N. Y.行きNH10便にて
敵将、あっさり発見
2度目の発作
ICUの眠れない夜
お薬あれこれ
手術室へ
ビバ!サイバーパンク!!
本手術へ
3cmの忘れ物
つながった瞬間
断髪式、サラバ金髪
寝たきり生活は続く
放射線治療と
やがて訪れる退屈

退院を前に

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手術室へ

 

 1回目の手術は1月22日。電極を埋め込むための手術だ。これは、腫瘍をどこまで切除していいか判断するための、『マッピング』という検査を行うための下準備である。腫瘍は補助運動野にあるといい、うまく摘出できれば機能障害や麻痺を残さずに済む。このギリギリのラインを見極めるために、外部から電気刺激を与えて反応を見るのがマッピングだ。J大はこの点においてはパイオニアであり、適当に選んだ割には病院のチョイスは正解だったと言える。

 手術の内容を簡単に説明すると、頭の皮をコの字形に切りベロ〜ンとめくり、頭蓋骨の4辺を切って開け、脳味噌を露出させたところで電極を乗せ、電線を引っ張って外に出すというもの。電線と頭皮の隙間を埋めるために脂肪が必要で、お腹の脂肪も少々削るという。後で見てみるとその傷口は、盲腸の古傷のちょうど反対側だった。

 午前8時15分。ストレッチャーに乗せられ、手術室に向かう。J大の建物は地下で迷路の様につながっているのだが、薄暗いその通路をひた走る。目に入るのは天井を這うパイプのみ。地下からエレベーターで上がり、長く曲がりくねった廊下を越えると、急に近代的な建物に変わる。手術棟に来たのだ。

 ストレッチャーを引いて来てくれた主治医チームのS先生が「では、僕は向こうにいますから」と言い残して、扉の向こうに消えていく。自分はといえば、手術室の手前でカーテンに囲まれ、フルネームで名乗りを挙げるなど、いろいろと術前の確認を受ける。そしていよいよ入室。

 まず最初に脇につくのは麻酔医だ。テキパキと全身麻酔の準備が進められていく。口にホースをくわえさせられるとほぼ同時に、右腕にも針が刺さり、なんとも形容しがたい嫌な匂いが漂い、気が遠くなっていった。

 午後4時20分手術終了。麻酔が覚めかけの気持ち悪さといったらなかった。S先生とエレベーターに乗って戻る時に、吐くものがないので黄色い胃液を吐いていた。

 その夜もICUで過ごしたが、猛烈に頭が痛かった事しか覚えていない。出血が止まるまで、血抜きの袋が皮膚の下から頭の外に出ていたのだが、翌朝にはドス黒いソーセージになっていた。

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