古いオーディオコンポ買い換えるより再生して使う


18/May/2004 作成
02/Jun/2004 追加
K. Shida

1. レシーバ故障!

たいへんである. 自室で使っていたオーディオレシーバが故障である. レシーバとはプリメインアンプとFM/AMチューナを一体にしたものをいう. 右チャンネルがごく小さい音しか出ない. しばらく就眠時に極小音量でしか使っていなかったので 気が付くのが遅れた. ふたを開けてみると,基盤の一部が焼けて変色している(写真1). そこにある抵抗とダイオードが異常発熱したものと思われる. 周囲の素子が劣化して電流のバランスが崩れたのだろう. 基盤までやられていては自分ではどうにもならない. このレシーバ(Nakamichi Receiver 2)は1991年製だから とっくに買い替え時期なのだが,かつてのナカミチブランドの輝きを知るもの としては捨てがたく,とにかくメーカに送って修理見積もりを取ることにした.

Burned Main Board of Nakamichi Recever 2 写真1

代わりに出してきたのが1996年製のAVレシーバである. AVレシーバとは,サラウンドに対応しているオーディオレシーバをいう. このAVレシーバ(harman/kardon HR25II)はUS仕様なのでラジオの周波数が違い, 日本ではアンプとしてしか使えない. FMチューナはヤフーオークションで 4,200円で落とした(写真2). この Kenwood KT-7020 というチューナ, 届いてみたら偶然にもナカミチと同年代の1990年製であった.

The photo of the three audio components
写真2:上からCDプレーヤ,FMチューナ,AVレシーバ.

2. 音が…

久しぶりに普通の音量でFMを聞いてみるが,どうもはかばかしくない. 周波数レンジが狭い感じで金属的な響きもする. CDも聞いてみる.プレーヤは Nakamichi CDPlayer 3 という故障したレシーバと ペアのものである.やはり不満がある. ではアンプか?ハーマン/カードンは比較的新しいし重さもずっしりして ナカミチよりは格上の感じだ. ヘッドフォンを出してきて,CDプレーヤにさしたときとアンプにさしたときを 比べてみるが差は感じられない.ではアンプではない.

とすると,FMチューナ,CDプレーヤとも経年劣化で音が悪くなったのだ. アンプがよくなったので,相対的に目立つようになったのだろう. せっかくオークションで落としたFMチューナが音悪くて使えませんでした では笑えない. はっきりした故障ではないのでメーカー修理もしてくれないだろう. 新品買えばよかったじゃないかという意見には一理あるが, 今日では高級FMチューナは絶滅種に指定されている. KT-7020 がほぼ最後の世代なのである. 何とかしなくてはならない. それには出力コンデンサを取り替える手だ.

3. 電解コンデンサの寿命

オーディオ製品に使われている部品には, 磁気ヘッドのようにはっきり交換寿命が設定されているものもあるが, そうでないものの中にも寿命がある部品がある. 中古オーディオ屋の店員さんによると,一つはフロントパネルの蛍光管の 光量低下だというが,僕はまだ経験がない. これはメーカに補修部品がなくなったら終わりである. もう一つはアルミ電解コンデンサであろう. コンデンサは一時的に電荷を蓄える部品であり,抵抗,コイルと並んで 電子回路の基本素子の一つである. コンデンサにはさまざまな種類があるが, アルミ電解コンデンサは2本足の生えた筒の形をしており, 表面はシュリンクラップされている. 中は黒いどろどろした電解液が入っており,これが劣化しやすいのである.

アルミ電解コンデンサは低価格で大容量のものが得られるため, オーディオ製品の至るところで使われている. しかし欠点も多い.他のコンデンサに比べて損失が大きく, 周波数特性が悪くて数十kHz以上の高周波には使えない. 標準的なアルミ電解コンデンサの寿命は摂氏85度で5000時間である. (容量が半分になるまでの時間.) 寿命は10度温度が上がると半分になるといわれているので,75度なら10000時間, 65度なら20000時間になる.ちなみに一年は8766時間である. 電源やパワーアンプ周りは結構熱くなるから,コンデンサの寿命が製品の ライフタイムになることは理解されると思う. 長時間高負荷で使うと,内圧が上昇し, 最悪破裂して中の電解液が飛び散ることもあるシロモノである.

