第三新東京市の郊外にある山中に立つ大きな屋敷。

 ある朝、屋敷の主人が食堂で朝食をとっていると、メイドが何かを持って主人のもとへやってきた。

 「旦那様。こんな物が玄関に……」

 主人が見てみるとそれは二つに折り畳まれた小さなカード。

 それを開いた主人の目が大きく見開かれる。

 「…どうなさいましたか……?」

 いぶかるメイドに向かって、主人はあわてたように言った。

 「すぐインターポールへ連絡を取れ!」

 「は……?」

 いったい何のことかさっぱり分からない様子のメイドに、主人は畳みかけるように言葉を継いだ。

 「ヤツが……私の屋敷を狙ってくるのだ!

 

  ヤツが…………

 

 

………ルパンが……!

 

 

 

 

 

 

He is coming with the breeze……

Noone knows his face,but everybody knows his excellent performance at work and the wonderful skill.

His name is “LUPIN”― LUPIN THE THIRD CHILDREN,IKARI SINJI!

 

LUPIN THE THIRD CHILDREN

―a blunder of Count Fuyutsuki―

overwritten by MM from KOUCHI

 

 

※     ※     ※

 

 

 「ここが予告状が送りつけられた冬月邸だな? 私がインターポールの銭形だ」

 どこからどう見てもゲンドウにしか見えない銭形警部は横柄に言った。

 「君がルパン逮捕に人生をかけているという銭形君かね」

 「さっそくだが、その予告状を最初に見つけた者を呼んでもらいたい」

 屋敷の主人である冬月コウゾウのセリフを無視して、ゲンドウな銭形……いや銭形なゲンドウはそう言った。

 「…私です。今朝、私が玄関で見つけました」

 進み出たのは冬月邸にメイドとして仕えている洞木ヒカリである。

 「予告状を見つけたとき、周りに変わった様子はなかったか?」

 「…いいえ……いつも通りでした…」

 「そうか。 では、その予告状を見せてもらおう」

 「これだ」

 冬月に手渡されたカードには、丁寧な文字でこう書かれていた。

 

 

              冬月コウゾウ様

                残暑の厳しい中、いかがお過ごしですか

                明日の夜12時頃に

                あなた様が大事になさっている指輪「ルフラン」をいただきに参上させてもらいます

                盗られてお困りになるのは十分承知しています けどそうしないと不二子が怒るんです

                情けないとお思いになりましたか けどあなたは不二子の恐ろしさを知らないからそう思うんです 

                次元は笑うだけで助けてくれません 五エ門はいつも行方不明です 

                だからこうするしかないんです 許して下さい

 

                      追伸 インターポールの銭形警部だけは絶対に呼ばないで

                                                   ルパン三世より

 

 

 

 「……………」

 無言でそのカードを破り捨てるゲンドウ。

 「警部、ちょっとお尋ねしたいのだが…」

 冬月が何か不安そうにゲンドウのもとへ寄る。

 「これはホンモノのルパンの仕業なのか? なんというか…これは予告状と言うより、哀願書という感じがするのだが」

 「全くだ。 いつにも増して情けない内容だ」

 ゲンドウはシレッと答えた。

 「警部…… 大丈夫なのか? こんな情けない怪盗を、なぜ今まで捕まえられなかったのかね?」

 「見た目は情けないが、手口は一流だ。額面で物事を判断するな。 これだから金持ちは困る」

 ゲンドウの横柄な物言いは、どうやら金持ちの冬月が気に入らないのが原因らしい。

 「………まあいい。 犯行予告の日時までに、警備を万全にしてくれたまえ」

 「当然だ。事はシナリオ通りに進んでいる。 ところで、やつが狙っているルフランという指輪とはどういうものだ?」

 「……私が、ある有名な彫金家に彫らせた物だ。時価数百億は下るまい」

 「たかが指輪に数百億だと…!? 金持ちのする事は分からんな」

 「君にはたかが指輪でも、私にとってはかけがえのない物だ。花嫁への贈り物としてな」

 「花嫁? 娘が結婚するのか?」

 「いいや。私の花嫁だ」

 それを聞いてゲンドウはますます冬月が気にくわなくなった。

 

 

※     ※     ※

 

 

