止まない雨はないんだよ?
晴れた日がずっと続かないのと同じように…
雨もいつしか、あがるんだよ?
それでね…雨の後には必ず、晴れ間が顔を覗かせるんだ。 |
After the Rain
作 睦月 |
僕は碇シンジ
年齢15、性別男…別段変わったところもない極々平凡を絵に描いたような人間だった。 今も、昔も… しかし、外見に似合わず、僕は普通ではない人生をおくってきた。
そのことが悪いことかと言うと、そうでもない。
僕は1年前まで外界を避けて生きてきた。 普通と言えるものは全ての事象が平均化されたものの事を指すと思う。
人の視界の片隅に掛かる位の距離を保ち、一歩下がって様子を窺い見てるだけで決して触れようとしなかった。
何をするにも不都合はなかった……
なぜなら………
僕は……
何もしなかったから………
西暦2015年
父からの手紙
好意的な文面ではなかった… しかし、希望を持たざるなかった。
そこに希望はあった。
今の僕を作る全てが、全ての出逢いが其処にあった… 仮初めで本物の温もりを知った…
自分でない自分しか求められない失望があった。
僕が壊れ行くことを願った人たちが居た。
物事に触れる前に諦めていた僕は本当の絶望を知らなかった…
僕はかわったと人は言う。
外見など、早々変わるものなどではないから… …と、僕自身は思っているが、それでも周りは変わったって言う。
でも、僕がどれほどのことをしただろう? その1年の間にでも僕は戦うことを覚えたわけではない。
『僕が最後の最後に逃げなかったから、今がある。』 あの頃の僕を知る人はそう言う。
僕の大切な物、大切な人…
あたしはアスカ、惣流・アスカ・ラングレー!!!
…そう言われてきた、言い聞かせて来た…期待されていた、期待に応えていた。
乗れない… もう、乗れない、あたしの弐号機は…あたしを裏切った、いいえ…裏切ってはなかった。
EVAには乗れない、ただの人…
あの白い病室があたしの世界になった。
これ以上、あたしから何も取らないで!!!!
あはは… EVAに乗れなくなったあたしに、何か用? 優等生のファーストさんに、自他共に認めるエース、無敵無敵のシンジ様が、このあたしに…今更!?
あぁ♪
気分はどうかしら?さぞかし清々したでしょうよ、うるさい奴が居なくなったってさ!!!
何よ、そんな顔しなくたっていいじゃない!!!
ねぇ…アスカ、使徒はもう来ないんだよ?
もう…殺さなくて、いいんだよ。
EVAは終わったんだよ。
帰ってきて…帰ってきてよ、アスカ…
弐号機パイロット…赤い人、赤い弐号機…
心を閉ざした人
いろいろな心を持つ人、いろいろな表情を持つ人 碇君の話題によく上る人
私が手を伸ばしても届かない存在であるのに…
私は…あなたが…
何よ二人して、来なくたってさぁ!!!
なんであたしにまで見せびらかしに来るのよ!? ファースト…あんた、幸せ?
知ってんだから、あんたが来てなくてシンジが一人の時なんて言ってるとおもう?
そしてあんたの事よ!!!!!
途中何が入ろうが、結局は綾波はね…綾波がね…綾波、綾波、綾波、綾波!!!!!!!!! あの馬鹿、あんたのことばかり聞かせんのよ!!! あたしに!!!!! あぁ〜ごちそうさま!!!!!!
何よ、その目は? 私に碇君をそんな目で見ないでくださいませってか?
なんであたしはこの白い部屋に閉じこめられてんのよ!!!! なんでっ、なんでっ、なんでっ!!!!
誰か、誰かあたしを、見てよっ!!!
シンジ…あんたは此処に残りなさい、ファーストと一緒になんか認めないわ。 なに!?
シンジ、あんたのせいなんだから、あんたはあたしの言うこと聞く必要があんのよっ、いい!?
えっ!?
どうして、どうして…ファーストの言うこと聞くのよぉ…
あんた、あたしの言うこと聞きなさいよぉ…
そんなに、あの女がいいの?
認めない…認めてやらないわ…
今日も碇君は弐号機パイロットのお見舞いに行く。
私は、一人になった。
『綾波は自分の心を隠されていたんだよ、僕がじゃない…ただ、綾波が気付いたんだ。』 それでも碇君のおかげだと私は判断する。
私は解放された…
『なら、何処に行くの?』 私は一人になった。 私の目の前は急に開けすぎて、何処へ行けばいいのか、わからない。
そばに碇君が居た。
私の意志は必要ない碇司令はもう、居ない…
まるで、かつての私の望み通りのように…
きっと…することだろう。あの頃の私のままならば… 今は知っている…
今は知っている。 サードインパクトの世界に残された人…たくさん居る。
待っている人…知っている。よく、知っている
それでも待ってるのは碇君…
私はそれに答えたいと思う。
弐号機パイロットはわからない…わからなくてもいい
弐号機パイロット…
ここは暖かい…私は此処にいる。
サードインパクト後、NERVはまだある。
これはミサトさんの小話から聞いた話題
リツコさんがどうやってNERVを守ったと思う?
