<第21.5話>



 
 アスカは、宿舎の郵便受けに手紙が入っているのを見つけた。

 宛名を見ると、初めてみる名前だった。住所は、書いてない。

 太陽にすかしてみる。

 写真のようなものと、便せんが入っているようだった。

 「まあ、セキュリティーを越えてきたんだから心配は無いわよね。」

 手紙をもって、部屋にはいる。

 1ルームの簡単な部屋、多少、女の子らしいアクセサリーが置いてあるが、

 何か潤いが少ない部屋だ。いや、ほこりっぽい。掃除をしてる形跡は、見られない。














 「なによ!なによ!なによ!」

 アスカは、手紙に入っていた便せんをくしゃくしゃに丸めゴミ箱にたたき込み、

 顔を真っ赤にしてつぶやいている。

 足下に写真が落ちている。

 写真は、すべて幼い子供や、自分と同年代の子供の写真であった。





 ただ、すべてひどい写真、おもわず目を背けたくなる写真であった。

 すべて、子供が死ぬ間際であろうと思われれる写真であった。





 


 例えば、

 地雷でも踏んだのであろう、右足の付け根から足が引きちぎられるように無くなって、

 自分の血だまりの上に倒れている子供。

 例えば、

 腹を割かれ、自分の内蔵を持って泣いてる少女。





 そのような写真が10枚以上入っていた。

  便せんには、一言、

 「この子達にむかって、君は、”私は不幸だ”と言えるか?」

 と、書かれていた。




 次の日 いらいらして過ごした。






 2日目 いらいらして過ごした。






 3日目 いらいらして過ごした。







 4日目 いらいらして過ごした。







 5日目 いらいらして過ごした。








 6日目 写真をもう一度見た。この子達の事を考えた。


 子供達は、一目見ただけで栄養失調と解る。

 やせ細り、皮と骨のみ。

 ”きっと、生まれてから、これまで、お腹一杯おいしい物を食べたことも無いまま、

 また、彼ら達が悪いことをしたわけではないのに、死んでいくのかな。”

 ”死”その言葉をつぶやいたとき、発狂しそうなイメージが浮かんだ。

 病院の一室、人形と私を混同した母。

 同じく病院の一室で首を吊って死んでる母。

 もう何年も前の事だが、昨日のように思い出せる。

 時間だけが、そのイメージの緩衝剤となっている。

 2年前は、それをイメージしただけで癇癪を起こし、物にあたったけ。

 私は、軽く苦笑した。



 ”毎日ごはんの心配をしてる人はいっぱいいるだろう。”

 ”私は、心配したことはない。”

 ”学校に行きたくても行けない子供は多いいだろう。”

 ”私は、何も心配なく学校に通った。”

 ”両親が自殺した子供なんてきっとたくさんいるだろう。”

 ”そして、毎日ごはんの心配をして学校に行きたくても行けなくて、

  両親がいない子供も、やっぱり、たくさんいるだろう。”

 ”私が知らないだけで、もっと悲惨の運命を生きている人も、きっと、いっぱいいる。”





 なんと、自分の恵まれていることか。

 何か、吹っ切れた気がした。

 そこに至って、やっと私は、疑問が湧いてきた。

 あの手紙は、何を言いたかったのか?

 ”不幸だといえるか?”と書いてあったのだから、

 私が不幸だと思っていると、差出人は、思ったのだろう。

 ただ単に、私より不幸な人がいると言うことを教えたかったのだろうか?

