<第12話>


綾波を送る途中で、聞いてみた。

「綾波さん、楽しかった?今日のパーティー?」

「楽しい?」

綾波が聞き返してきた。よくわからないみたいだ。

「そう、楽しい、心が浮き浮きしたり、もう一度したいな、と思ったりした。?」

「今日の葛城中佐の所での食事は、とても好ましかったわ。」

「そ、そう言うのを”楽しかった”って、言うんだよ。

 ぼ、僕の料理は、どうだった?」

「碇君の料理は、とっても楽しかったわ。」

「りょ、料理のことは、楽しいって言わないんだよ。綾波さん」

「なぜ、さっき、碇君は、心が浮き浮きしたり、もう一度したい事を、

 ”楽しい”って言ったわ。」

僕は、うれしかった。綾波が、素直に誉めてくれたことが、とてもうれしかった。

それに、綾波は、僕の料理で、心が浮き浮きしたり、もう一度食べたいと思ったんだ。

「そ、そうだけど、料理には、使わないんだよ、でも、綾波さんにそう言われて、

 とっても、うれしいよ。」


そんな会話をしながら、僕らは、月光に照らされて、歩いてる。

僕の横を綾波が歩いてる。

綾波の白く透き通った肌が月光に照らされて、

綾波が、輝いているようにも見える。

本当に、綺麗だ。

この世の物とも思えないほど、綺麗だ。


横をちらっと、見ると、綾波の手がある。

白く、細く、かわいい手がある。

その手を見た瞬間、

”綾波と手をつなぎたいなー、”

”手を握ったら、嫌がられるかなー”

”でも、いいかなー”

と言う、無限思考ループに突入してしまい、

結局、何もしないまま、黙々と歩いてた。




綾波の部屋の前、廊下は、真っ暗で、どこの部屋も明かりは、付いていない。

さっきまでの楽しい感情が、あっという間に冷めていく。

確かに、ここに住めば、プラスの感情は、育ちにくそうだな。

僕は、納得してしまった。

”後で、ミサトさんに相談しよう。”

でも、ミサトさんも、この状況を黙認してたら、どうする?

僕の味方は、誰もいないのか。

何となく、非力な自分が悔しかった。強くなりたいな。



「じゃあ、綾波さんおやすみ、月曜日は、学校で会えるね。」

綾波は、ジーって僕を見たまま、部屋に入ろうともせず、何も言わない。

もう、慣れちゃった。

「じゃあ、帰るね。」

そう言って、僕は、帰った。

階段を降りはじめたとき、部屋のドアの閉まる音が聞こえた。



マンションに戻ると、まだ、宴は、続いていた。

帰るなり、みんなが、”ずざざー”て寄ってきて、僕を取り囲んだ。

”こ、怖い”

「外泊してきていい、って言ったのにー」

「優しくしたかい?」

「レイちゃんは、きっと、待ってるタイプよ。」

「レポートは、18禁OKよ。」

なんだかなー。苦笑。


その後、いくつも質問?されたが、数分後

「「「「からかいがいが、無いわね(な)」」」」

て、みんな、人をからかうのが好きだなー。なんで?苦笑

それから、ビールを多少飲まされた。はじめて飲んだビールは、まずかったが、

宴の雰囲気は、とっても良かった。

すぐに、僕は、酔いが回ってきて、急に、眠くなってきたので、

先に寝かせてもらった。

目が、ぐるぐる回りながら、床に着いた。








”シンジ・・・、”




”シンジ、・・・・シンジ、・・・・”


誰かが、僕を呼んでいるようだ。

誰だろう?

なんかが見えるような気がする、暖かいし、

マナ母さんみたいだ。、そう一瞬思ったとき、

先ほどの、”誰か”が、急速にマナ母さんのシルエットになった。

”マナ母さん!、マナ母さん!うれしいな、会いに来てくれたの?”

僕は、マナ母さんに抱きついて、言った。

マナ母さんは、僕の頭を優しくなでながら、僕を優しく見つめていた。

心に、優しい気持ちが、いっぱい、いっぱい、広がる。

”うれしいな、うれしいな、こういう風にマナ母さんに甘えたかったんだ。”

何か、マナ母さんは、言ってるように見えたが、よくわからない。

”何言ってるの?マナ母さん?”

そして、マナ母さんが、だんだんぼやけていく。

”マナ母さん、マナ母さん・・・”


”お母さん、・・・”








”なんか、いい夢を見てたみたいだなー。”

そう思いつつ、僕は、目が覚めた。

時計を見たら、まだ午前2時ちょっと前だった。

喉が乾いていたので水を飲みに、行く。

冷蔵庫を開けて、コップに牛乳を入れ飲む。

部屋に戻るとき、キッチンに有る時計を見たら、ジャスト2時になってた。

キッチンには、壁に鏡が有るが、その鏡を見て、

僕は、恐怖のあまり、全身に鳥肌が走り、毛という毛が立った。




そう、鏡には、僕が映ってなかった。



映っているのは、一人の女性だった。



恐怖のあまり、声も出ない。

が、次の瞬間、鏡は、何もなかったように、僕を映していた。

”な、なんだったんだ、今のは、”

僕は、急いで、ベットに戻ると。布団をかぶって、そう思った。





日曜日、僕は、ミサトさんとお昼頃、第四使徒の調査現場に向かった。

リツコさんが、張り切って、なんか色々調べてた。

僕も、とっても興味が有るので、色々見て回った。

”ケンスケがいたら、感動するかな?”

