ウィーンの電子音響シーンについて何か書いてみたいと思っていた。

といっても、別にこの数年ウィーンに長期滞在していたわけでもなく、実際にこの目でウィーンの音楽シーンで起きていることを目撃したのは、昨年11月末にウィーンに1週間、アーストワイルのレコーディング撮影のために滞在していた時くらいなのだけれど。

 

この5月にケルンとベルリンで3週間に渡って開催されたAMPLIFY2004フェスティバルで、ウィーンから参加していた fennesz, pita, Radian, dieb13, burkhard stangl, christof kurzmann (ベルリン在住だがウィーン出身), kai fagaschinski (ベルリン在住だが何となくウィーンにも出入りしている)といったミュージシャンの演奏を連日生で聴く機会があり、あらためて彼らの音楽と自分の嗜好が多くの部分で重なっているのを実感した

 

シュタングルやクルツマンは、5年前にニューヨークで polwechsel のライブを聴いて以来注目していたし、2年前に東京で開かれたAMPLIFY2002フェスティバルでも、このデュオによる"schnee"の演奏は連夜名演揃いのライブの中でも個人的に一番気に入ったサウンドだった。(今回のベルリンのフェスティバル最終日を締めたセットもこの"schnee"であったが、この時の彼らの演奏は今回のフェスティバル中でもっとも感動したライブだった。)

 

また、昨年の春から今年にかけて長期滞在していたニューヨークで聴いたライブの中で、もっとも耳を惹きつけたのは、昨年5月にウィーンからツアーで来ていた martin brandlmayr のドラムス+エレクトロニクスのソロ演奏だった。こうした一連のフェスティバルを通して世界各地の電子音響+即興シーンで活躍している音楽家たちの演奏を次から次へと浴びるように聴きながら、自分が特に気に入った演奏をピックアップしてみると、そのほとんどがウィーン勢による演奏だということに気づいたのだ。

* * *

erstwhile の全タイトルの中から自分が特に好きなCDをピックアップしてみても、それは stangl/kurzmann "schnee" であり、polwechsel/fennesz "wrapped islands" であり、martin siewert/martin brandlmayr "too beautiful to burn" であり、stangl/dieb13 "eh" であり、dean roberts/werner dafeldecker "aluminium" (*これは4年前にNYのWKCR-FMで聴いて強烈に耳を引きつけた、アーストワイル作品として最初に出会ったアルバム)であり、それらのすべてはウィーンのミュージシャンが参加している盤なのだ。

 

もちろん、そうした作品が他のアーチストの作品に比べて特にすぐれているとか(むろんレコーディングの音質ではこれら一連のウィーン録音盤には卓越した響きがあるのは事実だが)、他の演奏家たちの作品が劣っているとか、そういうことではなく、これはあくまでも私個人の嗜好によるものである。自分の耳が自然に引きつけられてきた音楽をピックアップしてリストにしてみたら、そのほとんどが、たまたまウィーンから生まれた電子音響作品だったということなのだ。

 

ドイツのフェスティバルから帰国してから、ウィーンの音楽シーンについてあれこれ考えつつ、彼らのCDを改めて買い集め、ウィーンの音をいろいろ聴いている。mego や touch などが過去10年くらいの間に出してきたエレクトロニクスの名盤などにも触れてみると、初めて聴くにもかかわらず、何かしら郷愁をともなう懐かしさのようなものすら感じる。(pita も fennesz も実は今回ケルンとベルリンのライブで聴くまでじっくり聴いたことがなかった。)

 

そうやってウィーンから発信されたサウンドにじっと耳を澄ませていると、今まで気づかなかったいろいろな音が聞こえてくる。それは単に楽器やコンピューターから生まれる音やノイズという意味だけではなく、その音に付随する演奏者たちのバックグラウンドや人間性や美意識や心の深さなども見えてきて、自分が深く共鳴するのはもしかしたらそういう部分なのかもしれないと最近感じている。

 

座間裕子 / 2004年6月28日(月)

 

 

   
     
     

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