MAGIで全てを支配下に置いてしまった…廃れた元先進国なんてMAGIの敵じゃないのよ?って嬉しそうに…
世界はリツコさんにごめんなさいをした。
サードインパクト後、居るってことは当然、リツコさんはサードインパクトから帰ってきた人の一人だ。
『所詮、私も逃げていたのよ…現実からね?私が逃げちゃ駄目よ、なんて笑っちゃうわね、人のこと言えないわ。
リツコさんも寂しかった人だったんだ。 でも、リツコさんはサードインパクトで壊れてしまった。
今は、リツコさんはミサトさんの親友やってる…
リツコさんも、類友なんだよ…ミサトさんの!!!! リツコさん、今は趣味に生きている。
NERVはリツコさんで持っていると言ってもいい。
そして、NERVが謎に包まれた存在で術数権謀の権力者達の興味を引く存在であればあるほど…
でも、 そのおかげで僕は非日常から離れられない日常を手に入れた。
サードインパクトから程なく…私は葛城三佐に引き取られた。
葛城三佐の『まとめて面倒見ちゃうわよ♪』とは書類を総務へ廻すことを言うみたい。
葛城三佐の家の隣… 『この広さに一人は寂しいわね…』 いいえ、全然違います。葛城三佐…
ないんです。
ここは、暖かいです。
この壁の向こうに、碇君がいる…
私は壁の隅で丸くなって眠るようになりました。
最近、趣味が出来た。
前から料理はしてたけど、此処では料理せずに食事が出てくることはないから必要に迫られてのことで
まあ、喜んで貰えればそれはそれで嬉しかったけど… でも、なんか…それって
綾波は肉が嫌いと言った。
僕の食の追求はそこから始まった。
かなりのレパートリーが増えた。
でも、所詮僕…
アスカなら完璧を目差すかも知れない。
僕がこんなに苦労してるんだ。
食事にわかりにくいように、それとなく肉を混ぜた。
そして、食べ終わったあとにネタばらし 綾波、それ…お肉だったんだよ。
『…どうして、そういうこと…するの?』
くはっ!!!
気づかなかったことに、拗ねてるみたいで可愛いっ!!!!
僕の料理は如何に綾波を騙して、肉を食べさせるかに変わった。 僕は綾波にあらかじめ『肉は残してもいいから』と言っておく。
違う物を残そうとすると「ごめん綾波…作り直すよ…」って言うと綾波はすまなそうに食べ始める。
ミサトさんとは違う…綾波は違いがわかる人だ。
僕は料理人としての喜びを手に入れた。
葛城三佐の隣に移って以来、私はよく葛城三佐の家に呼ばれるようになり、 そして、私はお隣に呼ばれるのを心待ちするようになった。
いつしか、それが…あたかも当然な、習慣のようになった。
ある時、私は葛城家に誘われなかった日があった。 碇君や葛城三佐にとって、それは私を誘わなかったわけでも、私のことを忘れているわけでもない。
それは嬉しいこと
でも、私は、葛城三佐の家には行かなかった…。
『どうしてこなかったの?』
「……呼ばれなかったから」 呼んで欲しいの…
『レイも、堅いんだからぁ〜♪そんなの気にしなくても全然OKよん♪』
「…問題ありません。」 堅い…違う…
当然がであることが怖い… 碇君…私は此処にいてもいい?
心配になる…
怖くなる…
心配させて、ごめんなさい…
私はいつも、いつでも、待っています。
あなたがくれた…
『綾波ぃ…』
あなたに、私の名前を呼ばれる時を…
『今日も夕食、一緒に食べよ?』 私はいつも、待っています。
『アスカちゃん…元気になって良かったですね♪』
ほっとけっ…つうの!!!
『ほらっ、アスカ…逃げないんだし、誰も取らないから…そんなに貪り食わなくても…』 うるさいわね…ほっとけっていってるでしょ!!! 逃げない?
誰も取らない?
力が要る…
ちちくり合うのも、今の内… 今の内………も、やっぱり許さない、許してやらない、許してなるもんですかっ!!!! I shall return!!!!
『ほら、葛城さん!!! アスカちゃんが笑ってますよ♪』
ほっとけ…って、言ってるでしょう!!!!
