デジカメ感度の正直な法則.

 

2007 年 11 月 18 日

K. Shida

1.はじめに

2006年型1000万画素コンパクトデジタルカメラであるCanon IXY digital 1000を使っていると,感度を上げたときの画質はもはや限界と感じる.2007年型の1200万画素機のサンプル画像を見ると,基本感度でもシャドウ部がざらついている.これじゃしかたないっぺ.ちょっと古めで画素数の少ないカメラを改めて検討してみよう.

今回用意したのはCanonの500万画素機二台と1000万画素機である(表1).それぞれの特徴を述べる.Digital IXUSとは聞きなれないが,ブルガリア仕様のPowerShot SD20である.日本語画面表示も可能で名前以外はまったく同じである.鉛筆の頭よりちっぽけなレンズでよく写ると一部で評判らしい.単焦点のためレンズ設計はズームレンズより有利である.

 

1 仕様の概要

機種

digital IXUS i5

PowerShot A610

IXY digital 1000

画素数

2592x1944 500万画素

2592x1944 500万画素

3648x2736

CCD

1/2.5型

1/1.8型

1/1.8型

画像プロセサ

DIGIC

DIGIC II

DIGIC III

レンズ

6.4mm F2.8

7.3-29.2mm F1:2.8-4.1

7.7-23.1mm F1:2.8-4.9

発売日

21/Sep/2004

22/Aug/2005

14/Sep/2006

 

 二台目は710万画素のA620と同時に発売されながら,わずか2ヶ月間しか売られなかったというA610である.2003年に発売されたPowerShot S50 や G3 などの500万画素機はソニー製のICX452 CCD(推定)を搭載していたがノイズが多く評価は低かった.しかしこのA610が積んでいるのはICX455 と思われる改良型で,さらに1/1.8型500万画素機として唯一DIGIC IIを搭載しているため画質がよくなっていると期待される.

 

2.IXUS i5 vs A610

 2007年の東京モーターショー会場にて.

 

図1. IXUS i5 フルサイズで撮影したものを800x600に縮小した.ISO50, F2.8, 1/40秒.

 

図2. A610 フルサイズで撮影したものを800x600に縮小した.ISO50, F2.8, 1/60秒.

 

A610が35mmフィルム換算で広角端35mm相当,i5が39mmなのでi5の方がわずかに拡大されていることを除けば写りはよく似ている.しかし2点違いがある.まず露出時間がi5で1/40秒に対しA610では1/60秒と短い.つまりA610の方が1.5倍感度が高いのである.ソニーの公表しているCCDのスペックを見るとi5に使われていると思われる ICX495は画素ピッチが2.2μmでG信号感度は150mVであり,A610のICX455は2.78μmで235mVであるから画素の面積比は1.6倍,G信号感度は1.57倍であり,露出1.5倍と符合しているではないか.デジタルカメラではISO表示感度は目安に過ぎず,モデルによって違うことがわかる.

第2の違いはパープルフリンジである.図3のIXUS i5では光源を反射して光っている部分の右下に紫色の影が見えるが図4のA610のほうには認められない.この点でもA610が勝っている.また出来上がりには現れない違いとして,A610のほうが動作が速くてスムーズに撮影できる.A610の方が11ヵ月後に発売されているのだから改良されていて当然ともいえるが,買値はi5の方が高かった.

 

図3.IXUS i5の図1と同じ写真を等倍のままトリミングした.

 

図4.A610の図2と同じ写真を等倍のままトリミングした.

 

3.A610 vs IXY digital 1000

2007年 BMW Hydrogen 7 お披露目会にて.

 

図5. A610 フルサイズで撮ったものを 800x600 に縮小した.ISO50, F4, 1/250秒.

 

図6. IXY 1000 フルサイズで撮ったものを 800x600 に縮小した.ISO80, F2.8, 1/400秒.

 

図5と図6はおおむね似通ったうつりになっていると思うが,ここでも露出が問題である.EV値に直すとA610 は EV12,IXY 1000 は EV11と2/3 である.IXY 1000 の方が基本感度の表示が 2/3 高いにも関わらず露出は 1/3 多い.つまり A610 の方が実効感度は2倍高いのである. IXY 1000 の ISO80 を基準にすると A610 のISO50 は実は ISO100 相当ということになる! A610はISO400までで800以上の高感度モードはないが,実質的にISO800の感度があり,しかも画質では有利である.ではピクセル等倍で見てみよう.

 

図7.A610 フルサイズ画像を480x320 にトリミングした.

 

図8.IXY digital 1000 フルサイズ画像を480x320 にトリミングした.

 

缶飲料やチラシの写真に注目すると, 500万画素と1000万画素では確かに画素数の多い IXY 1000 の方が情報量は多い.その違いは画素数でいえば2倍であり,単純に考えれば画素面積は半分になっているから,露出を2倍にすれば画素あたりに蓄積される光量は同じになる.つまりこの3機種について,

「同じ結果を得るためには,画素あたりの光量は一定である」,

という法則がなりたつ.