N. Y.行きNH10便にて
敵将、あっさり発見
2度目の発作
ICUの眠れない夜
お薬あれこれ
手術室へ
ビバ!サイバーパンク!!
本手術へ
3cmの忘れ物
つながった瞬間
断髪式、サラバ金髪
寝たきり生活は続く
放射線治療と
やがて訪れる退屈

退院を前に

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ビバ!サイバーパンク!!

 

 1日はさんで1月24日。いよいよマッピングの開始である。

 実はこの前日、頭の中は、大友克洋『AKIRA』の世界観一杯でワクワクすらしていた。
 「脳にな…細い、血管より細い針を刺してな食塩水を満たし、電気刺激を繰り返し与え変異を引き起こし…」というミヤコ様の台詞のような、ビバ!サイバーパンク!な期待である。何しろこちらは、脳から直接電線を生やしているのだ。


脳から生やした電線コード(クリックすると拡大します)。

 14時過ぎにビデオ検査室に移動。患者の様子を観察しながら脳波を記録するための部屋で、けいれんの模様と脳波との関連を見て原因を探る。15日、16日にもこの部屋にいて、その時は頭の外から電極をつけていたというが、まったく記憶にない。

 主治医団のトップであるY先生の指示の下、2人の技師が手慣れた様子で装置と頭を結線していく。準備が整うと検査開始だ。

 電気で刺激を与えるのかと思うと実際はその逆で、一つひとつの電極に電流を流すと、それは麻酔的効果を生むそうだ。かける電圧と部位を少しずつ変えながら、どの部位が何の機能を担っているのか確認する、という作業となる。

 だがそれは、けいれんを起こす直前で寸止めするという、黒ヒゲ危機一髪かロシアンルーレットにも例えられる、危険な検査でもあった。

 最初のうちは両手をブラブラ動かしながら電圧をかけると、右腕がピクッとする程度だった。ところがY先生が席を外し、S先生が装置の操作を任されていた時に、彼は不幸にして一発目で大きなポイントを引き当ててしまったのだ。右手が内側にキューっとねじ曲がる。「先生!」それが辛うじて声に出せた最後の言葉。


 気を失った自分の左半身は、ペイズリー柄のような、1枚の黒い薄いものに変化してフワフワと何もない空間をたゆたっていた。質量0。右半身は当然のように欠落している。それは、今まで体験したどの発作よりも奇妙で厳しいものだった。

 戻ってきたY先生が「もうちょっとやってみたいんだけど」ど言った時の正直な気持ちは「勘弁してください!」。初日の検査は、こうして切り上げられた。


ザ・ワイヤード。装置のもう一方の先は脳波計につながれており、モニタで乱れ具合を確認しながら注意深く進められる。
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