに納められた神社のサンプル画像で比べてほしい. 左右の狛犬の台座の石目に注目.)

S60はS50と同じ500万画素ながら,より薄いボディと28mm〜100mm F2.8〜5.3という 広角ズームレンズを与えられたモデルである. Digital Photo Reviewサイトのテストで S50S60の チャート撮影画像をくらべると、 新しい広角ズームレンズはS45の35mm〜105mmズームにくらべて, 解像力が高く文字がシャープになっている. CCDがS50と同じものかは不明であるが,解像度はS45よりランク上で S50よりも優れているようである.

写真3を撮ったのは雨のあがった直後なので,路面も建物も濡れて 反射が強くなっている. その分を差し引いても,S45と比べて色調はぐっと自然になり, 背景の集合住宅のあかりもぐっと細かく写っている. VGAに縮小されているにも関わらず違いが分かる. S30と同一露出で同等以上の明るさで写っており, 夜景を写す性能は落ちていないどころか,むしろ優れているといえる.

図3:Canon PowerShot S60 (10/Jan/2006)

5. 700万画素機

キヤノンの700万画素機 PowerShot G6である(写真4). G6は35mm〜140mm,F2.0〜F3.0の明るいレンズを搭載している. 画素ピッチはわずか2.3μmまで縮小した. 発売は2004年9月17日で,S60のCCDを700万画素に載せかえた PowerShot S70と同時であった.

G6についての PC Watchのレビューをみると,「高画質で美しいプリントが得られる」と 評価が高く300〜400万画素級より優れているという好意的な書き方である. しかし欠点として,細かな模様の描写が破綻する場合があり,700万画素を もちながら,300万画素,あるいは200万画素まで落としても鮮明さが 変わらないという. また,パープルフリンジも目立つようで,CCDにレンズが追いついていない のではないかという疑問を提出している.

写真4では,露出は同じに保ちながら開放F値が一絞り明るく, その分シャッター速度が速くなっている. レンズは35mm相当,F2.0, 1/15秒,ISO400の設定でホワイトバランスは オートで撮影した. 3072x2304ドットで撮影し640x480に縮小した. 画像をみると,明るさはS60と同程度を確保しておりフレアも小さい. しかし遠景の集合住宅のあかりにはパープルフリンジが盛大に出ており, 色のノリもあまりよくない. 夜空の黒さの締まりは他機種より悪くグレーに見える. 縮小するとよく分からないが,元画像でみるとノイズはS60と 同程度はあるように見える. この辺は感度を下げてたっぷり露出すれば間が変わってくるのだろうが, ISO400で撮る夜景に関してはS60と比べて良いとはいいにくいようだ.

図4:Canon PowerShot G6 (12/Jan/2006)

6. 比較と結論

まずパープルフリンジをS60とG6で比べてみよう. どちらも2592x1944ドットで撮影した画像をトリミングしている. G6のほうが拡大されているのは,画角(28mm対35mm)の違いである. また,絞りがF2.8対F2とG6のほうが明るいので, パープルフリンジが出やすくなりG6不利とはいえる. しかし,F2.8に絞って比べればG6の明るいレンズの価値を失わせることになるから, やはり開放同士で比較してよいと考える.
S60G6

次にカラーノイズをS60とG6で比べてみよう. どれもISO400で同じ街灯を撮っている. カラーノイズはすべてに認められるものの,G6有利の判定であろう.
S60(2592x1944)G6(3072x2304)G6(2592x1944)

夜景については,S30,S45,S60については確かに新しい方が総合的な 画質は向上している.CCDのサイズは同じであるが,新しい方が全情報量は 増えているといえる.まさに時系列的改善である. しかしライターの文月凉氏が実験しているように, ドットごとの情報量は低下しているのかもしれない. 700万画素機は500万画素機よりあらゆる点で優れている, と結論付けるのはまだ早そうだ..

今回改めて感じたのは,コンパクト・デジカメは手ぶれしにくい, ということである.ここに挙げた画像はすべて手持ちで撮影したが, 1/6秒,1/8秒といったスローシャッターで,ドット単位でみても あまりぶれていない画像が取れるというのは,成功率100%では ないものの驚異的である. フィルム一眼レフの常識でいったらこの3倍から4倍の速度, 1/30秒くらいが限界であり,M型ライカのようにミラーショック のないものでもその半分の1/15秒がいいところだろう.


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