脱線するが,パーソナルコンピュータのCPUで初期の Athlon (Slot A または Thunderbird)のマザーボードは電源部の 電解コンデンサ破裂が多かった. Slot A マザーは 8ヶ月から長くて一年半でだめになるので, 何台か使っていた研究室では,常に予備マザーを準備し, マザーボードを消費しつつ稼動するという感じだった. 実際 Abit のマザーボードでは筒の底から電解液を噴射してコンデンサが 「離陸」したし(その型のマザーは後日無料修理になった), MSI のマザーボードに 1GHz Thunderbird の組み合わせでコンデンサが破裂し, 電解液をPCケース内に撒き散らしたのも見た. 当時 30A 超の電流を流すCPUが他になかったため,マザーボード メーカが経験不足だったのだろう. 今にいたる「AMDは信頼性でintelに劣る」という神話の一つの原因になっている ように思う. AMDの名誉のためにいっておくと,僕の経験ではAMDのCPUが正常な使い方で 破損したりエラーを出したことは一回もない. すべてマザーボードのトラブルであり,CPUは生き残った. また今日では Athlon よりもむしろ Pentium4 の方が消費電力が大きいものが多い.

アルミ電解コンデンサより優れたコンデンサとしてタンタル電解コンデンサがあり, PCの基盤などデジタル機器で多用されている. アルミに比べてタンタルは損失が小さく,高周波数(〜数百KHz)まで使え, 耐熱性も高い(〜摂氏125度)ということで 1μFから100μFの間の容量でアルミ電解を置き換えるのにちょうどいい. タンタル電解コンデンサは秋葉原のラジオデパートなどで買える. アルミ電解より数倍高いが,それでも一個買いで数十円から二百円くらいである. 自分用に数個買うくらいならおこずかいで充分. かならず,壊れてもともとの古いコンポで試すこと.

Electric Condensers
写真3:上が外したアルミ電解コンデンサ, 下が新しく取り付けたタンタル電解コンデンサ.

4. FMチューナの場合

注意:

  1. 基盤に半田ごてを入れるなどの改造によって,メーカ保証は無効となります. 改造に失敗する可能性も高いです. 改造によって,あるいは改造後に故障した場合メーカ修理が 受けられない場合もあります.
  2. 機器に手を入れる際は,かならず電源コードなどすべての配線を外してから 行なってください.

上ブタを外してみる. フロントエンド,検波,マルチプレックスなど,機能ブロックごとに基盤が 仕切られていて部品も整然と配置されている. 出力コンデンサはライン出力端子のすぐ右側に二つ並んでいた. これは,直流電圧を出力端子に出さないために音声回路の最後に 挿入されているコンデンサで,電源系ではない音声信号が通過する という意味でもっとも音質に影響するコンデンサである. これさえ交換できれば目標の80%は達成できたといってよい. 昔オンキョーの Integra 429R という チューナーの電解コンデンサを目に付く限り片っ端から交換したことがあるが, その割には音質には効果がなかった. ちなみに 429R は OCL (Output Condenser Less) すなわち出力コンデンサを もたない回路構成だった. コンデンサには 35V 10μF という定格と端子の極性が記載されている. これと同じ定格のタンタル電解コンデンサを買ってこよう.

次にプリント基盤の配線側を露出しよう. 1980 年代までのコンポだと基盤がフレームに固定されていたので, 底ブタのネジを外せば配線側が露出できたのであるが, このチューナは基盤が底板に固定されている. 部品レベルでの交換修理を考えなくなったためであろう. ネジを外したが,トランスから来る電源線は外れないし, 上にあるサブ基盤が邪魔で基盤がうまくひっくる返せない. すこし持ち上げて隙間ができるだけである. 幸いなことに出力コンデンサは基盤の縁近くにあり, 隙間でもアクセスできそうである. 半田ごてを暖め,まず極性を確認しながら古いコンデンサ二つを基盤から外す. 次に同定格のタンタルコンデンサの足を穴にあてがい, 半田ごてで基盤の穴を軽く暖めるとスポッとはいる. 最後に足と基盤をはんだ付けし足を短く切っておしまいである. ついでに右側の二つの電解コンデンサ(同定格)も交換しておこう. 基盤を元に戻して固定する.

The main board of Kenwood KT-7020
写真4:チューナの基盤(換装後).

出力コンデンサの手前にある黒い箱は,19kHz のパイロット信号を カットするためのフィルターを構成する可変コイルらしい. ついでにこいつも調整しておこう. アンテナをつないで電源を入れ,オシロスコープで出力波形を確認しながら, パイロット信号の漏れがもっとも少なくなるようコイルのネジを調整する. 今度は鳴らしてみる. 周波数レンジが広がった感じで,金属的な響きもとれた. これなら当分使えそうである.