 男の名はルパン三世。

 その昔、フランス中を騒がせた怪盗紳士ルパンの孫である。

 しかし、いま冬月邸の前に潜むルパンなシンジは、まるで気乗りしない様子で隣の男に声をかけた。

 「ねえ…やっぱりやめとこうよ……」

 そんなシンジに、隣の男、次元なカヲルが応える。

 「今さら何を言うんだい?シンジ君。心配しなくても、君にはボクがついてるさ」

 「そう言う事じゃないよカヲル君! この話、どう考えてもムリがありすぎだよ! なんで僕がルパンじゃないといけないんだ!」 

 「しょうがないよシンジ君。 『ルパン・ザ・サード』と『サード・チルドレン』……作者が何を言いたいか、これで納得がいくだろ?」

 「いかないよ!だいたいそのネタは作者の発案じゃないだろ!それに状況が『ゲドウ』の第五話あたりとカブッてるし……

  ……ウチの作者がパロディーやろうとしたのが、そもそもの間違いだったんだ!」

 「それは放送コードだよ、シンジ君…… 君がいくら嫌がろうと、作者のちっぽけな自尊心が話をゴウインに進めようとするんだ。

  観念するんだね」

 「でも……」

 「まだあきらめられないのかい? けど今ここで君がルフランをあきらめたら、不二子なアスカちゃんが黙ってないんじゃないかな?」

 「う゛っ………

         …………分かったよ、カヲル君…」

 「そのいきだよ、シンジ君。 じゃあ、手はず通りにね」

 こうして、些細な(?)一悶着の後、シンジとカヲルは屋敷へ向かって二手に分かれていった。

 

 

 

 「フッ、準備は万端だ。ルパン…いやシンジ、いつでも来るがいい」

 大広間の中央、これ見よがしに飾られた「ルフラン」を前に、警察官らしからぬ不敵な笑みを浮かべるゲンドウ。

 「どうかね警部。状況は」

 だが、広間に現れた冬月を見て、ゲンドウはロコツに眉をひそめる。

 「困るな伯爵。シロウトの出る幕ではない」

 「伯爵というのはやめてくれ。しかし、たった4,5人の警備員で、本当に大丈夫なのか?」

 「ムダに多い警備はかえってヤツにつけいる隙を与えるだけだ。何もわからんシロウトは黙っていろ」

 「しかしな…」

 なおも食い下がろうとする冬月に、いい加減ゲンドウの我慢袋の緒が切れかけたとき…

 フッ

 突然部屋の明かりが消えた。

 「!! ヤツか……!?」

 「け…警部!どういうことだこれは…!」

 「ええいうるさい!これも計算のうちだ!」

 パッ!

 と、ゲンドウの罵りを合図にしたかのように、警備員が手にした懐中電灯が一斉に灯ると中央に向けられ、「ルフラン」の飾り台に取り付く影

を浮き彫りにした。

 「フッ、見つけたぞ。 シンジ、タイホだ

 「と…父さん…!? ……じゃなくて…とっつぁん!?

 そう、作者がゲンドウを銭形にあてた理由がここにあった。

 

 しかし、そうなると、ゲンドウはルパン二世なのか……?

 

 ……世の中、つっこんではいけないこともある。

 

 「な…なんで……呼ばないでって書いたのに……」

 「フッ、シンジ。今日が年貢の納め時だ。覚悟しろ」

 そう言って直立不動のままなわ付き手錠をシンジに投げつけるゲンドウ。

 ハッキリ言ってコッケイである。

 「わっ…!」

 しかし、シンジはあざやかにそれをかわして、煙玉を床に叩きつける。

 ボンッ!