なんか、こんなものと戦ってたなんて、変だな?

息絶えてる使徒は、なんか生物って気がしない。




その後、仮本部の天幕のなかで、調べた事を教えてもらった。

結局、なにもわからないらしい。

ただ、遺伝子が、人間に酷似してるらしい。

”遺伝子”と聞いたとき何か心に、引っかかるものがあったが、

何だろう?




そんな話をしてると、外を父さんが通っていった。

「父さん!」

父さんは、振り返った。隣に、冬月さんも居る。

滅多にない父さんとしゃべれる機会だ、何か言わなきゃ、と思っていたら、

父さんは、何もいわず、また、歩き始めて行ってしまった。

冬月さんも少し遅れて父さんにならった。

そして、何事もなかったかのように、父さんは、使徒の光球を検証してる。

僕は落胆の色が隠せなかったんだろう。

ミサトさんが、声を掛けてきてくれた。

父さんが、手袋を取って、光球をさわっている。

手のひらが変色してる。

「ミサトさん、あれは?」

ミサトさんに代わって、リツコさんが、色々話してくれた。

零号機の起動実験のこと、零号機が起動失敗して、暴走したこと、

高温になってるエントリープラグのハッチを強引に開けたためにできた火傷と言うこと、

そのときの実験のけがで、レイは、一昨日まで入院してたこと。



僕は、その話を聞き、ひどく違和感を覚えた。

父さんは、綾波を無表情な女の子に作ってるでは、ないのか?

そのことと、今の話と、なんか反するようだったから、

それとも、自分にだけ、なびくようにしてるんだろうか?

それにしたって、社会生活をしてれば、そのうち、綾波だって、

自分にされてる行為が、悪意のある物と気づくだろうに。

そのときは、父さんは、きっと綾波に嫌われるだろう。

おかしい、・・・何かが、やはり狂ってる・・・



帰りの車の中、僕は、黙っていたが、

ふいに、綾波のことを思い出してミサトさんに、綾波の団地に向かってと言った。

「あらー、そんなに愛しのレイちゃんに会いたいのー」

「違いますよ、ちょっと、知って欲しいことがあるんです。」

「知って欲しいこと?・・・」



綾波の団地の前に来た。

「ミサトさん、どう思いますか、」

ミサトさんも、ボー然としてる。

まさか、こんな所に綾波が住んでるとは知らなかったのが、わかる。

よかった、ミサトさんは、このことを知らされていなかったんだ。

「非道いわね。」一言つぶやいた。

何か考えてるようであった。その顔は、作戦部長の顔であった。

車に乗って、走りながら、ミサトさんは、言った。

「何か、有るわね。」

よかった、ミサトさんは、僕の味方だ。

「はい、僕もそう思いました。」

僕は、この前、思ってたこと、なぜか、綾波を無表情に育ててることを、

それと、先ほどの違和感をミサトさんに話した。

ミサトさんが、うなずいてくれた。

「それにしても、シンジ君、なかなかの洞察力ね、

 身辺調査に天才児となってたけど、それは、学校の成績だけかと思ってたけど、

 これ程とは、やっぱ、司令の血かしら、とても、14歳とは、思えないわ。」

そう言えば、そうだな、自分でも、頭は、良い方と思ってたけど、

ここまで、瞬時に察するなんて、なんか、変だな? 


そして、ミサトさんも、エヴァに最初に乗ったときの父さんとリツコさんのセリフについて、

それと、この前のシンクロテストの時の、

エヴァの人格発言について、疑問に思ってたことを僕に話してくれた。

また、なぜか、1日でも早くテストをリツコさんがしたがってた事も、話してくれた。

まるで、何かが逃げる前にテストをするような感じだったと、

僕も、自分の感じたこと正直に話した。

エヴァンゲリオンは、絶対に人格があると、素直に、話した。

いつも、なぜか、エヴァの中は落ち着くことも話した。

昨晩の奇妙な出来事は、さすがに、話さなかった。

最後に、ミサトさんは、言った

変に思ったことを私以外に話さないで欲しいと言うこと。

また、この車の中以外で話さないで欲しいと、言うこと、

残念ながら、マンションは、常に監視されてるので、ということだ。




月曜日、学校、朝のHR前−−−

朝、自分の席に座って、このごろは、トウジとケンスケとたわいのないおしゃべりをしている。

後、よく、洞木さんと佐藤さんも加わる。

なんとなくだけど、洞木さんは、トウジのことを気にしてるみたいだ。

トウジは、全然気づいてないみたいだけど。

”ガラ”教室の扉が開き、また一人、教室に入ってきた。

綾波が入ってきた。

一瞬、教室が静かになる。なんで?

