『襄陽歌』

この漢詩は李白くんです

 

襄陽の歌
夕日がケンザンの西に落ちていく頃
シラザギの羽をつけた帽子を反対にかぶり
花咲く樹の下をフラフラ千鳥足でさまよう
街の子供らはヤイのヤイの拍子とって囃子たて
「ハクドウテイの歌」歌いイチビって通せんぼ

傍の人が
  「何がそんなオモロいねん?」
子供らは
  「このおっちゃん、サンカンさんみたいに
   ヘベレケに酔っぱろぉててオモロいねん」

鵜の首形のヒシャク オウム貝のサカヅキ

長生きできも百年 日数にして三万六千日ぽっち
  そやから毎日三百杯 お酒を飲むねん

遠くに見える川の水は鴨の首の緑色で
  ブドウが酒に生まれ変わる時のような
  ウットリするほどキレイな色に見える
この川の水が春の酒に変わったら
  酒粕を積み重ねて大きな丘を作ろ

若いメカケ売りとばし エエ馬に換えよう
  その馬のクラをキラキラ飾り立て
  ご機嫌に「落梅花」吹き鳴らそう
  馬車の横に酒の壺をぶら下げて
  道々 鳳の笙や龍の笛をユカイに
  その音がまた飲酒欲を誘うんや

この街には
  もう一回愛犬と狩りしたかった〜
  タワゴト言って死んだヤツおった
  そんな悲しい話聞いて嘆くより
  月明かりの下で金の酒樽を傾けたいわ

なぁキミぃ見てみぃや
  昔のエライ将軍の記念碑も
  そこいらの石ころみたいや
  土台の亀も頭欠けて無いし
  苔も生えてるショボイ状態
  ココで悲劇的な物語聞いたって
  涙も出ぇへんし哀しくもないわ

死ぬときのコトでを悲しむんや?
  やめとき アホらしいやん

金銀の葬式の飾り
  灰になる死体を飾るのは無駄なこと
 清らかな風 明るい月の光
  そんなすばらしい飾りには
  お金なんか一銭もいらんで
 
酔っぱろうてバタっと倒れ込んだ
  誰かにコカされたんちゃうで

ジョシュウのヒシャク
リキシのカンナベ(酒を燗する鍋)
李白は キミらと生死を共にするで

王様と夢で戯れた巫女はどこに消えたんやろ

長江の水は東に流れていく
猿の声が夜の静寂に響き渡る

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『襄陽(じょうよう)の歌』
落日没せんと欲すケンザンの西
(さかしま)に接籬(せつり)を著(つ)けて花下(かか)に迷う
襄陽の小児(しょうじ) 斉(ひと)しく手を拍(う)ち
街をサエギり争って歌うハクドウテイ
傍人(ぼうじん)借問(しゃくもん)す 何事をか笑うと
笑殺(しょうさつ)す 山公(さんこう)酔うて泥に似たるを
ロジの酌(しゃく) 鸚鵡(おうむ)の杯(はい)
百年 三万六千日
一日須(すべから)く三百杯を傾(かたむ)くべし
遙かに看る漢水(かんすい)鴨頭(おうとう)の緑
(あたか)も似たり葡萄の初めてハツバイするに
此の江(こい) 若(も)し変じて春の酒と作(な)らば
キクを塁(かさ)ねて便(すなわ)ち築かん糠邱(そうきゅう)の台
千金の駿馬(しゅんめ)小妾(しょうしょう)に換え
笑って雕鞍(ちょうあん)に坐して落梅(らくばい)を歌わん
車傍(しゃぼう)(かたわ)らに挂(か)く一壺(いっこ)の酒
鳳笙(ほうしょう)龍管(りゅうかん)行くゆく相い催(うなが)
咸陽(かんよう)の市中に黄犬(こうけん)を歎(なげ)くは
何ぞ如(し)かん月下に金罍(きんらい)を傾(かたむ)
君見ずや 晋朝(しんちょう)羊公(ようこう)の一片の石
亀頭(きとう)剥落(はくらく)して莓苔(ばいたい)を生ず
涙も亦(ま)た之(これ)が為(ため)に墜(お)とす能(あた)わず
心も亦た之が為に哀(かな)しむ能(あた)わず
誰か能(よ)く彼(か)の身後(しんご)の事を憂(うれ)えんや
金鳧(きんぷ)銀鴨(ぎんおう)死灰(しかい)に葬(ほうむ)らる
清風(せいふう)朗月(ろうげつ)一銭(いっせん)の買うを用(もち)いず
玉山(ぎょくざん)自から倒るるは人の推(お)すに能わず
舒州(じょしゅう)の杓 力士の鐺(とう)
李白 爾(なんじ)と死生(しせい)を同じうせん
襄王(じょうおう)今 安(いず)くに雲雨(うんう)に在りや
江水(こうすい)東に流れ 猿 夜声(やせい)あり