 「くっ…しまった……!」

 「ま、まあ〜たなぁ〜……とっ…とっつぁああん…」

 これ置きみやげとばかりに、お決まりのすてゼリフをかなりイヤイヤ気味に残していくシンジ。

 「…警部! あれだけ偉そうに言っておいて、なんだこのザマは! この責任をどう…」

 「伯爵、演技はもう結構だ」

 「…そ…そうか……いやしかし、こうもうまくいくとはな…」

 「まだすべてが終わったわけではない。 追跡班!ヤツが持っていったニセのルフランに仕掛けた探知機で、ヤツの居場所を探れ」

 「はっ…!」

 ゲンドウの指示に、敬礼を返して過ぎ去る捜査員。

 「警部……そのセリフはいささか説明的すぎるのではないか?」

 「読者に説明せねばならんのだ。仕方がない」

 冬月のツッコミに、ゲンドウはこともなげに答えた。

 「それより、本物のルフランはちゃんと保管してあるんだろうな」

 「心配は無用だ。今、私が持っている」

 「なに…!? なんと不用心な、それこそ伯爵自身が狙われたら…」

 ドンッ

 そのとき、警官の一人がつんのめるように二人の方へ倒れてきた。

 「も…申し訳ありません!」

 「気を付けろ! 何をこんなところでボサッとしておる!さっさとシンジを追わんか!」

 「は…はいっ…!」

 ゲンドウの剣幕に背筋をピシャッと伸ばして敬礼を返した警官は、その場を逃げるように勢いよく走り去っていった。

 「なかなか厳しいな、警部」

 「フン、最近の警官はグズばかりだ…… 伯爵、ルフランは今すぐ金庫にでも移しておけ。ヤツはまだ、この館内にいるのだぞ」

 「どうやら心配性なのは、警部の方らしいな。意外な盲点というやつだよ」

 「気付かんうちに落としてしまうかもしれん。悪いことは言わんから…」

 「しつこいな警部。そんなに心配せずともちゃんとここに……」

 そう言って上着の内側をまさぐる冬月。

 しかし、しばらく同じ動作を繰り返した後、その顔が蒼白に染まる。

 「…ない! ないぞ……!」

 「なんだと!? …!……まさか…」

 ゲンドウの脳裏に、今しがたぶつかった警官の姿が浮かんできた。

 「………しまった……!」

 

 

 

 「……どうやら、うまくいったようだね…」

 警官服に身を包んだカヲルは、冬月邸の屋根に登って一息つくと手のひらにある本物のルフランを軽く放り上げて見せた。

 「しかし、シンジ君は大丈夫かな……」

 計画では、ここで落ち合うことになっていたのだが…

 「ふふっ…まさか、迷子になっているんじゃないだろうね………?」

 そう言いながらカヲルは、向かい側に広がった冬月邸の窓の一角に見える部屋から、シンジが警官達によって連れ出されるのを見た。

 「!?……シンジ君………!?」

 

 

 

 時をさかのぼること数分前―

 

 「……これでよし、と」

 煙に紛れてゲンドウから逃れたシンジは、ニセのルフランを館の窓から放り投げると廊下の奥にある一室へ駆け込んだ。

 その部屋の窓から、屋根づたいにカヲルとの落ち合い場所まで行く予定なのだ。

 が………

 「あなた、だれ?」

 その部屋には先客があった。

 いや、その部屋の主と言うべきだったろうが…

 「え……あ……」

 シンジは予期せぬ事態に一瞬硬直した。

 その少女は、月明かりのみが部屋を照らしている中にたたずんでいた。

 「だれなの…?」

 「あ…その……る…ルパン……?いやシンジ…かな……? ごめん。作者がいい加減ではっきりしないんだ」

 「そう…」

 「いきなりごめんね。ここに人がいるなんて知らなかったんだ。すぐ出てくから…」

 シンジはそう言って窓際まで駆け寄ると、窓を開けて外へ出ようとした。

 「…いけない」

 「……へっ?」

 「そこから飛び降りると、死んでしまうわ、あなた」

 「…い…いや……飛び降りるんじゃないんだ…」

 「じゃ…どうするの……?」

 「ここから屋根の上へ登るんだ」

 「屋根の上へ…?」

 「そうだよ」

 「あなた、空を飛ぶことができるの…?」

 「へ……?」

 「ここから、屋根の上へ行くんでしょう…?」

 「う…うん……そうだけど……」

 シンジのつたない返答にしかし、少女はしばしの間も置かずにスッと立ち上った。

 「?…」

 そしてゆっくりとシンジの方へ歩み寄ると、やがて思い切ったようにガバッとシンジに抱きついた。

 「え!? ええ!?」

 「…つれてって」

 「え…!? つ…連れていくって…!?」

 「わたしも、いっしょに…」

 「そそそそんな…な な なんで……?」

 「…おねがい」

 間近にせまる懇願の表情。

 

 ドキッ

 

 あっ、いま、ドキッとしたなシンジ、ドキッとしたな!?