ペンペン…温泉ペンギン
彼と私は似ている?
私は碇君に心を貰い…碇君も求めることを機に、つたない力で其処から抜け出ようとした。
あなたは幸せ?
ペンペン…
ペンペンはアルコールを飲むように出来ているとは思えない。
ああ…ペンペンがどんどん鳥類では無くなっていく。
私は厳密にヒトでは無いかも知れない…
あなたは鳥でなくても幸せ…ですか?
最近、碇君が意地悪… 私、肉は駄目だって言ってたのに…どうしてそう言うことするの?
私が肉を食べれないから、葛城家の食卓から肉が消えた…。
『一緒に、食事すると言うこと…一人だけ別物だなんて寂しいよ。』 特別は嬉しい、特別は寂しい… 碇君は私に特別心を砕いてくれた…嬉しかった。
みんな一緒…
碇君の作る物に不満あるはず無い… でも、あのときは何か違和感があった。
『綾波、それ…お肉だったんだよ。』
!!!! どうして、そう言うことするの?
そのときはよくわからなかった…
『綾波…無理しなくてもいいから、お肉は残してもいいよ』 やはり、碇君は私のことを考えてくれている。
…が、どれが肉なのかわからない。
これが肉っぽい… 『ごめん、綾波…作り直すよ…』 えっ!?
どれが…当たりなの?
結局わからなかった…
『今回のお肉はこちらでしたぁ〜♪』
ああ…
『今日も夕食、一緒に食べよ?』 「…はい。」
また、碇君と一緒に食事をとる。 こう言う私を、なんと言うのだろうか?
碇君が嬉しそうにするから…私、
くくく…、ファースト…あんたの時代は終わったわ
退院するわよ!!!!
何?
離しなさい!!!
ここから帰るのよ、あたしは…
あん?
ごはんあげるから…って
あんたら、あたしをなんだと思ってるのよっ!!!!!!
離せっ、離せぇぇっ!!!!!
おとなしくしろ!?
うっ? 薬?
ちくしょう まける…もんです…かぁ…
買い物で家を開ける僅かの間になにがあったんだろう?
なんでそんなところにつっ立ってんの? えっ? えぇ!?
壁に穴が…綾波の家と繋がってる?
『あはははは…やっぱね、私が引き取るっていったのにお隣さんじゃ様になんないでしょう?』
そう言うもんなのか? 『碇君…お帰りなさい…』 あっ…
ある晴れた日の午後だった…
ゴツッ!!! ???
いったぁ〜!!!! 痛いでしょうがぁ!!!
ゴンガンガンガン、ガスゥ!!!!
あっ…!?
振動があったと思えば、葛城三佐の罵声…また、振動
そして、
足が生えた
葛城三佐、凄い…
はっ、いけないっ!!! 私は服を弛めながら、洗面所に向かう。
ぴんぽ〜ん♪ はい…どちら様? 『やっほ〜、レイいるぅ〜♪』 なんでしょう?
『今、シャワーを浴びていたのね?』 …はい
『そう、ならちょうどいいわ。
…了解
そう…了解してるの
そう、葛城三佐はあの穴を正当化させに来たのね…
私が望むことだから…
『あはははは…やっぱね、私が引き取るっていったのにお隣さんじゃ様になんないでしょう?』
そう、それでいいの…
じゃ、またね。……お帰りなさい。
別々の戸をくぐり、同じ部屋で顔を合わせる。 そう、綾波の家と此処は繋がっているのだ。
『綾波レイは未成年につき、私が保護者を引き受けましたが、今までは部屋数が無いという理由で別居となっていました。 しかし、被保護者への待遇に差を付けるとことは好ましくありません。今までは諸処の問題からその点には目を瞑って来ましたが、その問題を一挙に解決すべく綾波家との壁の撤去に取りかかることになりました!!! よろし?』
嘘だ…
『さあ、シンジ君…両家を阻む憎き壁に一撃、その障壁に崩壊を!!!』
僕もやれって!?
僕にはわかりません。
本当は壁を丸ごと撤去したかったらしいけど、壁を取り払うことは柱を取り払うことに等しい。
いや、落ち着くってのも変だけど、事実落ち着いているから仕方がない。
聞くところ、この扉の綾波側には『葛城』と表札があるらしい。
一応、手続きってのをやってやったわよ…
ここから、帰れる。
やることがね…
のほほんとしてるのも、今の内よ? シンジ…
…で、こいつはいつまでついて来んのよ? ストーカー?
あ〜、やだやだ。
えっ!? やだ、こいつが隣なの?
『じゃ、またね。綾波』
はん、あたしが居るからにはあんたにはこの敷居を一歩もまたがせたりはしないわよ?
