7 胃ガンをそのままにしておいたら
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「胃ガンの初期は,全く自覚症状がないことが多い。症状が現れたときにはかなり進行していると考えてよい」という。
私の場合は,まさにその初期だ。ぶきみである。進行するとどうなるか。
胃のもたれ,吐き気,嘔吐,食欲の衰え,嗜好の変化,悪臭のあるげっぷ,貧血,食欲減退,栄養不良,倦怠感,頑固な下痢,便秘,体重の減少。
「最後の痛み」と恐れられている激痛,等々,そして死と,たいていの本に書いてある(榊原本)。
これはおそろしい。こうならないうちに,と考える。
必ず,こうなるのか。
なると断言するのは,先ほど引用した大阪府立成人病センター名誉総長の佐藤武男である。
この本も近藤誠の問題提起に対してものをいっている。近藤の主張のうち,受け止めるべきところと,そうでないところを区別して考えようというのが,本の題名になっている。
「稀ですが,がんの診断をうけても治療を拒否してそのまま放置した症例を経験することがあります。
その場合は例外無く,がんは転移によって発生した臓器から全身に広がります。つまり早期がんから進行がんになり,最後には死に至ります」
「胃がんについては大島明氏(大阪府立成人病センター調査部長)らの報告(「早期癌の自然史に関する研究」)があります。手術治療を拒否した症例についてその経過を見ると,全例,死に至っています」(『闘うがん,闘ってはいけない癌』)この点は断乎としている。
私はいま,「がんの診断をうけても治療を拒否してそのまま放置」しようとしている「稀な」症例になろうとしているのか。
「近藤誠の主張のような転移しない(進行しない)がんというものは,少なくとも私の経験と見聞の範囲では存在しない」というのである。
やはり,近藤説に猛反発している一人に,自治医科大教授の斎藤健がいる(『近藤誠の“がんもどき理論”の誤り』主婦の友社,96年)。
配偶者が買ってきた,近藤の『患者よ,がんと闘うな』(文芸春秋,96年3月初版)は,96年11月発行で20刷だった。売れてるらしい。
近藤がガン診療の批判を始めたのは87年ごろ,『文春』に書いたのが88年だという(『論争集』)。
近藤は,『がんは切ればなおるのか』(新潮社,95年)の第1章「がんをそのままにしたらどうなる」で,「現代の医療事情のもとでは,がんと診断されると,なんらかの治療がおこなわれてしまい,がんを完全にそのままにした場合にほとんどであわないから」
「正確なことはだれも知らないのです」と書いた。
その翌年に出版した『闘うな』の第5章「がんを放置したらどうなるか」で乳がんの例をあげ,「要するに,乳がんを放置しても,そうすぐには死なないわけで,これも他の臓器のがんにも適用できる結論です」と書いている。
そのあげた例が,1805年から1933年にかけて,イギリスのある病院の報告とかで,よその国のこのような古い症例しかないのか,と思っていたら,斎藤にここをつかれている。
日本全国から集めたもっときちんとしたデータがあるぞ,というのだ。1978年に『胃と腸』という雑誌に発表されたという。
「ポリープ,あるいは明らかに盛り上がった型の早期胃がん15例のうち,進行がんになったのは1例だけ。
盛り上がりの中が少し引っ込んだ型の17例の早期胃がんでは6例が1年1ヶ月から4年8ヶ月の間に進行がんになっていた。引っ込んだ型の早期胃がん51例では,25例が,1年8ヶ月から8年10ヶ月の間に進行がんになっていた。
特にがん病巣の中の引っ込みが明瞭な27例では,17例が進行がんになっていた,といい,さらに斎藤は,大阪府立成人病センターのデータとして『International Journal of Cancer』という国際的ながん研究医学雑誌に1983年に掲載されたものがある,と追い討ちをかける。
早期胃がんは,平均すると約3年で,あきらかな進行胃がんになった。
34例のうち,経過観察中に19例が死に,12例の死因がガンだった。「このようにゼロ期胃がん,早期胃がんは浸潤し,進行がんになり,致命的になるのです」と斎藤は強調する。
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