 

 「な…なに言ってるんだよ…そ…そんなこと……」

 

 あるんだろ? あるんだな?

 

 「…………………」

 

 やっぱりしたんだ! ドキッと! 目の前の蒼い髪と赤い瞳の可憐な少女に!

 

 「………………………………」

 

 いけないコだなシンジ! 不二子…いやアスカなんてものがありながら!

 

 「…なに言ってるんだよ! 僕はアスカとなんにもないし、アスカのことをどう思ったこともないよ!」

 

 そうだ。その言葉が聞きたかったんだ。

 

 「じゃ…じゃあ……僕はこのコにほれてもいいの?」

 

 あたりまえだ! これはLRSなんだゾ!

 

 「そうだ! これでいいんだ! 僕はここにいても…ちがう、このコにほれてもいいんだ!」

 

 そのいきだシンジ! じゃ、がんばってな。

 

 

 「あ…あの……きみ…分かったから、ちょっと離れて…」

 そういって少女から身を引こうとしたとき…

 「どうしたんですか綾波さん……部屋のドアを開けっ放しに…し…て……」

 部屋に入ってきたメイドのヒカリが暗闇に浮かぶシンジの姿をみつけた。

 「あっ……そんな……綾波さんが……

                           ……きゃあ〜! だれかぁ〜!!

 何かを勘違いしたようなヒカリの悲鳴に、何事かと警備員たちが駆けてきた。

 「しまった…はやく逃げないと………って…」

 シンジの体には少女がガッチリと抱きついたままだった。

 「ちょ…ちょっと、きみ…放してくれないかな…?」

 「…だめ」

 「そ…そんなぁ…」

 その時、警備員がドドドッと部屋の中に押し入ってきた。

 「どうした!?」

 「なにごとだ!」

 「明かりをつけろ!」

 パッ!

 「ややっ!あれはルパン三世!」

 「ひっとらえろ!」

 「御用だ!御用だ!」

 こうして、少女に抱きつかれたままのシンジは、その少女から解放されたかわりに駆けつけた警備員によって取り押さえられてしまった。

 「…ご協力、感謝します。綾波 レイ様」

 「………………」

 警備の一人にそう言われながら、少女、綾波レイはどこか残念そうな視線をシンジに送っていた。

 「やったな、これで俺達の面目が立つぜ」

 「そらっ、キリキリ歩けっ!」

 「ううっ……」

 二人の警備員に連行されるかたちで部屋を出ていくシンジ。

 「大丈夫でしたか!? 綾波さん…!」

 心配そうに駆け寄るヒカリに、しかしレイは応える様子を見せなかった。

 

 

 

 「フッ、そうかでかした。ここの地下室にでも閉じこめておけ」

 シンジ逮捕の報告を受けたゲンドウは、満足そうに携帯電話のHOLDボタンを押した。

 「しかしいいのか警部? 彼は、君が直接逮捕するハズではないのかね?」

 「フッ、現実とはそういうものだ。問題ない」

 筋書き的に問題おおありなのだが、冬月のするどい指摘にもゲンドウはあっさりと答える。

 「しかし、肝心のルフランが戻って来ない限り…」

 「フッ、ヤツさえ押さえておけば、あとはこちらのものだ」

 「なんだか、私たちが悪者のような会話になっとるな…」

 「なにを言う。これで世の中が平穏になるのだぞ。 見ていろ、じきに、ヤツの仲間も私がタイホしてくれる………

  フフフ……

 

  フハハハハ……

 

 

  ハーハッハッハッハッハッハッハッハッ………!

 

 夜の寒空のなか、冬月邸にゲンドウの笑い声が響きわたるのだった。

 

 

 

 

 

 …………やっぱり悪者ぢゃないか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…どうでもいいが警部、なぜ我々がシメになっているのだろうな?」

 「決まっている。作者がネルフトップ2びいきだからだ」

 「………………………」

今度こそホントに

 

                    


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NACのコメント:
しかし・・・こうちのMMさん、ホントに、ゲンちゃんと冬月が好きですねぇ(^^;
配役が無理矢理で笑えます。しかし、一番似合わないのは、個人的には次元なカヲルくんでしょうか・・・ヴィジュアル的には、ああいうヒゲをつけていることを望みます(^^;
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