5. CDPlayer の場合

ケースを外してみる. 左側にドライブ,右側に主基盤という配置で, 主基盤は整然としているがケンウッドのようなシルク印刷表示はない(写真5). 基盤左上は電源部で,ほかの回路は四つのLSIを中心として構成されている. 手前の二つは Nakamichi マークのLSIで, そばからケーブルがFLディスプレイの方へ向かっているから, 表示をつかさどっているのではないか. 基盤左側の一番メカ寄りにはサーボアンプと思われるパワートランジスタが 一列に並んでいて,その右側には SONY 製のLSIがある. これはメカのサーボ制御を司っているのだろうか. 右上のBB(バーブラウン)のマークがあるLSIはD/Aコンバータに違いない.

Nakamichi CDP3
写真5:CDプレーヤの内部(換装後).

このCDプレーヤは昨年(2003年8月)一度メーカ修理を受けており, ゴムベルトなどとともに,SONY 製 LSI とその近くにある 50V0.47μF コンデンサを交換している. 機齢を考えると次の修理はないだろうから,思い切っていじってしまおう.

写真では分かりづらいが,何個所かアルミ電解コンデンサに 磁器コンデンサが並列に添えられているところがある. これはデジタル回路の電源線で,負荷に近いところでの 電源インピーダンス低下(低周波)とデジタルノイズ吸収(高周波)の 両方を狙ったもの. 磁器コンデンサは小容量だがもっとも高周波特性の優れたトランジスタで, 小さな二枚貝のような形をしている.ラジオなどによく使われる. 同世代で定価 39,800円だった DENON DCD-830 ではこのような配慮は なされていなかったから,こちらのほうが一クラス上なのだろう. そういうところは手を加える必要はない.

音質に直接影響するのはDAコンバータより後ろだと思われるから, 出力段のアルミ電解コンデンサ2つ(35V10μF)とその左の一個, それからD/Aコンバータの足に接続されている8つの50V4.7μFを 交換する.写真6でいえば涙滴型のが交換したもの, 角張っているのは元からのものである. その他サーボ系で容量が合うもの2,3個を加え合計十数個のコンデンサ 交換して作業終了した. 鳴らしてみるとFMチューナよりさらによく, CDプレーヤは周波数レンジがFMチューナより広くノイズも少ないという 当たり前のことがきちんと実現された感じである.

Nakamichi CDP3
写真6:CDプレーヤのD/Aコンバータと出力段(換装後).

6. まとめ

電源部には平滑用に大きな電解コンデンサが使われている. こういう大容量なものはタンタルにできないが, 十年も経っていると同じ大きさでより大容量なものができているから, そういうのに換装して電源部を強化したくなる. しかし,以前に LUXKIT の A802II というアンプをいじった経験からすると, 平滑コンデンサ強化はあまり音に影響しないようだ. 理由を考えてみると,パワーアンプなら普段は定格出力よりうんと 小さい音量で鳴らすからであろう. 音源系のコンポなら,平滑コンデンサの後に三端子レギュレータが入って リップルを強力に削り取ってしまうからに違いない. 一方,電源の高速化という観点からすると,電源部から負荷までは細く長い プリント配線で引きまわさているから,平滑コンデンサよりも配線抵抗のほうが 支配的となる.よって,CDプレーヤのところで述べたように, 負荷となるLSIなどの近くに中容量の高品質コンデンサを配置して 負荷変動とノイズを吸収させたほうがよいらしい.

とはいえ,今回交換しなかったコンデンサも劣化していることは確かだろう. 多少の容量変化はあまり影響しないような場所に使われているという だけのことである. 抵抗,コイルなどは焼けない限り経時変化は無視できる. 真空管は寿命があり,頭がすっかり銀色になってしまったら 新しいのと取り替えなければならない. 趣味のオーディオで真空管アンプは未だに人気があるが, 真空管アンプはトランジスタアンプより熱をもつから寿命は短い. トランジスタやLSIの劣化については僕にはよく分からないが, 定格内で使われている限り20年以上は持つと思われる. ラジオ,アンプの自作道は奥が深く,この記事はほんの入門編に過ぎない.

いずれにしても,十年以上使いっぱなしなコンポがまともな音で鳴ることはないから, 数個の素子交換で再生できれば,資源と金の節約になるだけでなく, ピュアオーディオ全盛時代の遺産の動態保存という意義もある.

おしまい.


ナカミチのレシーバが,直って帰ってきたがやっぱり音はふがふがである. 修理内容は焼けたところの抵抗四本とマスターボリューム交換のみであった. 当分ハーマンカードンの箱にしまっておくことにする. オーディオコンポの寿命問題は想像以上に深刻なようだ. HKもそろそろ劣化しているかもしれない. いろいろ検索すると,あるアンプ自作派の人は「電解コンデンサは消耗品」と ばっさりである. 何十個もはんだ付けされた消耗品もないと思うが… (2/Jun/2004)