 いや、それだけではない、何か私に期待している様に思われる。

 私に、何かを気づかせ、何かをさせたいと思われる。

 しかも、こんな手紙が、セキュリティーを超えられるはずがない。

 つまり、内部に出入りできる人間が、絡んでいる。



 7日目 アスカは、髪を切った。そして、颯爽と全てにあたった。

 そうすれば、次の手紙が来ると思ったからだ。

 宿舎に戻ったところ、手紙が入っていた。



 差出人は、あの人物。

 中の便せんには、ただ一言”がんばれ”とだけ書いてあった。






 「わ、わ、わかるかー、なんなのよー!!!」

 アスカ、また手紙をぐしゃぐしゃにして、壁に投げつけた。

 「・・・く、く、く、・・・・」

 近くから忍び笑いが聞こえてきた。

 「そこ!笑ってないで出てきなさい!」

 アスカは、お得意の仁王立ちスタイルで声の聞こえた方に、指を指し言った。

 「いやー、笑うつもりは無かったんだけどね。」

 そう言いながら、無精髭を生やしたいかにも軽薄そうな東洋人が現れた。

 「あんた、誰?」

 「俺は、加持って言う者だよ。アスカさん」

 「で、あんたは、何者で、これと関係はあるの?」

 そう言って、アスカは、手紙を指した。

 「うーん、あんまり言っちゃいけないんだけどね。

  俺の仕事は、君の護衛、そして、護衛の仕事とは、関係なく

  その手紙に関しては、関与している。

  と、言っても渡すことと、それが君に渡ったかの確認だけだけど。」

 「あんたが、私の護衛?ほんと?ネルフってよっぽど人材がいないのね。」

 アスカは、”ふふん”と鼻息が聞こえそうな感じで言ったが、加持は気にした風もない。

 「なんか、むかつくわねー、私が護衛のテストをしてあげるわ。」

 そう言って、加持に向かっていった。




 −−−5分後−−−

 息を切らしている大の字で寝ているアスカとそれを悠然と見下ろしている加持がいる。

 「ぜー、ぜー、あんた、・・・ずるいわよ、ぜー、ぜー」

 「ずるい、と、言われてもなー、」頭を掻きながらそう答える加持。

 「ぜー、ぜー、1回くらい、ぜー、ぜー、攻撃しなさいよ」

 「女の子には、手をあげない主義なんだ。」

 そう、5分間アスカは本気で攻撃しまくった。まさに鬼神のような攻撃だった。

 しかし、加持は、それを全て受け流した。一切の反撃もしなかった。

 格が違いすぎた。

 「これ、どういう意味よ、説明しなさい。」

 アスカは、手紙を指し言った。

 「うーん、たぶんあんまり深読みはしない方がいいよ。

  最初の手紙は、君の今の姿を痛々しく思って、もう少し楽にやりなと言う所かな?
 
  ちょっと、荒療治だけど。

  2枚目の手紙は、それを乗り越えそうな君に声援を送っただけだよ。」

 いつものアスカなら、”痛々しい姿”と言う言葉に食ってかかっただろうが、

 激しい運動の後でくたくたになっており、割と正直に言葉を受け取った。

   「へ?それだけ?」ちょっと間抜け面で聞き返すアスカ。

 「そう、それだけ」大まじめの顔で答える加持。

 「最後に一つ、差出人は、誰?」

 「すまん、それだけは、答えるわけにはいかないんだ。」

 「ふーん、まあ、いいわ、あんた気に入ったわ。

  これから、私のことは”アスカ”でいいわよ。

  なんか、あんた、・・・加持さんは、色々知ってそうだからこれからもちょくちょく話し相手になってね。」

 「もちろん、お姫様の護衛が私の仕事ですから。」

 そう言って、加持は、寝っ転がっているアスカに手を差し伸べた。


 


 

”たろ”です。
”21.5話”をお届けします。
このお話しは、アスカがなんで髪を切ったのかと性格去勢を説明するためのお話しです。
それと、なんでアスカが、加持にだけなついたかと言うところも解消したかったので。
by たろ
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NACのコメント:
第21.5話です(^^)。
アスカの回ですね。というより、アスカと加持の回、でしょうか?
アスカを正攻法ではなくこういう方法で険をとる、とはあ、なかなか手紙の差出人もヤリ手です。
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