そうだよな、ちょっと、特異な存在だもんな、綾波は、

何となく、納得してしまった。

あれ、こっちに来る。

もしかして、もしかして、僕の隣の席?

綾波も、僕の事気づいたみたいだ。

視線が、ずっと、僕を見てる。



「おはよう、綾波さん、隣の席なんだ、よろしくね。」

「おはよう、碇君。」

「体、大丈夫?あんまり無理しないようにね。」

「問題ないわ。」

そう言って、僕の方をジーって見てから、

鞄から、文庫本を取り出して、読み出した。

綾波らしくっって、苦笑しちゃった。



振り返って、トウジとケンスケの方を見たら、

二人とも、イヤーンなカッコで固まってる。

「あ、あれ、どうしたの、二人とも?」

よく見ると、洞木さんも、佐藤さんも固まってる。

なんか、教室中固まってるみたいだ。

な、なんなんだ?

そ、そうか!綾波の事は、まだ話してなかったな。

でも、なんで、教室中?みんな、ゴシップ好きだな。

あちゃー、つっこまれるな。これは。

苦笑。



「し、シンジ、ちょっと、こっちへ来い。」トウジとケンスケが、僕を引っ張ってく。
 
「はい、はい」

二人は、とりあえず、僕を廊下に連れてった。

なんか、教室中の人間が、”ずざざー”て廊下側に寄ってきた。

みんな、ホントゴシップ好きだなー。

苦笑。

「し、シンジ、綾波と、知り合いきゃあ?」トウジが聞いた。

トウジ、語尾がおかしいよ、そんなにあわて無くったっていいじゃん。

どうしよう、言ちゃて、いいのかな?綾波も、エヴァのパイロットって。

今、言わなくても、やっぱ、そのうちばれるよな、素直に言うのが、ベターかな。

「ああ、綾波さんも、エヴァンゲリオンのパイロットだよ。」

””おおー””と言う歓声が教室に響く。

「ついでに言うと、みんなが思ってる関係じゃないよ。」

僕は、苦笑して、そう言った。

「し、しかしな、綾波と会話した人間なんてはじめてだぞ。」ケンスケが今度は言う。

そうだろうな、そう言う風に育てられてるんだから。

「ただ、みんなより綾波さんに接する機会が多かっただけだよ。

 同僚なんだから、挨拶ぐらいはするよ。」

「そうかのー、なんかセンセには、それ以上の何かを感じるがなー」トウジが言った。

う、トウジ、鋭いな、他人には、

「まあ、綾波さんは、美人じゃない、仲良くなりたいなー位は、思うよ。」

僕は、本心の百分の一位の事を言った。

「ほら、チャイムなってるよ。教室に入るよ。」

廊下から、自分の席に着くまで、教室中の視線が僕を追ってる。

”なんだかなー”

苦笑。



自分の席に着くと、綾波が、こっちを見ていった。

「どうしたの、碇君」

「何でもないよ、綾波さん。」僕は、微笑んでそう答えた。

「そう、」

なんか、また、教室中がざわめいた。

怖い目でにらんでる女性が結構いる、佐藤さんも、な、なんで?

トウジとケンスケは、ニヤニヤ目で僕を見てる。

う、いいじゃないか、ちょっとくらい、綾波と話したって!

 


 

”たろ”です。
第12話お届けします。
午前2時の鏡のお話は、たろは、実体験有ります。死にそうに怖かったです。
えー、とりあえず、レイちゃんも学校に行きだしました。
お約束の教室パニック編です。ただ、残念ながら、あんまり盛り上がりませんでした。
まあ、そのうちにと言うことで、

次回予告
金曜の夜、売れっ子漫才師リツコ(グループ名、ネルフ、
芸風は、コスチュームプレイを売りにしている。
なかでも、軍人さんと科学者さんシリーズは、子供から老人まで、幅広いファン層を持つ。)は、
漫才の練習のため、相方のミサトのマンションにやって来た。
お笑いの道は、長く険しい!
笑ってくれたシンジ(ミサトと同棲中の敏腕プロデューサー)に
気まえよく、つい、同じ事務所の新人アイドルタレント綾波レイの部屋のカードキーを渡すリツコ!
シンジは、にやりと笑い、カードを受け取る。
我らがアイドル、綾波さんの運命はいかに?
次回、”危機一髪!綾波さん!”をお楽しみに!
では、また来週!by たろ


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NACのコメント:
第12話です(^^)
手を繋ぎたいと思いつつも繋げないシンジ、情けないけどわかりますね〜。
ここで躊躇無く繋げるようじゃあ、ただのプレイボーイくんです(^^;

佐藤さん、結構出番あるなぁ・・・(^^;
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