逃げ去るように走って自分の家に戻るファースト…
…で、シンジ!!!
『碇君、お帰りなさい…』
んなっ!? なんで、ファーストが、ここに!?
ちょっと、シンジ!!!
事と次第によっちゃぁ、ただじゃ置かないからね…
「シンジ!!!… 『おかえり♪…アスカ』
うっ… あとでちゃんと聞くからね…
『おっかえりぃ〜、あすかぁ〜♪』
うわっ、酒臭っ…
『あすか、あすかぁ〜♪』
今日は… 今日だけは、
でも、一言くらい言わせて貰うからね?
『へっ!?ぜ〜んぜん平気、まだまだ、しらふよぉ〜出来上がったりなんかしてないわよぉ〜ん♪
なっ!? …シンジ!? 赤くなっている…って、こいつじゃどっちかわかんないわよ!!! ファースト!!!!
ミサト…
そうに、決まってるわ…
いいえ、わたしは出来ていないわ…
碇君と…出来る…
心惹かれる響き…
<…できちゃったの> いつか、言ってみたい言葉…
日常… アスカが帰ってきた。
ちょっと、うるさくなってしまった。 物理的に痛いことがよくあるようになった。
でも、痛みになれることは寂しい事だと思う。
こんな日常で、嬉しいんだ…と思う。
はっきり言って、アスカが来て…綾波はどうなっちゃうんだろうって心配だった。 でも、心配無用な結果だった。 お願いがあるんだ。
駄目? あうっ、アスカ…
こんな日常が嬉しいんだと…思う?
ミサトさんは相変わらず『えびちゅ』で
日向さんは『葛城さぁ〜ん!!!!』って、叫んでて…
トウジはジャージだし、ケンスケは眼鏡が光ってて、
アスカは無意味に元気で
久しく弾いてなかったチェロを弾いていたら、綾波がそれは何?って聞いてきて…
綾波、幸せそうに寝入っちゃって…
あっ…母さん? なんて、どっかの川を渡りかけちゃったりする僕だったりするけど
これで…ううん、これが幸せの形なんだ。
ん…出来た♪ 今朝は納豆をアスカに食べさせよう♪
『不許可で入ったら、殺すわよ♪』
うっ… あれからアスカの部屋のプレートはいつの間にか語尾が『♪』に変わっていた。
アスカぁ〜、起きてぇ〜、起きてくださいまし〜。
ううっ…駄目か…
………でも、アスカの部屋なんて久しぶりだな。
ふふふ…今日の作戦は
何処に行くのかって?
シンジは前科もあることだし、今回でいただきよっ!!!!! ふふふ…悪いけど、勝ったわ…完璧よ♪
私も碇君に起こされたい… でも、駄目… 私、我慢が効かないから…
そう、私が寝てる内に私の部屋に来てもらえばいい…
…今度、碇君にお願いしてみよう。
碇君はまた、弐号機パイロット改め、アスカを起こしに行くのね… 私は碇君に迷惑をかけてまで構って貰うなんて出来ない…
駄目!!! そこに入っては駄目!!!
私のATフィールドが保てなくなってしまう!!!(?)
碇君が弐号機パイロット(改)に…危険よ!!!! 碇君が危険…碇君は私が守る…
そう、それが愛、私の…愛なのねっ?
覚悟を決めてアスカの部屋の戸に手をかけようとしたときに後ろから 抱きしめられる。
ああ…
「あの綾波さん…何かな?」 「…私の愛が碇君にこうしろって言うの。」
「綾波…締まってるんですけど…、首…」 「私の愛…碇君を強く強く抱きしめなさいって言うの…」
言うの…って、シめてんのは首…締まってるのも首さぁ!?
「碇君…好き…」
綾波…キまったね? 僕の…動脈が!?
遅いっ!!!!
ん?
!!!!!!!
「あ〜!!!!!!
「……『愛』してるの」
「なにが愛してるのよっ!!! 発情してるだけじゃない!!!」 「…あなたは威嚇してるのね?」
「密着するんじゃない!!!! 離れなさいよ!!!」 「嫌」
「シンジが嫌がってるでしょうがっ!!!」
言えません…ってば♪
「言えなくしてんのはあんたでしょうかぁ!!!」
「そう、良かったわね?」
「あなた、碇君に何をする気だったの?」
「碇君は私が守る。」
ぐぐぐ… カクッ…
あっ!? おちた♪
「シ…シンジぃ〜!!!…泡、泡吹いてるっ!?」
「見て、碇君…雨があがって、虹が出てるわ…」
今日もいい天気になりそうね。
〜 The End 〜 |